Apple TVで独占配信中の話題作『マーゴのマネートラブル』で、複雑な絆で結ばれた母娘を演じたエル・ファニングとミシェル・ファイファー。鬼才デヴィッド・E・ケリーが手掛けた本作がいかにして特別な作品になったのか、そしてOnlyFansという現代的なテーマを通じて描かれる人間の真実について、二人が深く語ってくれた。
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デヴィッド・E・ケリーが描くドリームチームの幕開け

ーーデヴィッド・E・ケリーによる、原作の解釈のどこに最も惹かれましたか?
エル・ファニング(以下エル): まず、キャストもクルーも全員がドリームチームだと言わざるを得ません。ルフィ・ソープによる原作本は心に深く響きました。もともと映像化権を巡って誰もが追いかけていた非常に注目度の高い作品だったんです。幸運にも私、デヴィッド、そしてスタジオのA24がそれぞれ別々に原作を読み、ほぼ同時に「これは私たちが団結して作るべきだ」と気づきました。
最終的に原作者のルフィも私たちの解釈を気に入ってくれました。デヴィッドはまさに天才です。彼の書くセリフは非常に明快で、それでいて心に深く刺さる。マーゴというキャラクターのユニークな声やユーモア、そして同時に彼女が抱える心の痛みを完璧に捉えていました。このシリーズには、単なるコメディともドラマとも言い切れない、現実の人生そのもののような美しいトーンがあります。デヴィッドの脚本を読んだ瞬間、私たちは皆「これは特別な作品になる」と確信したんです。
ーーエルへの質問です。あなたは以前、オーディオブックでもマーゴの声を担当し、今回はドラマ版で身体的に彼女を体現しました。これら二つの経験は、母親としての困難に立ち向かうマーゴの旅路を理解する上で、どのように役立ちましたか?
エル: マーゴというキャラクターには、驚くべき「レジリエンス(逆境を跳ね返す力)」があります。実は、映像で演じる前にオーディオブックの朗読をしたことが、信じられないほど役に立ちました。朗読を通じて、リアルタイムで彼女の抑揚やリズム、ユーモアのセンス、つまり「彼女の声」を自分の中に見つけることができたんです。
人生はマーゴに多くの困難を投げつけ、彼女は数々の難しい選択を迫られます。しかし、それらを乗り越え、再び自分の力を見出していく。そのしなやかな強さこそ、私が彼女について最も称賛する部分です。強さと輝きを兼ね備えた彼女を演じることで、私自身も多くの自信と勇気をもらいました。
複雑で、激しく、そして愛おしい「母と娘」のダイナミクス

ーー本作における「母と娘の関係」をどのように表現しようと考えましたか? また、この物語のどの要素が最も興味深いと感じましたか?
ミシェル・ファイファー(以下ミシェル): 私自身も娘を持つ母親ですが、母娘の関係というのは常に非常に興味深く、そして複雑なものです。男性ではないので断言はできませんが、父と息子の関係よりもずっと入り組んでいるのではないかと感じます。
私はシャイアンという役を心から愛しています。彼女の激しさや、サバイバーとしての強さに惹かれるんです。彼女がどんな子ども時代を送り、どんな人生を歩んできたのか…。彼女が望むのはただ一つ、娘のマーゴに自分よりも良い人生を送らせること。だからこそ、マーゴが子どもを産み育てると決めた時、シャイアンは恐怖とパニックに襲われます。「娘が自分と同じ苦労の道を歩もうとしている」ということが、彼女にとって何より耐え難いことだからです。
結局のところ、この物語は「配られた手札の中で、不器用ながらも最善を尽くそうとしている欠点だらけの人々」の集まりなんです。彼らは混乱した状況の中にいますが、お互いを愛している。最後には、その愛こそがすべてなのだと気づかされます。
OnlyFansというプラットフォームと偏見への異議

ーーマーゴは生き抜くためにOnlyFansというプラットフォームを選びます。このドラマは、そうした選択をする人々を裁きがちな社会のあり方に一石を投じていると思いますか?
エル: まさにその通りです。このドラマの大きなテーマの一つは「判断」です。人はしばしば、他人の外見や一部の選択だけを見て、その背景にある絶望や切実な事情を知らないまま裁いてしまいます。「本を表紙で判断するな」という言葉の通りです。
役作りのためにリサーチをして、OnlyFansには実に多様な幅があることを知りました。過激なものから、ドアノブを舐めるといったニッチなフェティッシュまで、驚くほど広い世界です。しかし、マーゴにとってのOnlyFansは、単なる収入源ではなく、創造性の出口でした。作家志望の彼女は、出産で一度は夢を諦めかけましたが、このプラットフォームを通じて再び「キャラクターを創り出す」喜びや、自分の身体に対する肯定感を見出します。そこで出会うコンテンツクリエイターたちのコミュニティも、彼女の力になります。社会的な偏見は確かに描かれますが、私は彼女がそこに見出した喜びと、子どもを養うための切実な決意に焦点を当てて演じました。
ーーマーゴの強さの多くは作家としての彼女の声から来ているように感じます。それが身体的、感情的なパフォーマンスにどう影響しましたか?
エル: 原作でもドラマでも、マーゴが時折自分自身のことを「三人称」で語る風変わりな癖があります。それは彼女が書くことに慣れ親しんでいるからこそ出る、内面的な人生の現れです。作家を演じる際、その内面で起きている想像力をいかに視覚的に描写するかが課題でしたが、本作では「ハングリー・ゴースト」というファンタジー要素を組み込むことで、見事に彼女の頭の中を表現しています。
また、マーゴの物怖じしない率直な性格は、自覚の有無に関わらず母親のシャイアンから受け継いだものです。似た者同士だからこそ激しく衝突し、時にはどちらが母親か分からないほど役割が逆転することもあります。そのダイナミクスこそが、演じていて最高に楽しかった部分ですね。
ーーミシェル、あなたが放った「あなたは私の人生をとても綺麗に台無しにした」というセリフは、母親の犠牲と美しさの両面を認める、非常に感動的な言葉でした。他に視聴者に衝撃を与えると思う瞬間はありますか?
ミシェル: あのセリフは私自身、演じていて圧倒されました。もう一つ挙げるとすれば、シャイアンが、マーゴがOnlyFansをやっていると知る瞬間ですね。どんな親も直視したくない現実ですし、そこには強烈な偏見が伴います。
内容を完全には理解できず、恐怖とパニックから激しく当たってしまう……。これは、特にシングルマザーが陥りがちな反応だと思います。シングルマザーの家庭では、親友のような関係と、親子の境界線が曖昧になりがちです。それが子を苦しめることもある。脚本は、こうした複雑で混乱した状況で生き残るための戦いを、非常に豊かに描き出しています。
ーー本作は、現代の若者世代が抱える「孤独」や「繋がりを求める旅」とどのように結びついていると思いますか?
エル: 誰かに「この役はとてもZ世代的だね」と言われて、確かにそうだなと思いました。マーゴは極めて現代的な女性です。これまで時代劇への出演が多かった私にとって、今まさにこの瞬間を生きている女の子を演じるのは新鮮な体験でした。
彼女が抱える「孤独」についても、監督のダーブラ・ウォルシュと深く話し合いました。マーゴには心の大きな穴が開いていて、それを埋めるために「赤ちゃんを育てる」という決断をした側面もあります。「世話をする相手がいれば、自分は一人ではない」という切実な願いです。
もちろん、その思いは後に本物の愛へと成長していきますが、出発点には孤独がありました。しかし、物語が進むにつれて、彼女は血縁を超えたサポートの「村(ヴィレッジ)」を見つけます。いわゆる「ファウンド・ファミリー(選択縁)」ですね。そのプロセスには、孤独を癒すための美しい希望が詰まっています。
ミシェル: 彼女がOnlyFansで自分を「ハングリー・ゴースト(空腹の幽霊)」と名付けるのは非常に象徴的よね。
エル: そうなんです。詩に基づいた名前ですが、いくら食べても満たされない幽霊のこと。彼女の欠乏感を表しています。でもネタバレにならない程度に言うなら、シリーズの最後には、彼女はもうそれほど孤独ではなくなっているはずです(笑)
撮影現場での本物の繋がりと、赤ちゃんと共に学んだこと

ーーニコール・キッドマン(製作総指揮)を含めた共演者たちとの仕事はいかがでしたか?
ミシェル: エルとは3回目の共演ですが、今回初めて本当に深い部分で知り合えた気がします。ニコールも本当に素晴らしい。キャスト全員が最高のパフォーマンスを持って現場に現れ、毎日会うのが楽しみでした。セットチェンジを待っている間のおしゃべりの方が、実際に演技をしている時よりも楽しかったこともあるくらい(笑)優れた脚本は、私たちを否応なしに深い繋がりへと導いてくれます。この現場で生まれた友情は本物で、今でも私たちは頻繁に会っているんですよ。
ーーエル、あなたはSF的な要素を「逃避」と「収入源」の両方に利用するキャラクターを演じています。母親になった後のマーゴのエイリアンのような感覚に、ファンタジーの要素はどう影響していますか?
エル: デヴィッドが書いた「ハングリー・ゴースト」というエイリアンのようなキャラクターは、産後の母親としての感覚から生まれたものです。周りの友人が独身を謳歌する中で、自分だけが母親になり、自分の身体が自分のものではなくなるような感覚。胸からミルクが滴り、赤ちゃんに排泄物をかけられ、ボロボロになる。それはある種「エイリアン」になったような不快で不思議な体験です。
「何者かになるはずだった大学生活」がひっくり返り、私に何が起きたの?と戸惑う。ハングリー・ゴーストは、そんな彼女の経験すべての表現なんです。私自身は母親ではありませんが、現場の母親たちから授乳の痛みや夜泣きの過酷さを教わり、自分をその立場に置こうと努めました。おむつの替え方もこの現場で初めて特訓したんですよ(笑)ハングリー・ゴーストという風変わりな創造物を通じて、新米母親の真実味を皆さんに感じてもらえたら嬉しいです。

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