米FOXのレスキュー・ヒューマンドラマ『9-1-1:LA救命最前線』に、マイケル・グラント役でレギュラー出演していたロックモンド・ダンバー。新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン接種を拒否したことによりドラマを降板させられたのは不当であるとして、制作会社を訴えた裁判が10月14日(火)に開廷する予定だ。
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『9-1-1:LA救命最前線』レギュラーキャスト、ワクチン接種義務を理由にシーズン5で降板…!
米FOXのレスキュー・ヒューマンドラマ『9-1-1:LA救命最前線』のレギュラーキャストが、新型コロナウイルスのワクチン接種義務を理由に降板したことが明らかとなった。米TV Lineが報じている。 現在、米FOXで放送中のシーズン5半ばにしてシリーズから降板を表明したのは、アンジェラ・バセット扮するロサンゼルス警察署の…
信仰か、義務か?「不自然な化学物質注入は罪」という訴え
ロックモンドは、自身が信仰上の理由からワクチン接種を拒否したと主張している。しかし、制作側であるディズニー傘下の20th Televisionは、この主張を巡り「虚偽の宗教的理由の捏造」を訴えており、法廷での激しい争いが予想される。
彼は、自身が「コングリゲーション・オブ・ユニバーサル・ウィズダム(Congregation of Universal Wisdom)」の信者であると主張。この宗派では「自然の法則に反する化学物質を体内に注入することは罪」とされており、ワクチン接種を避けるのは、自身の真摯な宗教的信念に基づく行動であるというわけだ。
しかし、ロックモンドの弁護団は、彼の信念が単一の宗派に留まるものではないことを示唆している。提出された文書によると、彼はCUWの教えに仏教やアフリカ系ヨルバ信仰を組み合わせた、「微妙に複合的な」信念体系を持っているという。さらに、「少なくとも2014年以降、原告は、ワクチンを接種すると魂が地上に縛られ、死後に神のもとへ昇ることができなくなると信じており」、そのためにワクチン接種を避けてきたとしている。
制作会社が暴いた「信仰の矛盾」
これに対し、ディズニー側はロックモンドがワクチン接種義務化に従わないための口実として、虚偽の宗教的理由をでっち上げたと主張し、強烈な反論を行っている。
予備審理の調査で、同社の弁護士は驚くべき事実を突き止めている。ロックモンドが肩の痛みの治療のためにステロイドなどの薬を服用していたほか、2018年以降、合成テストステロンの定期的な注射を医療機関で受けていたというのだ。ディズニー側の主張は、これらの「不自然な化学物質」の注入を日常的に行っていた人物が、なぜワクチン接種のみを「信仰上の罪」と見なすのか、という矛盾を突くものとなっている。
この裁判は、雇用主に従業員の宗教的慣習に合理的な配慮を義務付ける1964年公民権法の下で争われる。ディズニー側は、ロックモンドの個人的な選択を尊重するとしつつも、争点はその選択が「真摯な宗教的信念」に基づくものだったかどうかだと主張している。
「教会」は存在しない?宗派設立者が明かした実態
ロックモンドが信者だと主張する「コングリゲーション・オブ・ユニバーサル・ウィズダム(CUW)」も、裁判の焦点の一つとなっている。
CUWは、ニュージャージー州のカイロプラクター、ウォルター・シリング博士によって1975年に設立された。長年にわたり、信者たちはこの教義を利用して学校でのワクチン接種義務を回避してきた経緯がある。
82歳のシリング博士は、裁判での証言が体調不良により困難なため、事前に録取された証言映像が陪審員に提示される見通しだ。その映像の中で、博士は教会には礼拝所も定期的な集会もないと証言した。会員は申込書を提出し、会費を支払うことで加入できるという。
シリングは、世間一般にも同じ信念を持つ人はいるが、「義務的な制度が導入されたことで、人々が実際に教会に加入する動機づけになった」と述べている。さらに、合成テストステロンやその他の処方薬を体内に注射することは「冒涜行為(sacrilege)」にあたるとも語っており、ロックモンドの行動との矛盾が浮き彫りになる可能性が高い。
この裁判は、ハリウッドが新型コロナ禍で経験した複雑な安全プロトコル、そして労働組合と制作会社の間の緊張感を改めて思い起こさせる。ロックモンド本人と妻のマヤ、さらに『9-1-1』のショーランナーであるティム・マイナも証言台に立つ予定であり、裁判の行方は今後のエンタメ業界の労働環境に大きな影響を与えることになりそうだ。
『9-1-1:LA救命最前線』シーズン1~8はDisney+(ディズニープラス)で配信中。(海外ドラマNAVI)
参考元:Variety