『シカゴ』シリーズ3作品、最も好条件の仕事はどれ?

全米で2012年から放送が始まり、瞬く間に絶大な支持を集めた大ヒット消防アクション『シカゴ・ファイア』。アメリカ第三の都市シカゴを舞台に活躍する消防士たちの熱きドラマを描き、ここ日本でも話題沸騰中の作品だ。11月1日(金)より、 Amazon Prime Videoで本シリーズシーズン1から5までの一挙配信がスタートしたことも相まって、ますます注目を集めている。

『シカゴ』シリーズは、第一作の『シカゴ・ファイア』から、シカゴ市警特捜班の活躍を描く『シカゴ P.D.』、シカゴ救急外来の医師たちの姿を映し出す『シカゴ・メッド』、それから2017年に放送された『シカゴ』シリーズ第4弾となる法廷ものの『Chicago Justice(原題)』など、3作品のスピンオフを含めた計4作品が製作されてきた。

消防士、警察、医師と、様々な職業に生きる人間たちをリアルに描き出している同シリーズだが、彼らの働く姿を観ていて、ひとつ素朴な疑問が浮かび上がった。

それは、どの職業が一番儲かっているのか?

人命を救うようなやり甲斐のある仕事のため、お金や給料は関係ないのかもしれないが、一視聴者としては、気になって仕方がない。ということで、今回は『シカゴ』シリーズで描かれる3つの職業について注目してみよう。

消防士の場合

シカゴ51分署の消防士たちを描く『シカゴ・ファイア』。

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劇中でも描かれている通り、高所での救出活動や消火を担当する「はしご隊」と消防士の中でも特別なトレーニングと講習を受けなければなれない精鋭「レスキュー隊」の2隊に実際も分隊される。ドラマではテイラー・キニー演じるケリー・セブライドが小隊長を務めているレスキュー隊は、実際のシカゴでも僅か4隊しか存在しないほどのエリートたちである。

アメリカ全土にはおよそ3万の消防署が存在し、のべ116万人の消防士たちがいる。常勤は30%、パートやボランティアが70%とされており、そのうち、ガブリエラ・ドーソン(モニカ・レイモンド)のような女性消防士は7.3%にあたる8万5000人いるという。ちなみに日本には約1719の消防署が存在し、職員16万3369人のうち、女性消防士は4475人という数字になっている。

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続いて、消防士たちが乗り込む消防車に関してだが、はしご車、レスキュー車、救急車は分署により有無があるため、同じ署内でも車両番号が異なる。『シカゴ・ファイア』の舞台であるシカゴ51分署でも、はしご車は81番、レスキュー車は3番となっている。一方で消火活動に必須なポンプ車はどの分署にも必ずあるため、分署の番号がそのままあてられる。

アメリカの消防士のシフトは約24時間を月10日間とされており、シフト明けの休日は1〜2日あるとされており、マシュー・ケイシー(ジェシー・スペンサー)やクリストファー・ハーマン(デヴィッド・エイゲンバーグ)のように副業で稼いでいる隊員も少なくない。

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シカゴ消防署の2017年募集要項によると、1年目の消防士に与えられる給与は年収にして約4万8703ドル〜5万4156ドル(約530万円〜589万円)。ここに副業で稼いだ額もプラスされるということだ。ちなみに日本の消防士の平均年収は718万円となっている。

シフト中には隊員が食事を作ったり、仮眠をとる際には署内のベッド、外出時は基本的に小隊のメンバー全員で消防車に乗って出かける。これらは全て、突然の出動要請がかかった時でも迅速に対応できるように決められた規則があり、原則として最初に現場に到着した隊が指揮を執ることになっている。

日本では、蕎麦屋に消防車で入店したということで大批判されるというニュースが2017年に話題になったが、アメリカの国民は消防士たちの活動に関しては寛容なようだ。

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警察官の場合

シカゴ警察21分署の特捜班の活躍を描いた『シカゴ P.D.』。

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劇中の主な登場人物たちは特捜班に所属する刑事であるが、アメリカの警察官の階級は一つ下の巡査から始まる。ここにはキム・バージェス(マリーナ・スコーシアーティ)やショーン・ローマン(ブライアン・ジェラティ)が分類され、ケビン・アトウォーター(ラロイス・ホーキンズ)も巡査からのスタートであった。

その後、刑事(ここから私服OK)の後にハンク・ボイト(ジェイソン・ベギー)やトルーディ・プラット(エイミー・モートン)などの巡査部長、警部補、警部、分署長を経て、最後に警察本部長という出世街道を歩んでいく。

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シカゴ警察(CPD)の2017年募集要項に記載された1年目の年収は4万8078ドル(約530万円)からとされている。

日本の公務員は副業が法律で禁止されているが、アメリカでは自由に行うことができる。消防士同様に警察官にもボディガードなどの副業で稼いでいる者も多く、その理由は銃を自費で購入しなければならない場合なども少なくないため、出費がかさむからなのだとか。

また警察官はパトロール中に食事を済ませることがしばしば。店によっては警官であるという理由から食事を無料にしてくれる店もあり、中には「警察官 無料」という貼り紙がされている店もある。感謝の意味ももちろんあるが、制服警官が立ち寄ることで防犯の役割も果たしているとのことだ。

医師の場合

シカゴ救急外来の医師たちの姿を映し出した『シカゴ・メッド』。

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医療ドラマの金字塔『ER 緊急救命室』でも描かれたアメリカの救命医療医の平均年収は34万5000ドル(約3753万円)。

急な疾病、急性病態に対応しなければならなく、アメリカでは国民皆保険制度が施行されているわけではないため、トリアージ(優先度)を判断して診察に取り掛からなければならない。

ちなみに全米の専門別年収ランキングでいくと、救命医療医は6位にランクインしており、1位は心臓外科医の52万5000ドル(約5928万円)となっている。

医師の平均勤務時間は週51時間とされ、徹底した管理システムにより、決められている。当直は週3回まで、翌日は6時間勤務、週1日は完全休養をとらなければならない。

出入り口で、出入りを完璧に管理され、決められた時間に帰宅していない場合は(例え超過勤務であっても)解雇されてしまうこともあるという。労働過多の日本の医療業界とは異なり、徹底した管理システムが作りあげられているのも、アメリカ医療の特徴である。

また『シカゴ』シリーズにはこの他に看護師や救命士たちも登場するが、看護師の平均年収は6万7932ドル(約739万円)、救命士は2万970ドル(約228万円)とされており、消防士や医師と同等の仕事内容ながら、比較的安めになってしまっている。

アメリカでは消防、救急、警察、全てが共通の911で通報できる。通信指令センターが通信内容から判断し、それぞれに出動要請を下すのだ。そういうことを考えても、『シカゴ』シリーズで各機関が連携して、ひとつの事件を解決しようと描かれているように、実際も手を取り合っていることがうかがえる。

なので、各々に対してそこまでの格差はないのかもしれない。どの仕事にも「人を救う」という使命が共通しており、実際に職に就いている方たちにとっては、給料や労働環境などは、そこまで重要ではなく、やり甲斐こそが最も重要な部分なのかもしれない。

※日本国内の情報は2018年の消防白書/米国内の情報は2017年米国データに基づいています

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Photo:『シカゴ・ファイア』シーズン5 (c) 2017 OPEN 4 BUSINESS PRODUCTIONS LLC. All Rights Reserved. 『シカゴ P.D.』シーズン3 (c) 2017 Universal Television LLC. All Rights Reserved. 『シカゴ・メッド』(c) 2016 Universal Television LLC. All Rights Reserved.