スティーヴン・キング『キャッスルロック』に隠された"27"のトリビアを探せ!

スティーヴン・キングとJ・J・エイブラムス。これまで『IT/イット"それ"が見えたら、終わり。』『グリーンマイル』『スタンド・バイ・ミー』『LOST』『ミッション:インポッシブル』『スター・トレック』『スター・ウォーズ』といった数々のヒット作を生み出してきたヒットメーカーの二人が組んだミステリーホラー『キャッスルロック』。そのブルーレイ&DVDが8月7日(水)よりリリースされ、同日よりデジタル配信も開始されている。

不可解な事件ばかり起こる町キャッスルロック。ショーシャンク刑務所の所長デール・レイシー(テリー・オクィン)が自殺し、彼の死後に地下で何年も閉じ込められていた謎の青年(ビル・スカルスガルド)が発見される。しかし彼は「ヘンリー・ディーヴァー」という名前しか囁かない。ヘンリー(アンドレ・ホランド)は幼少期にキャッスルロックで一時行方不明になっていた少年であり、現在は弁護士として暮らしている男の名前だった。青年が発見されたことで、町で繰り広げられる数々の怪事件。謎の青年は一体誰なのか? 何故幽閉されていたのか...。

本作は、キング作品に頻繁に登場する架空の町キャッスルロックを舞台に、映画『ショーシャンクの空に』で有名なショーシャンク刑務所や、映画『シャイニング』でジャック・ニコルソンが演じたジャック・トランスの姪ジャッキー・トランスが重要人物として登場するなど、キングファンにはたまらない仕掛けが満載。

キング作品をより楽しむために押さえておきたいポイントは、"27"という数字。キングユニバースにおいて27という数字は度々現れ、重大な意味をもっている。例えば小説「IT」では27年おきに"それ"が町に現れ、「ダーク・タワー」でも"狼"と呼ばれる集団が27年周期で町の子どもをさらう。

本作『キャッスルロック』でも謎の青年が地下牢から発見されたことで、主人公のヘンリー・ディーヴァーは、"27年ぶり"に故郷へ戻ることとなる。27日の今日、本作に隠されたキングにゆかりのある"27"のトリビアを紹介しよう。

1.オープニング・タイトルから謎だらけ

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オープニング・タイトルのクレジットの背景にある文字や地図。それはすべてキング作品に関わるものだ。「ニードフル・シングス」「グリーン・マイル」「呪われた町」「ドロレス・クレイボーン」「クージョ」「シャイニング」「ミザリー」「IT」のページの一部が表示されている他、ショーシャンク刑務所の地図、「トミーノッカーズ」「ストーム・オブ・ザ・センチュリー」「ドロレス・クレイボーン」と「ジェラルドのゲーム」に関わる皆既日食についての記載がある地図、「シャイニング」の惨劇の舞台となった部屋番号を指す217など、意味深なページや記号が並んでいる。

2.不幸が襲う呪われた町

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キング作品には複数の作品に登場する架空の町がいくつかあるが、その中でも中心的存在とも言えるのがメイン州にある架空の町"キャッスルロック"だ。1979年の小説「デッド・ゾーン」で初登場して以来、「クージョ」「スタンド・バイ・ミー」「ダーク・ハーフ」「ニードフル・シングス」の舞台となっている他、「ジェラルドのゲーム」や「骨の袋」「ザ・スタンド」など多くの作品で言及されている。もうひとつの架空の町、デリーと並び、キング作品を繋ぐ重要な場所であり、数々の不幸が襲うまさに呪われた町となっている。

3."キャッスルロック"に欠かせない人

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ヘンリーの母でアルツハイマーのルースと暮らしている、スコット・グレン(『Marvel デアデビル』)扮するアラン・バングボーン保安官は、キャッスルロックを舞台にした作品には欠かせない人物。『ニードフル・シングス』ではエド・ハリス(『ウエストワールド』)が演じ、『ダーク・ハーフ』ではマイケル・ルーカー(『ウォーキング・デッド』)が扮した主要人物であり、いずれも事件に巻き込まれている。本作では既に保安官は引退しているが、何かと町の住人に頼られている。

4.有名な刑務所

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名作『ショーシャンクの空に』の舞台となったショーシャンク刑務所は、本作でも重要な鍵となる場所。映画だけでなく、小説の「ゴールデンボーイ」や「スタンド・バイ・ミー」「IT」「ニードフル・シングス」「ドロレス・クレイボーン」「骨の袋」「アンダー・ザ・ドーム」「11/22/63」など多くのキング作品で言及されている。町にとって重要な職業提供場所だが、在職中に4人の所長が死亡するなど、キャッスルロック同様不穏な空気に満ちた場所になっている。

5.ノートン所長

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第1話でショーシャンク刑務所の新所長ポーターを案内する看守が「ノートン所長が自殺した時の...」と言及するが、これは映画『ショーシャンクの空に』に登場したノートン所長のこと。

6.ヘンリーが弁護している死刑囚の夫は...

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第1話でヘンリーが弁護した死刑囚の老女。彼女はDVに苦しめられた末に夫を殺害した罪で起訴されたが、その殺害した夫の名がリチャード・チェンバース。『スタンド・バイ・ミー』でリヴァー・フェニックス扮するクリスの兄で不良少年エースの仲間だったアイボールのことだ。

7.レイシー所長

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キングの小説「人狼の四季」(改題「マーティ」)を原作とした映画『死霊の牙』には、本作でレイシー所長を演じるテリーがハラー保安官役で出演している。テリーは本作の製作総指揮であるエイブラムス製作のドラマ『LOST』のロック役でも知られ、キング、エイブラムス双方と縁が深い俳優。

8.レイシー所長の妻マーサ

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キングの小説「霧」を原作にしたドラマ『ザ・ミスト』には、レイシー所長の盲目の妻マーサ役のフランセス・コンロイが出演している。本作は2007年の映画『ミスト』をリブートしたもので、突然深い霧に襲われた町で起こる恐怖と悲劇を描いている。Netflixで配信中。

9.狂犬

第2話のレイシー所長のモノローグや、第5話のジャッキーが言及している狂犬。キャッスルロックの惨劇のひとつとして挙げられたこの狂犬とは「クージョ」に登場した犬のこと。

10.連続絞殺魔

第2話のレイシー所長や第5話のジャッキーらが触れている連続絞殺魔とは、「デッド・ゾーン」の主人公ジョニー・スミスの能力によって逮捕されたフランク・ドッドのこと。

11.線路で見つかった少年

レイシー所長のモノローグで語られる線路で見つかった少年とは「スタンド・バイ・ミー」で主人公たちが見つけたあの少年の遺体のこと。原作や映画では1959年の出来事となっているが、ドラマでは1961年に変更されている。

12.レイシー所長が残したファイル

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レイシー所長が家に残していた古い新聞記事のファイル。そこにはキャッスルロックで起こった凶事の記事が集められていた。火事の後、忽然と姿を消した店主とは「ニードフル・シングス」、匿名の通報で発見された少年の遺体とは「スタンド・バイ・ミー」、そして町を襲った狂犬病の犬とはもちろん「クージョ」のことだ。

13.病院と言えば...「ジュニパーヒル」

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ショーシャンク刑務所と同様、キング作品に度々登場するのがジュニパーヒル精神科病院だ。本作ではヘンリーが青年をこの病院に連れていくが、「IT」「ニードフル・シングス」「ジェラルドのゲーム」「トミーノッカーズ」「不眠症」「骨の袋」「11/22/63」「ダーク・ハーフ」などでも登場もしくは言及されている。「IT」のヘンリー・バワーズや「ジェラルドのゲーム」のレイモンド・ジョバート、「ニードフル・シングス」のネッテ ィ・コブ、「不眠症」のチャーリー・ピカリングらが収容されている。

14.ラジオ局100.3FM

ショーシャンク刑務所のレイシー所長が自殺前に聞いていたローカルラジオ局100.3FM。実はこのラジオ局WKITはクラシック・ロック専門で、原作者であるキングがオーナーを務めている。

15.再会のバー...「メロウ・タイガー」

20190827_castlerock_11.jpgヘンリーとモリーが再会し、第9話にも登場するバー"メロウ・タイガー"は、「ニードフル・シングス」の主要スポットのひとつ。「ニードフル・シングス」ではこのバーのオーナーと住人が殺し合いをしたが、本作では現在までバーが存在している。

16.ナンのダイナー

ヘンリーがかつて知っていた"ナンのダイナー"。実は密かにセックス・クラブを経営し、顧客だった州知事を脅迫した結果、反撃されて潰されたというこの店は、「ダーク・ハーフ」と「ニードフル・シングス」にも登場する。

17.もしかしてオーナーは?

第9話でキャッスルロックに帰郷した青年の背後に登場するアイスクリーム・ショップ店"クレイボーンズ・クリーマリー"。当然思い浮かぶのは小説「ドロレス・クレイボーン」の登場人物の名前だ。原作では転がり込んできた遺産を匿名で寄付していたが、並行世界ではその遺産を元手に商売を始めたのか、それとも幸せな家庭を築いて別の人生を歩んでいるのか、想像が膨らむ。

18.ヘンリー誘拐事件の容疑者

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1991年にヘンリーが失踪した事件は当初誘拐事件と扱われ、容疑者がいたことが判明する。その容疑者ヴィンス・デジャルダンは「スタンド・バイ・ミー」に登場する不良少年のひとり。映画ではエースと車でチキン・レースをしていたジェイソン・オリヴァー(『ヘザー・グラハム/バッドトリップ』)扮する少年が彼だ。本作ではその姿こそ見せないが、彼の兄弟ジョセフが登場する。

19.スウェーデンの新たな才能、ビル・スカルスガルド

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謎の青年を演じるのは、正統派、異端派どちらもこなす、スウェーデンの新たな才能と表されるビル・スカルスガルド。キング原作の映画『IT/イット』で、"それ"と呼ばれるあの強烈なピエロ、ペニーワイズに扮し、強いインパクトを残したビル。実際の彼は端正なマスクとあふれる才能を持つ俳優一家スカルスガルド家の四男だ。父親は、ハリウッドで30年以上ものキャリアをもち、近年は『アベンジャーズ』シリーズやチェルノブイリ原子力発電所で起きた爆発事故に迫る実録ドラマ『チェルノブイリ』にも出演するステラン・スカルスガルド。ステランには前妻の子どももあわせると8人の子どもがいる。長男は43歳のアレキサンダー(『ビッグ・リトル・ライズ』)、次男は38歳のグスタフ(『ヴァイキング ~海の覇者たち~』)、そして四男で29歳のステランと、24歳の五男ヴァルター(『Black Lake(原題)』)らが俳優として活躍している。

20.ストランド姉妹

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子ども時代のヘンリーの友人で、現在はキャッスルロックで不動産業を営んでいるモリー・ストランド。メラニー・リンスキー(『トゥゲザーネス』)が扮しており、他の人には聞こえない声が聞こえてしまうという役どころだ。メラニーの配役決定のニュースを聞いた『FARGO/ファーゴ』のアリソン・トルマンは、姉妹役で出演したいとメラニーに直談判をして出演が決定。第2話と9話に登場している。メラニーが出演しているキングのオリジナル脚本によるミニ・シリーズ『ローズ・レッド』は、呪われた屋敷を巡る恐怖を描いた、「小説で読めないキング作品」としても非常に貴重な作品と表されている。自作が映像化された際によく出演するキングは、本作にもこっそり顔を出している。

21.ジャッキーの叔父さんは何とあの...!

20190827_castlerock_7.jpgモリーのアシスタント、ジャッキー。彼女の叔父は作家で、スキー場で突然おかしくなり妻子を殺そうとしたと語るが、これはまさに「シャイニング」の主人公ジャック・トランスのこと。ジャッキーの本名はダイアンだが、叔父のことを話そうとしない家族にあてつけてジャッキーと名乗っているらしい。

22.ジャッキーの小説

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第10話のラストでジャッキーは小説を書いている。小説のタイトルは「オーバールック」。これは、「シャイニング」の舞台であるオーバールック・ホテルのこと。小説では、家族の歴史をたどって西へ行く語り、ホテルのあるコロラドを目指していることを示唆している。

23.キング作品に通じる"悪の根源"とは...

第7話に登場する赤く塗られたチェスのキングの駒は、深紅のキング=クリムゾン・キングと読み取れる。クリムゾン・キングは「ダーク・タワー」に登場する悪のボス。様々な異名を持ち、「不眠症」「ザ・スタンド」「アトランティスのこころ」「タリスマン」「ブラック・ハウス」「デスペレーション」「レギュレイターズ」「ドラゴンの眼」「IT」など、多くのキング作品に通じる悪の根源と言える存在だ。すべての世界と宇宙をつなぎとめている暗黒の塔を破壊し、世界に混沌をもたらそうとしていると「ダーク・タワー」で語られている。

24.凶事が起こる周期は?

キング作品の中で往々にして凶事が起こる周期が27年。本作ではヘンリー失踪事件が起こったのが27年前。「ダーク・タワー」では27年ごとに狼と呼ばれる集団が町を襲撃して子どもをさらい、「IT」に登場するペニーワイズも27年ごとに町で凶事を起こしている。「ニードフル・シングス」では27年前の1991年に骨董店の店主ゴーントが町を悪意にさらし、「ダーク・ハーフ」ではやはり1991年にキャッスルロックに暮らす小説家ボーモントが、もうひとつのペンネームジョージ・スタークを葬り去ったことで、連続殺人が起こっている。

25.キャッスルロックだけじゃない!不穏な場所

不穏な事態に息子を巻き込みたくないヘンリーの指示で、ひとりバスでボストンに帰ることになったウェンデル。しかし、ウェンデルはボストンに着く前に、「Jerusalem"s Rot」と書いてあるバス停で降りてしまう。実はここは、短編集「深夜勤務」の中のひとつ「呪われた村"ジェルサレムズ・ロット"の舞台。キャッスルロックから40キロほど離れたところにある小さな町だが、ここもまたキャッスルロック同様、呪われている不穏な場所だということになる。

26.あのキャストは母娘で一役!

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ルース役のシシー・スペイセクの出世作にもなったキング原作の映画『キャリー』。第7話では『キャリー』を思わせるようなシーンも描写されている。そして写真などで登場するルースの若き頃を演じているのは、何とスペイセクの実の娘であるシュイラー・フィスク。さりげなく母娘共演をしているのだ。

27.あのベテラン俳優が声だけの出演

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第5話でポーター所長と電話しているショーシャンク刑務所の管理会社の理事。一連の不祥事の責任を追及するその声を担当するのは、『グッド・ドクター 名医の条件』で青年ショーンを外科医として採用する病院の院長グラスマンを演じているリチャード・シフ。『ザ・ホワイトハウス』『アントラージュ★オレたちのハリウッド』『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』『カウンターパート/暗躍する分身』など多くのヒット・シリーズに出演してきたベテラン俳優のさり気ない登場が心憎い。

既にシーズン2への更新も決定している本作は、2019年内に米Huluで配信開始が予定されている。新シーズンでは、雪山で事故に遭ったベストセラー作家を助け出した彼のファンが、事故で足を骨折して動けなくなった彼に対して狂気の行動に出る様が描かれるホラー小説「ミザリー」の前日譚を描く。

『マスターズ・オブ・セックス』のリジー・キャプランが主人公アニー・ウィルクス役を、『ショーシャンクの空に』で主人公アンディを演じたティム・ロビンスが、末期がんを患っているレジナルド・"ポップ"・メリル役で出演。

そのほか、『ジ・アメリカンズ』のアリソン・ライト、『トロン:レガシー』のギャレット・ヘドランド、『13の理由』のマシュー・アランらがキャスティングされている。ショーシャンク刑務所と縁が深いキャストの登場で、キングユニバースがさらに盛り上がること必至だ。

『キャッスルロック』商品情報

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ブルーレイ&DVDリリース中、デジタル配信中
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ブルーレイ...11,300円+税/DVD...9,400円+税
<レンタル>
DVD Vol.1~5
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
公式サイトはこちら

Photo:『キャッスルロック』
©2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
『ザ・ミスト』
© Chris Reardon for Spike 2017
『シャイニング』
©2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
『ショーシャンクの空に』
©2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
『11/22/63』
©2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
リチャード・シフ
© Walt Disney Television/Yolanda Perez