『アベンジャーズ』マリア・ヒル役コビー・スマルダーズが破天荒な私立探偵に 新作『Stumptown』

スタンプタウンの愛称で親しまれる、オレゴン州ポートランド。自然豊かなファッションの街として知られるこの都市には、強情で向こう見ず、しかし腕は確かな私立探偵がいた。『Stumptown(原題)』は、目を疑うような荒技で道を切り開く女性探偵・デックスの物語。『ママと恋に落ちるまで』のロビン・シェバツキー役や、映画『アベンジャーズ』シリーズのマリア・ヒル役などで知られるコビー・スマルダーズが主演する探偵ミステリーは、米ABCで9月下旬から放送されている。

心の傷を気丈に隠して

アメリカ海軍に所属するデックス(コビー)は、アフガニスタンでの諜報活動中、爆発事件に巻き込まれる。自身は一命を取り留めたものの、現場にいた恋人がこの事件で死亡。深いトラウマを負ったままポートランドに戻り、現在はダウン症の弟の面倒を見ながら暮らしている。

ギャンブルに没頭しがちな彼女は、光熱費の支払いにも苦労するほど困窮。ところが幸運にも、そのギャンブル癖が思わぬところで仕事の依頼を呼び込むことになる。地元のカジノ経営者の孫娘が誘拐され、軍上がりのフィジカルを持つデックスに救出依頼が舞い込んだのだ。

度胸だけは誰にも負けない彼女は、良識ある人なら眉をひそめるような強引な手法で調査を敢行。結果が物を言い、初めはデックスを厄介者扱いしていた警察内部にも彼女に一目置く者が現れ始める。

デックスに興味津々

探偵ドラマといえば主役の強烈な個性が際立つ作品が多いが、本作も例外ではない。デックスについて米New York Times紙は、あらゆる特徴を混ぜ合わせた21世紀型のキャラクターだと表現。なかでも戦地で負ったトラウマと、それを隠すかのような横柄な態度が印象的だ。ほかにも切り返しの速さにアルコールの溺愛など、独特のカラーは枚挙にいとまがない。それでいてひとりの人間として違和感なくまとまっており、キャラクター造形が綿密に計算されていることが伺える。

ウイスキーと賭け事を愛し、行きずりの恋で寂しさを紛らわせる私立探偵。このような設定は、他作品でも目にしないわけではない。けれど、いぶし銀の男が演じるのではなく、女優・コビーを起用した点がユニークだと米Varietyは評価。第1話で誘拐された少女には、実はデックスと私的な縁が。大切な者を二度と失いたくないとばかりに、怒れる鉄砲玉のようなデックスが誘拐犯に飛びかかる。

ユーモアと緊張のバランス

グレック・ルッカの同名グラフィック小説を原作としていることもあり、探偵ものとしては比較的ライトなタッチに仕上がっている。監督のジェームズ・グリフィスはコメディ作品を得意とする人物だ。緊迫したシーンにふと挿入される場違いに思えるようなユーモアも本作の重要な味付けの一つ。たとえば、デックスの壊れかけの愛車のカセットテープ・デッキだが、彼女がどんな非常事態にあろうとスピーカーからはスローテンポな曲が気まぐれに流れ続ける。

第1話の所感としてNew York Times紙は、こうしたユーモアに加えて、控えめだが真実味のあるアクションを高く評価している。背景となるメロドラマに時間を割き過ぎている点は改善の余地ありだと言うものの、状況設定が終わった2話以降にどのような世界を見せてくれるのか期待が高まる。

我が道を行くデックスに圧倒される『Stumptown』は、米ABCで放送中。(海外ドラマNAVI)

Photo:『Stumptown』(c) ABC/Jessica Brooks