バットマン誕生前のゴッサム・シティを描くDCドラマ『GOTHAM/ゴッサム』がついに完結! 作品の終了に、日本語吹替えキャストたちはどのような想いを抱いているのか―。本日より4回に分けて、お伝えしていこう。
第1回目は、『The O.C』や『サウスランド』のベン・マッケンジーが演じる主人公ジム・ゴードン役の小野大輔と、映画『ブレイド』や『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』のドナル・ローグが扮するハービー・ブロック役の仲野裕。シーズン1から作品同様に苦楽を共にした相棒の二人だからこそ語る『GOTHAM』への想いとは―。
<ファースト・シーズン>より
仲野)
小野君との出会いは、シーズン1の第1話の時。僕は遅れて現場に入り、あまり状況が分からないまま始まっていて、追いついていかないといけないのが鮮明に残っている。二人で会話した時に「この声がゴードンなんだ」と、なんと爽やかで柔らかくてピッタリだなあと感じたのを覚えています。
自分の役を見つけるのには、ちょっと時間がかかりました。ディレクターさんからも色々アドバイスをいただいて、自分の役を掴んでいきました。ブロックは、自分が最初に受けた印象よりも若い設定だと聞いたので、僕はもう少し年齢を若いころから作っていったんですけど、それよりも「もう少し若くして欲しい」と言われたので、何度か演じてみてという形に。そのうち、自分の役を掴めていって、そのあとは小野君との呼吸を合わせられるのが凄く楽しみになってきたのを覚えていますね。今はもう、お互いの出方をわかっているから非常にやりやすいというか、テストの時でも、何も考えなくても出来るようには、段々なってきました。だから、一番いい時に終わっちゃったのが残念でもあるね。
小野)
コンビとしての掛け合いも成熟されてきて楽しくなってきた今だからこそ、ファイナル・シーズンを迎えられるという気持ちにもなれましたね。
仲野)
そういえば、(ファイナル・シーズンの)結婚式のシーンのセリフは、3分の1がセリフで、3分の2くらいがアドリブかも知れないねって話していたんです。
小野)
ブロックのセリフですね。
仲野)
そう、僕の長セリフがあるんですけど、なんというかセリフっぽくなかったんですよ。それで、"じゃあ、これは僕も、やり方を自分の中で意識を変えていかなきゃいけないな"と思ったんです。そうしたら、小野君との5年間の歴史を感じながらセリフが出て来て、一発OKだったので良かったなあと思って。もう一度、ここからやって下さいと言われても難しいセリフなんですよね。そういうのが心に残っていますね。
小野)
この回(第9話「ゴードンの決意」)、ジムを演じるベン・マッケンジーさんが脚本を書いているんですけど、たぶんドナル・ローグさんには「好きにやって」って、言ったんじゃないですかね。ニヤっとしてしまっていいなあと思いまして。本当に、構えなくても仲野さんがハービー・ブロックでいてくれるので、凄く楽しかったです。
仲野さんのお声は以前から外画でたくさん聴いていたので、最初、僕こそ緊張していたんですよ。それから、僕もブロックの声が柔らかいなと思ったんです、実は。ブロックはちょっと偏屈な部分だったり、雑多な感じの部分があって、それが魅力だったりするんですけど、仲野さんご自身がとても紳士な方で、言葉使いもずっと丁寧なんです。ぶっちゃけて言いますけど(笑) それが好きです。
あと、"ブロックがこう来るからこういられる"とか、安心して背中を預けてお芝居をさせて貰ったなあと。シーズン5まで来て改めて思います。もちろんその根底にあるのはお互いへのリスペクトだと思いますが、いい意味で気を使わずにいられますし、凄くラクなんです。
仲野)
僕もラクなんです。だんだんとそうなって行ったんでしょうね、きっと。収録が進むにつれて、あまり細かい指示もなくなっちゃったんですよ。なので、自分の中で自由に小野君の声を聞いてその場で応えていく。家でもリハーサルとして、言葉の寸法などはチェックしますが、内容を頭に入れておいて、後は小野君の出方次第みたいなことは出来るようになったんです。
これ、なかなか外画の吹替え収録ではないことなんですよ。そういう意味で『GOTHAM』は二人にとっては宝物ですね。違う現場で会っても「仲野さんがいるって」「おー、元気かい」とか言うことでお互い『GOTHAM』絡みで、なんとなく仲がいいというか。
小野)
そうですね。アニメの現場にゲストでいらっしゃって、僕もたまたまそこにいて会った時にも、やっぱり『GOTHAM』の話をしていましたね。宝物とおっしゃるのは良くわかりますね。ずっと生活の一部になっているような作品です。収録を積み重ねて行くうちに、『GOTHAM』のチーム感がもの凄く出てきましたよね。
例えば、(レスリー・トンプキンス役の)松谷さんがウェブから見つけた画像を見せてくれるんですけど、向こうのキャストさんたち、本当に仲が良いですよね! 日に日にチームワークが良くなっているなあと思いますし、それが最後のアドリブのセリフに繋がるんだと思うんです。何というかチーム感、ファミリー感というのを感じていたので、僕らの現場も面白く、和気あいあいとしたいなあと思いました。何か最初の頃よりみんな打ち解けて仲良くて。本当に最初は、緊張してたんですけど。
仲野)
結構、私生活の話をしちゃったりね。失敗談とか色々ね(笑) 最初の頃は初めての人も多いですから、そんなことはなかったけど、今はそういう意味ではちょっとファミリー的な『GOTHAM』という大きな何かいい親戚同士みたいな感じですね。声の感じは原音よりも、こっちのグループじゃない人がやったら何か変な感じがするくらいになっちゃってますよね。
小野)
みんながいてくれると安心しますね。
仲野)
リハーサルで結構ウルウルとくるのって、なかなかない。ちょっとヤバかったですよ。
小野)
第11話「ゴッサムを救え」の台本が配られてしばらくたってから、『GOTHAM』のLINEグループがあるんですけど、仲野さんから突然メッセージが来まして...。何かと思ったら(いつもは釣りの釣果を教えてくれるんですけど、それじゃなくて)台本見て泣きそうだって。
あれは、泣いてしまったんですか?
仲野)
ちょっと、3分くらいググって来て。
小野)
"本番収録の時は、プロだから頑張って演じるよ"っていうメッセージを下さって。もうみんなどう返していいかわからなくて。僕がもの凄く感動してしまって、ここまでのベテランさんが、こう言って下さるのは本当に、この作品は特別なんだなって。役を越えて泣いちゃいそうになります。
仲野)
自分のシーンはもちろんきちっとやらないといけないんだけど、グッときてしまった時に、泣き声になっちゃうとマズいんで、これは何度も見てリハーサルして。二人のシーンと、意外とトンプキンスとのシーンも好きでしたね。あのシーンも実はグッと涙ぐむというか、まあ一番最後は、あれはあれで感動するんですけど。そうじゃない(ロビン・ロード・テイラー演じる)ペンギンと(コーリー・マイケル・スミス演じる)ニグマのシーンも好きなんですよ。ああ、こんなところで情を感じるんだっていうシーンなんです。あれは驚きましたね。台本上手いなーって。
小野)
めちゃくちゃ、ファンじゃないですか!
仲野)
そうだね、ははは、面白かったです。
小野)
僕も最後のあれでしたね、アルフレッドの...
仲野)
そう、最後のアルフレッドのシーンは良いシーンでしたね。あれは泣かされましたね。
小野)
あんなこと言うんだ、最後にって。
仲野)
二人のシーンも非常にブロックらしい別れ方というかね、ゴードンと二人の関係を見事に短いシーンで集約している、"いいセリフだな"って思いながら観ていました。
小野)
最後に仲野さん(ブロック)のセリフのところ、鼻を"ふっ"ってするんですよ。それだけで、凄く泣けて...。
仲野)
あれはヤバかったんですよ、あんなところで鼻すすらないで欲しいなって思うんですよね。
――苦労した点は?
仲野)
自分の役が掴めるまで、ちょっと時間がかかりましたけど、掴んでからは苦労はないですね。それよりもセリフが詰めに詰まっている時があったりすると、"これ入れるのかよ!"っていう苦労はありました。ゴードンの気になったシーン、何て言うんですかね、息子みたいなものを凄く感じていたんですよ。だからそれはセリフの裏の感情として流れていると、僕は思っているんですけどね。
小野)
ただの相棒じゃなくて、ジムから見てもブロックって友だちじゃないし、年齢も上なんですけど、一緒の目的に向かっている同志でもあるし、不思議な関係性でしたね。それはおっしゃる通り父親なのかも。
仲野)
ゴードンからも、結構、辛辣なことを言われるんですよ。そこで殴ったりとかはしないんですよね。一応、受け入れて彼なりに考えてゴードンと接して行くという部分があって、面白かったです。
小野)
僕にとっては結構年上の役だったので、"ジム・ゴードンの声質をどうやったら出せるのかな"というのは、最初のうちは悩みました。けれど仲野さんのおっしゃる通り、他の人たちと一緒にやっていると途中からあまり気にならなくなって、だんだん出来上がっていきました。
難しかったのは、ジム・ゴードンが「どうして、そんなことをするんだろう?」というシーンが、シーズンが進むにつれて段々多くなってきたこと。「彼がどうして、この人のことを好きになるんだろう」とか、「えっ、ここで抱いちゃうんだ」とか、「えっ、そこで、そっち行くんだ」とか、結構恋多き男として描いているので、小野大輔としては"おい、ジム・ゴードンしっかりしろよ!"と思いながら、ペンギン(阪口周平)に罵倒されて、女性陣からも"余り好感持てませんね"と言われて、演じ手としては針の筵のようにつらいなあと。そういう意味では、ただの正義の味方じゃなく人間として、ひとりの男として描かれていたので、つらくもあり演じていて面白くもありました。
――好きなシーンやセリフは?
仲野)
やっぱり、結婚式のシーンが印象に残っていて。
小野)
シーズン1第1話の冒頭のセリフで、ジムがブルースと出会った時に言う「今、この世界がどんなに暗く恐ろしくても、光は必ず差す」という言葉ですね。『GOTHAM』が持つメインテーマですね。それがブルースの中に、ずっと残っていてブルースがバットマンになることに繋がっていくという流れが凄く好きです。
先輩であり、自分が関わってきた大事な人に何かを言って貰った時に、ずっとそれが残っていて自分の糧になっていると思うんですね。だからブルースにとってもその言葉が大事だったんだなと思うと、"自分もジムをやっていて良かったなあ"と思い、忘れられないですね。
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発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
他の日本語吹替えキャストインタビューはコチラ↓
<1> ジム・ゴードン役の小野大輔&ハービー・ブロック役の仲野裕
<2> ブルース・ウェイン役の田村睦心&アルフレッド・ペニーワース役の高瀬右光
<3> オズワルド・"ペンギン"・コブルポット役の阪口周平&エドワード・ニグマ役の稲垣拓哉
<4> バーバラ・キーン役の白川万紗子&レスリー・トンプキンス役の松谷彼哉&セリーナ・"キャット"・カイル役の佐藤美由希
(海外ドラマNAVI)
Photo:『GOTHAM/ゴッサム<ファイナル・シーズン>』GOTHAM (TM)& (c) 2019 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. GOTHAM and all related elements are trademarks of DC Comics./<ファースト・シーズン>(C)2015 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.