『ジ・オフィス』「人種差別的」な日本パロディに本家の脚本家が物申す

ある職場の日常をモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)として描き、多くの国でリメイクが作られ、たくさんのファンを誇るコメディドラマ『ジ・オフィス』。同シリーズをもとにしたパロディについて、ドラマ版の脚本家が物申した。

「文化について自分たちが最大の権威のように振る舞っている」

『ジ・オフィス』はもともと2001年に英BBCで誕生。人気コメディアンのリッキー・ジャーヴェイス演じる職場の嫌な上司に悩まされながらも仕事をする人々を描き、『SHERLOCK/シャーロック』でブレイクする前のマーティン・フリーマンもレギュラーキャストの一人を務めていた。その後、米NBCで2005年に始まったアメリカ版リメイクは9シーズン続くほどの人気シリーズに。以降も、フランス、ドイツ、カナダ、イスラエル、ブラジル、インド、オーストラリアなどでリメイク版が作られている。

そして今回話題に上がったのは、アメリカ版リメイクをもとにしたパロディ。1975年から続くNBCの長寿バラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』で2008年に放送されたパロディは、『ジ・オフィス』アメリカ版のキャストたちが出演しているものの、「日本版オフィス(The Japanese Office)」と題して日本風にアレンジしたという内容だ。

その中で、スティーヴ・カレル演じる上司マイケル・スコットをはじめとしたキャラクターたちは、全編で片言の日本語を話しており、英語の字幕はついていない。彼らはラジオ体操らしきものをしたり、社内で箸を使ってラーメンを食べたり、カラオケをしながら日本酒を呑んだりしているが、大袈裟にお辞儀をしたり、互いに頭を下げて謝り合ったりといった、日本人が見ると違和感を覚える描写も多い。

そのパロディの前後には、イギリス版に主演しアメリカ版の製作総指揮に名を連ねたリッキーが登場。もともとイギリス版は日本のドラマをもとにしていると説明した彼は、このパロディについて最後に「人種差別的で笑えるね」と発言している。

リッキーは、コメディアンとしての自分の言動はあくまでもジョークであり実生活では決して口にしないとして、コンプライアンスの機運が高まる現代においても歯に衣着せぬ発言を繰り返して物議を醸している人物だ。

そんな彼らしいと言えるかもしれないこのパロディについて、アメリカ版で脚本家・プロデューサーを務めたマイケル・シュアがこの度ポッドキャスト番組の中で振り返った。キャリア初期に『サタデー・ナイト・ライブ』の脚本を5年以上担当していたが、『ジ・オフィス』に参加するためにその現場を離れたという背景を持つシュアは、次のように述べている。

「『日本版オフィス』は僕には正しいとは思えなかった。『サタデー・ナイト・ライブ』で僕はかつて働いていたけど、今でもあの番組は文化について自分たちが最大の権威のように振る舞っているところがある。だから、あの日本版パロディを見た時には胸がギュッと苦しくなった。“僕の番組を彼らに奪われた。でも僕はもともと日本のドラマから奪ったんだ”と思った。あのパロディは日本版と言いながらも白人が演じていた。そのことをずっと自分の中で引きずっているんだ」

なお、このパロディの監督を担当したアキヴァ・シェイファーは、出演者がほぼ白人であることが「当時気になった」と認めつつも、この脚本家の一人、日系アメリカ人であるマリカ・ソイヤーのヴィジョンをサポートしたかったと話している。ちなみに、パロディに表示された日本語のクレジット名はすべてソイヤーの親族の名前からとったという。

『ジ・オフィス』イギリス版、アメリカ版はHuluにて配信中。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Deadline米Entertainment Weekly