米国ママパパの基準は?ティーンエイジャーに見せたい&見せたくない海外ドラマ

携帯電話や動画配信サービスの普及に伴い、子どもから大人まで好きな時に好きなコンテンツを視聴できる昨今。だが、親目線で考えると子どもには見せたくない作品があるのも事実。いわゆる“ティーンドラマ”であればある程度は安心して見せられるが、大人が楽しむような作品になるとどうだろうか。海外ドラマにも対象年齢を示すレーティングは設けられているが、必ずしもそれに準拠して皆が見ているわけではない。では、アメリカのパパやママが、レーティングに限らず子どもの視聴を認める、あるいは認めたくない作品とは一体どのようなものなのだろうか? 自らも10代の子どもを持つアメリカ在住ライターの筆者が、“お年頃”の子ども、ティーンエイジャーに年齢層を絞って、親が見せたい・見せたくない作品をその理由とともに紹介しよう。

親が子どもに見せたい海外ドラマ

『ウェンズデー』

ウェンズデー

2022年の配信開始直後から大ブームとなった本作。16歳の主人公ウェンズデーを取り巻く学園サスペンスだが、大人が見ても楽しめる。殺人事件を扱ってはいるものの、際どいシーンもなくダークコメディベースなので、家族で視聴できる内容なのがポイント。ウェンズデーをはじめとしたアダムス家を主役にした1990年代のコメディ映画『アダムス・ファミリー』シリーズは親世代で流行った作品なので、そこも親視点でおすすめになったようだ。アメリカのティーン女子はウェンズデーのファッションや話題になったダンスなども取り入れ、本作は学校でのポップカルチャー的な存在にもなった。ハロウィンではウェンズデーの黒いドレスを衣装にした子もいたほど。話題作でありつつ大人も子どもも楽しめる作品は、やはり人気のようだ。

『ウェンズデー』はNetflixにて配信中。

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』

ストレンジャー・シングス 未知の世界

様々な記録を更新し続ける大ヒットダークファンタジー。子どもたちが主人公であることはもちろんポイントだが、親が一緒に見てもハマってしまう素晴らしいストーリー展開が魅力。シーズンを追うごとに成長していくキャストたちに感情移入するティーンも多い。1980年代のノスタルジックな雰囲気は、親世代にとっては懐かしく、子ども世代にとっては目新しくもあり、あまり口を聞いてくれなくなったティーンを持つ親にとっては子どもとの話題のきっかけ作りになるのが嬉しくて本作を推すようだ。

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン1~4はNetflixにて配信中。

『ER』『グッド・ドクター』『ニュー・アムステルダム』など医療ドラマ全般

グッド・ドクター 名医の条件

医療ドラマは、アメリカでも人気のジャンルである。恋愛や友情などヒューマンドラマの要素はあるものの、基本的に医療のシーンはどれもが現代医学に基づいたもの。将来のことも考える年頃のティーンには医療従事者とはどのようなものなのかを疑似体験できる要素があり、親にも子どもにも人気だ。特に親が医療従事者である場合は、自分の職場での体験を子どもに話すよりも、こうして映像としての現場を見せた方がより心に響くとして、積極的に視聴を進める場合もあるという。

『ER 緊急救命室』全15シーズン、『グッド・ドクター 名医の条件』シーズン1~5、『ニュー・アムステルダム』シーズン1~3はHuluにて配信中。

『セックス・エデュケーション』

セックス・エデュケーション

意外と思われるかもしれないが、どんなことに関してもド直球で子どもとの対話を好むアメリカのパパママの中には、タイトル通りセックスがテーマの本作を「見せたい」「一緒に見たい」作品として挙げる人もいる。中学生には早いかもしれないが、作中のキャラクターたちと同じ高校生くらいの子どもであれば、この手の話ができると思う親も少なくはない。たしかに題材は“性”かもしれないが、そこに明るく面白くそして真面目に取り組んでいることで、コメディドラマとしても楽しめながら学べるという考えだ。どのような親子関係かにもよるが、オープンな家族であれば、敢えてこの作品で学んでほしいと思う家庭もある。

『セックス・エデュケーション』全4シーズンはNetflixにて配信中。

親が子どもに見せたくない海外ドラマ

『シェイムレス 俺たちに恥はない』

シェイムレス 俺たちに恥はない

大人にとっては面白い大ヒットコメディだが、ティーンには厳しい要素がありすぎる。ケーブル放送局の作品ということもあってアルコールやドラッグはもちろんのこと、セックスシーンやレイプの描写もあり、特に10代前半には見せられない。物語としてはざっくり言えばある家族のヒューマンドラマではあるものの、親にとっては子どもがせめて18歳以上になってから視聴してもらいたい作品のようだ。

『ザ・ボーイズ』

ザ・ボーイズ

政治的要素とエンタメ要素を見事に融合させた話題作。だが、シーズンを追うごとに血みどろレベルと全裸シーンが激しくなり、さらにはこれほど過激な性描写はドラマ史上なかっただろうと製作者が言うほどの過激な映像で、子どもにはアウト! 視聴済みのファンなら、本作を中高生の子どもに見せる、または一緒に見る勇気のある親は滅多にいないだろうと容易に想像がつくだろう。ちなみに、アメリカや日本を含めたほとんどの国では視聴対象が18歳以上。シンガポールではさらに厳しく21歳以上なのに対し、フランス語圏で独自の文化を維持するカナダのケベック州ではなんと13歳以上のレーティングというのがなかなか面白い。

『ザ・ボーイズ』シーズン1~4はAmazon Prime Video(アマゾンプライム)にて配信中。

『13の理由』

13の理由

一人の少女が自殺したことをきっかけに、その親やクラスメイトたちとの関係が描かれる衝撃作。本作配信後に自殺する若者が増加したという調査報告もあり、シーズン1ではハンナが自殺するシーンがあったが、のちにNetflixが削除している。センセーショナルで視聴者を惹きつける作品で、大人も子どもも考えさせられる現代社会の問題を見事に描写しているが、親が子どもに視聴を勧めたい、一緒に見ようと思わないのも仕方ないのかもしれない。全編を通じて重苦しく明るい要素がないところも、親としてはおすすめできないポイント。大人になってから見て何かを感じ取ってほしい作品と言える。

『13の理由』全4シーズンはNetflixにて配信中。

『ゲーム・オブ・スローンズ』

ゲーム・オブ・スローンズ

世界中で大ヒットしたファンタジー大河ドラマ。ストーリーもキャラクター設定も素晴らしいが、やはりグロいのがNGポイント。ヌードや性描写も多いが、どちらかというと流血が激しくシリアスな展開が続くのがおすすめできないポイントのようだ。また、この作品に関してはちょっと変わった理由もある。本作のファンだという親の中には、「結末があれだと思うと、何シーズンも子どもに見させるのは酷だと思うから」と言う人もいるのだ。どうせ見せるなら、最後までスッキリと満足できるエンタメを薦めたいと思うのも、ある意味親心かもしれない。

『ゲーム・オブ・スローンズ』全8シーズンはU-NEXTにて配信中。

* * *

いかがだっただろうか。『フルハウス』『フレンズ』『ヤング・シェルドン』といったコメディはもちろんだが、エンタメとして誰もが楽しめるディズニー/マーベルなどは親のお墨付きになることが多い。一方、シリアスなドラマでもそこまで過激なものでなければ概ね子どもに薦めるという親は一般的に多い。また、子どもの将来に役に立ちそうな“お仕事系”や歴史が学べる『ザ・クラウン』のような作品も人気だ。

だが、親が視聴を認めない作品だとしても、世間で話題になっていれば知っている子どもはたくさんいるだろう。今の時代、子どもの視聴を完全にシャットダウンするのは難しいかもしれない。親としては薦められない作品を子どもが見たがる場合は、親も一緒に1話目、2話目を見て、子どもにその感想を聞いてから視聴継続の有無を話し合うという家庭もあるようだ。TVドラマはアメリカの家庭における親子関係の構築や、子どものメディア・リテラシーのスキル習得にとっても、一役買っていると言えるだろう。

(文/Erina Austen)

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Photo:Netflixオリジナルシリーズ『ウェンズデー』は独占配信中/Netflixオリジナルシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』は独占配信中/『グッド・ドクター 名医の条件』© ABC Studios/『セックス・エデュケーション』© Sam Taylor/Netflix/『シェイムレス 俺たちに恥はない』© Warner Bros. Entertainment Inc./『ザ・ボーイズ』© Amazon MGM Studios © Amazon Content Services LLC/Netflixオリジナルシリーズ『13の理由』は独占配信中/『ゲーム・オブ・スローンズ』© 2019 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and related service marks are the property of Home Box Office, Inc. Distributed by Warner Bros. Entertainment Inc.