ジュード・ロウ×ブラッド・ピットの米HBOドラマ『サード・デイ ~祝祭の孤島~』インタビュー

ジュード・ロウ(『ファンタスティック・ビースト』シリーズ)とナオミ・ハリス(『ムーンライト』)が主演を務め、ブラッド・ピット率いる製作会社のプランBエンターテインメントと米HBOがタッグを組んだドラマ『サード・デイ ~祝祭の孤島~』が、スターチャンネルが運営するAmazon Prime Videoチャンネル‎「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」にて独占配信中。

本作は「夏」と「冬」、3話ずつの2部構成で贈るミステリードラマ。ロンドン郊外の孤島を舞台に、島の伝統と文化を守るためには手段を選ばない謎めいた島民を相手に、「夏」ではジュード演じるサムが、「冬」ではナオミ演じるヘレンが奇妙で恐ろしい体験をし、それぞれのトラウマと向き合うことになって精神的に追い詰められている姿を描く。

「夏」の主人公サムは、ロンドンでガーデニング店を経営している。ロンドンからの道中に助けた見知らぬ少女を家に送り届けるためオシー島へ渡るが、干潮の間に島を出ることができず...。「冬」の主人公は、長女の誕生日のサプライズに娘2人を連れてロンドンからオシー島へ来たヘレン。予約していた宿に泊めてもらえず、静まりかえった島で暖を取れる場所を必死で探していると...。

今回は、「夏」(第1~3話)の出演者であるジュード・ロウ(サム役)、キャサリン・ウォーターストン(ジェス役)、監督を務めるマーク・ミュンデンのインタビューをご紹介。『ファンタスティック・ビースト』シリーズのダンブルドア役とティナ・ゴールドスタイン役ですでに共演しているジュードとキャサリンは、本作では島のパブで出会い、距離が縮まっていくという設定だ。

20201109_Third Day_06.jpg
20201109_Third Day_02.jpg

――実際にオシー島で撮影されたんですよね? 森林の緑や島へ渡る道路の空撮など、映像がとても美しかったです。特にサムの顔を至近距離で捉えたクローズアップのシーンが多かったのが印象的ですが、何か意図はあったのですか?

監督:ありがとう、映像を気に入ってくれて嬉しいよ。視聴者にとってまだよく知らないこのサムという男が見知らぬ島にどんどん深入りしていくうちに、視聴者と彼との距離を縮め、視聴者が彼の視点に近づいていき、エピソードが進むにつれてどんどんサムの目を通した心理を共感するようになる、という効果を出すために、敢えてアップの撮影を多用したんだ。それに、オシー島は本作の象徴的な存在であり、この世界のソウル(魂)のようなものなので、できる限り島の自然の美しさを捉えてストーリーに生かすように努力したよ。

――現実とそうでないものとのバランスを保つのは難しかったですか?

監督:それが作品のテイストというか、作品自体にいろいろな要素が盛り込まれている。最近親しみのあるテリトリーになってきた気がするけど、過去の出来事からの深い悲しみを抱えながらも何とか生きていこうとする男が主人公で、『ウィッカーマン』のように一人の男が見知らぬ島に来て奇妙な習慣を体験する。ストーリーが進むうちに、島の真実や島に伝わる伝説の方が習慣よりもはるかに奇妙であることが分かってくる。それが本作のテーマであり、ただ悲しみに暮れているわけにはいかないというメッセージなんだ。ホラー映画では得てして恐怖という感情しか導かれないけど、本作では恐怖だけでなく登場人物の深い悲しみやそういった感情の起伏を視聴者が共感できるように作ったつもりだよ。

20201109_Third Day_05.jpg

――舞台俳優として、本作にフェリックス・バレットや彼のシアターカンパニー、パンチドランクが参加していることで、現場に舞台のような雰囲気はありましたか? パンチドランクの舞台をご覧になったことは?

ジュード:見たことがあるよ。実はフェリックスとは同じ学校なんだ。彼が僕より2~3学年下なんだけど。演劇というものにとても熱中している学生同士ということでお互い認識していたのを覚えているよ。初めて見たパンチドランクの舞台は、結構前になるけどロンドンで上演された『ファウスト』だね。それ以来同カンパニーのファンになり、フェリックスが仕掛け人とは知らずに何回か見に行った。それから再び親交を深め、6、7年前にこのエキサイティングな構想を教えてくれた。"第4の壁"(傍観者としての観客)を外し視聴者が実際に島に来て作品の一部となり世界に没入できるというコンセプトをね。

さっきマークが言ったように、この作品の要素は繋がっているけど、ある意味別々のものなんだ。映画をTV用に作り上げたというか。現場で舞台のような雰囲気があったかどうかという点については、第1話に出てくる、サムがジェスや島民と混ざってパブで飲んで盛り上がるシーンをリハーサルした時、フェリックスがパンチドランクから連れてきた島民役の俳優たちと大勢で、本当に賑わっているパブの雰囲気を夜通し再現したんだ。僕は知らなかったけど、舞台のようにすべてが計算して作り上げられ、細部まで動きが振り付けられていたらしい。僕とキャサリンはその空間に放り込まれたわけだけど、見知らぬ人々が次々に自己紹介してくるシーンの撮影は、夜中盛り上がっているパブに本当に足を踏み入れたような感覚だった。あのシーンで、このプロジェクト全体が舞台とTVの融合であることを実感したね。

20201109_Third Day_03.jpg

――本作品のテーマは悲しみ、苦しみ、信仰ということですが、現在のコロナ禍と共通する点はあると思われますか? このタイミングで放送されることで視聴者の受け止め方に影響があるでしょうか?

ジュード:あると思うね。「隔離」や「孤立」は悲しみを構成する要素の一つだと思う。この数ヵ月間、隔離やロックダウンによって、それまでは忙しさを理由に考えなかったようなことを深く考えた人は多かったと思う。そして家族や知人を亡くした人も多い。家族や知人の死と向き合うことはまさに悲しみと直結するものだ。マーク、キャサリン、どう思う? 僕あまりうまく答えられなかったから何か言ってよ。

監督:いや、その通りだと思うよ。このドラマは「孤独」の心理を描いているからね。この数ヵ月間、みんな他人と接することなく過ごしてきたと思う。ジュードが演じるサムは自分自身からも距離を置いているところがある。彼は自分自身を理解していないんだ。でもジェスや島民との関わりを通して自分自身を見つけていく。彼の過去や息子を亡くした悲しみとどう向き合っているかを見せながら、人には周りの人が必要だということを表現していて、それが「夏」のテーマでもある。

キャサリン:監督がいると心強いわ。作品について上手に語ってくれるから。あ、それ言っちゃっていいんだ、とかもね(笑) 私が付け加えたいのは、人それぞれ"恐怖"に対する向き合い方が違うということかしら。パンデミックの初期にアメリカの大統領が、過去の伝染病に直面した多くの人たちと同様に「これは中国の病気だ」と言ったわよね。何か問題が起きた時に他人のせいにするのは簡単なこと。それはこのドラマでも言えることで、悲しみや苦しみへの対処の仕方として一番いけないのは他人を責めることよね。パンデミック初期にみんなが恐れていたような生活にならなかったのは幸いだと思う。

イギリスに関して言えば恐れていたものの真逆で、NHS(国民健康保険)をはじめみんなが助け合って、サポートし合っている。とても感動したわ。ここ数年見られなかった一体感を感じられた。一方、本作では島民はよそ者を好まず自分たちだけのやり方で自分たちのコミュニティを守ろうとする。それは外界からの脅威に対する恐怖がそうさせているの。そういう部分に関しては現実にならないことを願うわ。

20201109_Third Day_04.jpg

――電気の通っていない無人島に3つだけ持って行けるとしたら何を持っていきますか?

キャサリン:何らかの音楽ね。レコード何枚かとレコードプレーヤーとか。あ、電源繋げないのか。空想だから別にいいわよね。木か何かにコンセントを差すのはどうかしら。

ジュード:そもそも島には何があるんだい? 水や食べ物、火はあるの? 火と綺麗な水は必要だよね。

――電気がないという条件だけ。携帯電話も使えません。

ジュード:質問の答えになってないよ。オシー島で撮影していた時、実際に携帯電話は電波が届いてなかったよ。寝に帰る家はあったけどね。まず水は大事。あとは食べ物と、体を温める物だな。

キャサリン:ピアノと何冊かの本。一体、何日間その無人島にいる設定なの?

ジュード:オシー島で週末にクルーのほとんどが帰宅した後、数人で島に滞在した時に気付いたんだけど、あまり物は必要ないんだよね。島をエンジョイするだけでいいんだ。島の気候の変化、光の変化、ムードの変化を楽しんだりしてね。濡れたり寒かったりしていない限り、とても快適だよ。自然な変化を楽しむという、喜びにあふれた場所だよ。

監督:ただ、島の水道水は少ししょっぱかったよね。ボトル入りの水が必要だ。

キャサリン:そうじゃなかったらフィルターとか?

ジュード:あと、ティーバッグも必要だね。

20201109_Third Day_key art.jpg

『サード・デイ ~祝祭の孤島~』はAmazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」で独占配信中。

Photo:

『サード・デイ ~祝祭の孤島~』
© 2020 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.