米FOXにて1989年からスタートし、のちに放送局を米Spike TV(現Paramount Network)に変えて続いていた長寿のリアリティ番組『全米警察24時 コップス』が、31年の歴史に幕を閉じることになった。米Entertainment Weeklyや米Hollywood Reporterが報じている。
日本にも『○○警察24時』的な番組があるが、同番組はその元祖と言える。取材日に何が起こるかは分からない。警察官の勤務時間の始まりとともにスタッフがパトカーに乗り込み、あとはカメラが目撃者となるという、まさに24時間警察密着番組。長年人気を誇り、今月から33シーズン目に突入予定だったが、5月11日に最終回を迎えたシーズン32をもって打ち切られることになった。
打ち切られた理由は、5月下旬にミネソタ州ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に首を押さえつけられて死亡したことに起因するようだ。「同番組はParamount Networkでの放送を終わります。今後の製作予定もありません」と広報が述べている。
これまで放送されたのは1100話以上。2017年に1000話に到達した際には、警察署が舞台のコメディドラマ『ブルックリン・ナイン-ナイン』のテリー・ジェフォーズ役で知られるテリー・クルーズが生中継でホスト役を務めた。この番組をパロディにしたエピソードが人気ドラマ『X-ファイル』や国民的アニメ『ザ・シンプソンズ』で作られたほか、2016年にはこれを元にした映画がルーベン・フライシャー監督(『ゾンビランド』『ヴェノム』)によって製作されると報じられた。
一方、警官や容疑者の乱暴で差別的な言葉使い、逮捕の際に銃撃戦になったり相手を殴ったりといった暴力的な描写が批判されることも。また、番組に登場する容疑者は大抵、黒人かヒスパニック系の売人や泥棒で、対する警官は白人が中心であることを疑問視する向きもあった。1994年に同番組が取り上げたレイプ、殺人、強盗といった暴力的な事件の割合は、実際の統計のおよそ3倍にあたる43%に上ったとも指摘されている。
市民権運動の団体、Color of Changeは、長年にわたって同番組に対して批判的な意見を示しており、それによって2013年にFOXが一旦打ち切っていた。同団体は今週の初めにParamount Networkと話し合いを持ち、永久的にキャンセルするよう求めていたという。バイス・プレジデントであるアリシャ・ハッチは、番組終了を受けて以下のようにコメントした。「30年以上にわたり、この番組は人々に誤解を与え、正義ではないことが正常であるかのように扱ってきました。犯罪をテーマにしたTV番組は、黒人の人生を破壊するような行動を支持しながら、行き過ぎた規制と過度の権力の規範を受け入れ、改革しないよう国民に伝えてきました。『全米警察24時 コップス』は率先して、何世代もの視聴者に懐疑的な考えを植えつけてきたのです。今こそ、他のTV局も同じような有害な番組をキャンセルする時です。我々は米A&Eの『Live PD』のキャンセルを要求します。誰もがBlack Lives Matterを宣言している今、我々はこのような番組を放送する企業に責任を負わせ、業界に徹底的な見直しをさせなければならないのです」
『Live PD』とは『全米警察24時 コップス』と同じような形式の番組で、アメリカで2016年にスタート。金曜日と土曜日に放送され、非常に高い視聴率をマークしている。日本では、同番組の現場映像だけを再編集した『密着!アメリカ警察24時』というタイトルでAmazon Prime VideoやHuluで配信中だ。『Live PD』は先週から放送を見合わせており、今後の動向が注目される。(海外ドラマNAVI)
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『全米警察24時 コップス』(米Hollywood ReporterのTwitterより)