2025年もまた、Netflixは数多くのオリジナルシリーズを世界に送り出している。今年に入ってから約50作品もの新作ドラマが誕生したが、そのすべてが成功を収めているわけではない。そこで今回は、批評サイトRotten Tomatoes(ロッテントマト)の評価を基に決定した、2025年のワースト10作品を、その評価点と批評家のコメントと共に紹介していく。
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2025年も、世界中を熱狂させるオリジナルシリーズを次々と送 …
好意的な批評の中の「既視感」
『フォー・シーズンズ』(78%)

1981年の映画『四季』を現代版としてリメイクしたドラマ。長年の友人である3組の中年カップルのうち一組が突然離婚したことから、長きにわたり築かれてきた人間関係に大きな波乱が生じる。さらに事態を複雑にしたのが、離婚した配偶者がだいぶ年下の新しいパートナーを連れてきたことだ。
ストーリー展開自体は時に「迷走している」と評されることもあった。しかし、主演のティナ・フェイ(『ミーン・ガールズ』)をはじめ、ウィル・フォーテ(『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』)、コールマン・ドミンゴ(『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』)、そしてスティーヴ・カレル(『ジ・オフィス』)といったコメディが得意な実力派たちが集結。彼らの熟練されたコメディセンスと化学反応こそが、本作の最大の魅力となっている。Next Best Pictureのミーガン・ラチンスキーも、「プロットがどうであれ、ティナ・フェイは常に強力な俳優陣を集める術を知っている。それこそが、これらの友人たち、そして番組そのものにとっての救いとなるだろう」と指摘している。
『ホーンテッド・ホテル』(77%)
二人の子どもを持つシングルマザーが、廃業寸前の幽霊ホテルの経営に奮闘する姿を描いたコメディドラマである。批評家たちの間では概ね好意的な意見が聞かれており、NPRのウォルター・チャウは「おなじみの領域を踏襲しているにもかかわらず、絶え間ないジョークと際立った演技によっていくらか格上げされている」と評価した。
特に、主人公の声優を務めるウィル・フォーテの演技は絶賛されており、チャウは「このシリーズで素晴らしい仕事をしていると思う」と述べた。一方で、設定の斬新さにもかかわらず、「幽霊+コメディ」というジャンルには既視感を覚えるという指摘も存在し、チャウも「しかし、私はこの既視感を乗り越えることができません」と述べている。
可能性を活かせなかった作品:原作ものと巨匠コメディ
『リアン!』(71%)
『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』のチャック・ロリーが手掛けるコメディドラマ。33年間連れ添った夫が突然別の女性のもとに去ったことで、人生が一変したリアンが主人公である。
本作は、主演を務めるリアン・モーガンにスポットライトが当たったときに最も効果的に機能していると、批評家たちは口を揃える。Suoux City Journalのブルース・R・ミラーは、「本作は、彼女が得意とする一言で笑わせるジョークに大きく依存しています」と述べている。番組の魅力は、リアンが持つ唯一無二のコメディセンスに大きく委ねられており、それが十分に活かされていないシーンでは、物語の推進力が弱まってしまうことが指摘されている。
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『賭ケグルイ Bet』(67%)
日本の人気コミックを原作とするギャンブルドラマ。その大胆な設定と野心的なテーマにも関わらず、批評家たちは最終的に本作への失望を表明した。
豪華な舞台設定と、ギャンブルを通じたティーンエイジャーたちの心理戦という斬新な切り口は、富裕層の闇、エリート社会の階級構造といった普遍的なテーマを深く掘り下げるチャンスがあった。しかし、多くの批評家は本作が持つ潜在的な可能性を活かしきれていないと指摘する。Common Sense Mediaのダナエ・スタールネッカーは、「このティーン心理スリラーは、階級、富、そして権力についていくつかの興味深いことを語る可能性があったが、そこには到達していない」と述べている。『賭ケグルイ Bet』は、魅力的なアイデアを掲げながらも、その深みに及ばなかった惜しい作品として、批評家たちの心に複雑な思いを残すこととなった。
政治・コメディ・ドキュメンタリー:テーマの重さが邪魔をした作品たち
『WWE:壮大なるドラマの裏側』(67%)
世界最大のプロレス団体WWEの華やかな舞台裏を描くドキュメンタリーシリーズ。ジョン・シナ、コーディ・ローデス、シャーロット・フレアーといった現代のトップスターから、ドウェイン・“ザ・ロック”・ジョンソンなどのレジェンドまで、錚々たるスーパースターたちが名を連ねる。
プロレスファンならずとも、一つの興行を作り上げるための壮絶な努力に触れることができるのが魅力だが、批評家の評価は見事に二分した。一部のレビュアーはプロレスの世界への分かりやすい入門編として評価する一方、既に熱心なファンからは「内容が少し薄い」という指摘も上がっている。コアなファンが期待するレスラーの個人的な葛藤や団体内の政治といった深掘りされた生々しいエピソードの描写が不足していると感じる向きもあるようだ。ライト層には熱狂の裏側を知る貴重な機会を提供しつつも、コア層には物足りなさを感じさせる結果となった。
『ストーリータイム・ウィズ・トム・セグラ』(54%)
スタンドアップコメディアンとして高い人気を誇るトム・セグラが、自身のコメディネタに着想を得た一連のショートコントとスケッチを映像化した挑戦作である。
しかし、この試みは批評家の意見を真っ二つに分断させ、その多くは、トムの持ち味である「幼稚で過激なユーモアセンス」に対し、露骨な嫌悪感を示した。The Times of Indiaのアビシェク・シュリヴァスタヴァは、本作を「単に悪い番組というだけでなく、忍耐力のテストである。それは下品で、子どもじみており、完全に常軌を逸している」と痛烈に批判した。トムが表現したかった「悪い思考」は、多くの視聴者に受け入れられるには難しかったようだ。
『副知事アントワネット ~彼女は人民のために~』(50%)

ミシシッピ州史上初の黒人副知事となったアントワネット・ダンカーソンが、公人としての生活に順応しようと奮闘する姿を描く。
米エンタメサイトDeciderのジョエル・ケラーは、本作に対して極めて辛辣なレビューを寄稿し、「製作総指揮タイラー・ペリーのドラマに内在するバカげた要素が、ごちゃごちゃした家族ドラマと人種政治を扱った面白い物語になり得たはずのものを圧倒している」と指摘した。主演テリー・J・ヴォーンの安定した演技力や、物語が内包するテーマの面白さを認めつつも、ペリー特有の演出や展開が、核となるべき論理的な側面を台無しにしてしまった点が、低評価の原因となっている。
期待を裏切った大作群:『ペーパー・ハウス』製作陣の新作や西部劇メロドラマ
『ランサム・キャニオン』(45%)

ジョシュ・デュアメルとミンカ・ケリーが主演を務める西部劇メロドラマ。長年の家族ぐるみの友人同士が、深い喪失感を乗り越える過程で恋に落ちるという王道のストーリーだ。シーズン2への更新は決まっているものの、批評家からの評価は厳しい。
Boston Globeのクリス・ヴォグナーは、近年の大ヒット作『イエローストーン』やカルト的人気を誇るスポーツ青春ドラマ『Friday Night Lights(原題)』と比較し、「それらの番組が軽快であるのに対し、本作は単に軽いだけである」と指摘した。これは、物語の深みやキャラクターの描写が表面的なレベルに留まっており、視聴者の心に響く説得力に欠けていることを意味している。名作のDNAを受け継ぎながらも、その魅力を活かしきれなかった惜しい一作である。
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『ビリオネアズ・シェルター』(33%)

Netflixのスペイン発クライムドラマ『ペーパー・ハウス』の製作陣が手掛けた意欲作である。核戦争の危機が迫る世界を舞台に、億万長者たちが地下シェルターに避難するという、ディストピア設定とクライムドラマの要素を融合させた。
革新的なクライムドラマで世界を熱狂させた製作陣の新作であるだけに期待は高かったが、フアン・パブロ・ルッソはEscribiendoCineへの寄稿で「『ビリオネアズ・シェルター』は生存ディストピアとして宣伝されているが、結局は安売りの終末を伴う光沢のあるメロドラマとして展開されてしまう」と断じている。本来、緊張感あふれるサバイバル劇となるはずが、富裕層のドロドロとした愛憎劇に焦点を当てすぎた結果、物語のスケールと深みが失われてしまった。早くも「完全に忘れ去られる」ものとして片付けられるなど、辛辣な評価にさらされている。
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批評家が「浅薄」と断じたワースト1位:メーガン妃のライフスタイル番組
『ウィズ・ラブ、メーガン』(27%)

ワースト1位となったのは、メーガン・マークルがホストを務めるライフスタイルシリーズ『ウィズ・ラブ、メーガン』。
メーガン自身がカリフォルニア州の自宅を舞台に、著名なゲストを招いてお気に入りのレシピやライフスタイルのヒントを共有するという形式で、シーズン2まで配信済み、さらにクリスマス・スペシャルも公開された。しかし、残念ながら本シリーズは成功作とは見なされていない。その最大の要因は、多くの批評家が番組に対して「浅薄で共感しにくい」という極めて厳しい評価を下している点にある。
批評家ジュディ・バーマンは米Timeに寄稿した記事の中で、作品が抱える根本的な問題を鋭く指摘している。バーマンは本作を「クッキーの味気なさを隠せない粉砂糖のようなものである」と表現。メーガンが視聴者を「真に私たちの人生へ迎え入れてくれる代わりに、借りたキッチンから送られた丁寧だが距離のある便り」のように感じさせると述べている。
メーガンが目指す「親密な共有」というコンセプトとは裏腹に、彼女の提示するライフスタイルは、視聴者との間に大きな隔たりを生んだようだ。一見親切な体裁を装いながらも、視聴者にとっては中身のない、共感の難しい上辺だけの情報に過ぎないという辛辣な評価が下されている。
今回はワースト10をご紹介したが、ベスト10はこちらより。年末年始のお休み中にみる作品の参考にしてもらえると嬉しい。
(海外ドラマNAVI)







