ワーナー・ブラザースと米HBOが進める『ハリー・ポッター』ドラマ版は、2027年リリースに向けてキャスティングなどが進行中。世界中に熱狂的なファンがいる人気シリーズをJ・K・ローリングの原作に忠実に描くという触れ込みだが、2024年6月にショーランナーに起用されたフランチェスカ・ガーディナーについてはほとんど謎に包まれたままだ。本人には取材できなかったものの、脚本家仲間の証言や当人の過去の発言から、米Deadlineがその素顔に迫った。
原作を尊重することの重要性を理解しつつ遊び心もある
EXCLUSIVE: The Story Behind Francesca Gardiner's HBO Hire: Meet The Showrunner Tasked With Casting Another Spell On 'Harry Potter' Fans https://t.co/ut1pKJmn29
— Deadline (@DEADLINE) December 2, 2024
1983年11月にクラシックバイオリニストの母と有名指揮者の父のもとに生まれたガーディナーは、3人姉妹の長女で幼い頃から読書が大好きだったという。特にフィリップ・プルマンによるファンタジー小説「ライラの冒険」3部作の大ファンで、のちに英BBCと米HBOによるドラマ版『ダーク・マテリアルズ』に脚本家として携わることになった。
Kudos社の雑用係としてテレビ業界に足を踏み入れると、その後はある男性を追いかけて行ったアルゼンチンで脚本執筆の授業を受講し、ロンドンにある国立映画テレビ学校への切符を掴む。同校卒業後は、かつてKudos社で彼女が電話番などをしていた時の上司で『ナイト・マネジャー』の製作総指揮でもあるスティーヴン・ギャレットから『X-ファイル』の監督・脚本家・プロデューサーとして知られるフランク・スポトニッツを紹介してもらい、新たなチャンスを手にする。
スポットニッツが手がけた2014年の『トランスポーター ザ・シリーズ ニューミッション』で初めてプロとして脚本を執筆。2019年には『キリング・イヴ/Killing Eve』で脚本チームと俳優陣の橋渡しという異例の役割を務めたガーディナーについて、製作総指揮のサリー・ウッドワード・ジェントルは「トーンやビジョンを伝えるのが驚くほど上手」と評価。『ダーク・マテリアルズ』の筆頭脚本家だったジャック・ソーン(『ハリー・ポッター』舞台版の脚本も担当)は、「一貫して大胆不敵に原作に取り組む、素晴らしい脚本家」と称えており、同シリーズのラスト3話を含む計5話をガーディナーが執筆することになった。
彼女をよく知る人物から「礼儀正しく、しっかりとした育ち」で、上流階級的な雰囲気を漂わせると評されるガーディナーだが、いたずら心も持ち合わせている。とあるポッドキャスト番組で、『ダーク・マテリアルズ』に登場するダイモン(魂の物理的な具現化)なら、自分の魂はどんな動物の姿を取ると思うかを聞かれて「トリュフを探すブタ。好奇心旺盛で欲張り」と迷うことなく答えた姿からもチャーミングな一面が垣間見える。
ガーディナー自身は自分を「内向性と外向性が半々」と分析。過去に「何かの組織の一部であることは昔から好きではなかった」と告白しており、今回世界的な人気を誇るシリーズのドラマ化に挑むのは本人にとっても一大事と言えそう。
「“ボス気質”という言葉は好きではないけど、私は自分の意見をはっきり述べるタイプ。自己主張が強く、自分の好みには確固たる自信がある」とも話していたガーディナー。脚本を執筆する際には、日本の枯山水のように言葉を注意深く配置し、緻密に構成するようにしているという。『キリング・イヴ』のジェントルによる「彼女は物語の多層構造を一度にすべて見渡すことができる」という言葉をはじめ、彼女の文才のみならず“物語を生み出す脳”を絶賛する声が絶えない。
周囲から愛される人柄や経験、ファンタジー文学に対する情熱やHBOとの密な関係性がワーナー・ブラザース・ディスカバリーにとって魅力的に映ったのは明らか。2024年前半に長期間にわたって行われた『ハリー・ポッター』企画プレゼンには、『デビルズ・アワー ~3時33分~』のトム・モランや『デカメロン』のキャスリーン・ジョーダンもいたが、最終的にチャンスを手にしたのはガーディナーだった。
ジェントルは「彼女は原作を尊重することが非常に重要だと強く感じている。挑発的な改変を加えるようなタイプではない」と話しており、『ハリー・ポッター』ドラマ版は原作への揺るぎない忠実さを持つ作品となりそうだ。
現在『キリング・イヴ』のローラ・ニールなどとともに脚本家チームを結成しているガーディナー。同じく脚本家として活動する妹ジョセフィンもチームに加わっている。『メディア王 ~華麗なる一族~』の監督マーク・マイロッドも監督兼製作総指揮として参加予定だ。
彼女をよく知る人物は「ハリー・ポッター作品のことは安心して彼女に任せられる」と語る。同じ業界人たちからの信頼厚いガーディナーが創り上げるハリー・ポッターの世界を見られる日が待ち遠しい。
『ハリー・ポッター』映画シリーズ全8作はAmazon Prime Video(アマゾンプライム)、U-NEXT、Huluにて配信中。(海外ドラマNAVI)
参考元:米Deadline
Photo:『ハリー・ポッターと秘密の部屋』©GIG/FAMOUS