『Marvel’s・ウェイストランダーズ』の日本語版でキャストを務めた多田野曜平、下野紘、平野綾に直撃インタビュー! 音声コンテンツならではの魅力や苦労したこと、さらにはよく聞く音声コンテンツについて伺った。
『Marvel’s・ウェイストランダーズ』とは
『Marvel’s・ウェイストランダーズ』はAmazon オーディブルのオリジナルポッドキャストシリーズ。ヒーローたちがヴィランに敗れたその後の世界を描く。
シーズン1にあたる『Marvel’s・ウェイストランダーズ:スターロード』から始まり、シーズン3の『Marvel’s・ウェイストランダーズ:ブラック・ウィドウ』まで現在配信中。そして、2024年3月には新作『Marvel’s・ウェイストランダーズ:ウルヴァリン』の配信が予定されている。
今回、『Marvel’s・ウェイストランダーズ:スターロード』ロケット・ラクーン役の多田野、『Marvel’s・ウェイストランダーズ:ブラック・ウィドウ』ジョーダン・テンプル役の下野、『Marvel’s・ウェイストランダーズ:ウルヴァリン』キティ・プライド役の平野の3名に話を伺った。
キャストの多田野曜平&下野紘&平野綾に直撃インタビュー!
――みなさん実写作品の吹き替えの経験も豊富かと存じますが、今回は音声コンテンツということで映像がありません。音しかないという特性によって苦労したことはありましたか?
多田野:舞台に立とうがアニメの吹き替えをしようが、基本的に「演じる」ことに変わりはないと思っています。ただ、あえて大変だったことを挙げるなら、とにかく台詞が多かったこと!
下野:2回に分けて収録しましたよね。
多田野:量が多いし、最後の方に関しては息切れで眩暈がしそうなくらい! フラフラになりながらの収録だったので、そういう意味では苦労したかな。
下野:僕は台本を最初に読むとき、これはどんな会話? テンションはどんな感じだろう? と想像します。洋画や海外ドラマの吹き替えの場合はプラスして映像があるのでそれが読み取りやすいですが、今回頼りになるのは音だけ。SEやほかのキャラクターの台詞によるニュアンスなどを聞きながら演技のプランを立てるのは、今までにない感覚でした。
特に、今回演じたジョーダンはとにかくテンションの起伏が激しいんです。ボソボソ喋っていたかと思うと、急にテンションが高くなって……。彼の他にもキャラクターがいる場面はまだわかりやすいのですが、彼一人だけのときが難しかったです。ジョーダンの中で感情がどう動いたのか、想像を膨らませながら演じなければいけない。耳をフルに活用しました。
平野:振り返ってみると、映像がある作品よりもチェックにかなり時間がかかった印象があります。というのも、私が参加した『ウルヴァリン』は肉弾戦よりも精神攻撃のシーンが多いんですよ。幻覚を見せられたり、幻覚と現実世界が同時に進行していて両方の音声が入っていたり…。すごく複雑な構造になっていたので、何度も何度もチェックする必要がありました。
SEも参考にはしたんですが、慣れるまで結構苦戦しました。「これは自分の能力の音だ」ってわかりはじめると早かったですね。
下野:そう、シーンの途中でわかりやすくSEが入っているのですが、それでも「あれ、今ってどのシーンを喋っているんだっけ?」となってしまうことも。複数人での会話シーンが特にそうで、たとえば男性二人が話していると「今のは俺。いや、俺じゃない? どっちだ?」って。
多田野:あと、時間経過も難しかった! 「翌日になりました」みたいなナレーションもないから。リハーサルにも時間がかかったよね。普通は映像側の演技やタイムとかチェックする項目があるけど、今回はチェックするっていうより舞台の稽古みたいな。身体に染み込ませるまで台本を読むしかないって感じだった。
――ご自身が演じた作品のお気に入りのシーンや好きな部分を教えてください。
多田野:『スターロード』は、スターロードとロケットのノリとツッコミが重要なんです。間とリズムを崩さないようにすることはすごく意識しましたね。とにかく台本がすごくよくできているんですよ。ほのぼのとしたウィットがずっと散りばめられている。
英語から日本語に翻訳するとき、ウィットが消えちゃうことってあるじゃないですか。そういうことがなるべくないように気を付けました。個人的にも、命がけで戦っている傍らでちょっとした冗談を言うような欧米っぽいシーンがすごく好きなんです。
下野:僕が演じたジョーダンは、ちょっとオタク気質な青年。そんな彼が、諸星すみれちゃん演じるリサに嫉妬心のようなものを抱き始めるんです。その感情が自分の中で鬱屈して、どんどん溜まっていき、ついには爆発する瞬間がある。そこは自分でも演じていてものすごく面白かったですね。
本当にジョーダンはテンションの上下が激しくて、コロコロと色々な表情を見せてくれるキャラクターなのですが、そこが彼の面白さだなと思います。
平野:私が参加した『ウルヴァリン』は、その名の通りウルヴァリンことローガンが主人公です。映画のX-MENシリーズのように、ローガンが失った記憶を探して旅をするような内容で「自分が覚えている過去が本当は間違っているんじゃないか?」と、過去を探っていくんです。
キティ自身も、初登場シーンと、のちにローガンと再会するシーンがもう別人のようにガラッと違うんですよ。そのシリアスさがありつつも、さっき多田野さんもおっしゃったようなギャグパートもあって、その差がすごく激しい。その切り替えがとても面白くてお気に入りです。
――ポッドキャスト含む音声コンテンツの利用者は、日本でも日々増えているそうです。みなさんは、普段どんな音声コンテンツをどんな時に聞いていますか? また、どんなジャンルに興味がありますか?
多田野:ラジオドラマが好きでよく聞いています。台所仕事や洗濯とかをするときに、テレビの代わりに流していますね。母が好きだった影響もあるかな。音声コンテンツって、作り手的にはお金がかからないじゃないですか。どんなものだって用意できる。そういう、想像力次第で何でもできるところがすごいと思います。
下野:僕もラジオドラマは結構聞きます。朗読もとても好きで、ジャンルでいうとホラーやコメディなど。音だけのホラーは難しく感じるのですが、耳から聞くだけでも怖さって十分伝わると思うんです。これまでも何度かやらせていただきましたが、僕自身とても面白いなと思っています。
音声コンテンツは尺の決まりがそんなにないですよね。そういう意味では、長く聞くのは大変だという人も聞けるような、5分程度の短いコンテンツを作ったりするのも面白そうです。
平野:コロナ禍以降ラジオを聞く方が増えたという話は私も小耳に挟んでいて、自分でも試してみようと思い、お料理のときなどにながら聞きをするようになりました。一度始めたら普段からするようになって。聞きながら他のことが一緒にできるのがいいですよね。
普段は、耳でながら聞きをしながら頭では自分の舞台の台詞を覚えてるか確認する、といった作業もするんですが、本シリーズはそれができない! しっかり聞いちゃいますね。音声にこだわっているので、細部に至るまで聞いてほしいです。耳の訓練になると思います!
――多田野さんにお聞きします。『スター・ウォーズ』シリーズのヨーダやキャド・ベイン、『IT/イット』のペニーワイズなど、人間離れしたキャラクターを務められることが多いイメージがありますが、今回“アライグマ”のロケット・ラクーンはどんな心持で演じられましたか?
多田野:だいたい、チビかハゲか長い顔! デビューしたときからそうなんです。劇団の養成所の中間発表がタヌキで、卒業公演はカッパ。大絶賛されて劇団入って最初にもらった役がポテトでさ。サツマイモに憧れて、北海道から鹿児島まで旅するっていう。
下野:すごいですね(笑)
多田野:こっちが聞きたいよね。“そういう声”っていうのがあるのか! って。オーディションで「ハゲの気持ちがわかるのはハゲしかいない」とか言うと大概合格するんだよ。今日もコスプレしている人が多いから会ってみたい。ヨーダとかキャド・ベインに。
――ロケット・ラクーンは会場にいましたよね(※取材日は東京コミコン当日)。
多田野:そう! さっきもロケットのコスチュームを自分も買えばよかったかな? って話してて(笑) ロケットはね、実は今回が初めてじゃないんです。映画の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の前に、アニメに脇役で登場したことがあってその頃は僕が担当していた。だから、今回オファーをもらったときは喜びもひとしおで! ロケットの人生の最初と最後を演じられたって感じ(笑)
――下野さんは今回が初のマーベル作品への出演と思いますが、オファーを受けた際の心境をお聞かせください。
下野:正直に言うと、僕自身はそんなに深くマーベルに触れてこなかったんです。ただ、周りの声優さんたちは、マーベルの新作が始まるとみんなずっとその話をしているので、ほんとに日本においても大人気の作品になんだなとは常々感じていました。
多田野:わかるわかる。日本代表に選ばれそこねたみたいな感じ。
下野:マーベルに限らずアニメ作品でもそうなんですけど、自分がかかわってない作品はちょっと悔しい思いがあるというか、逆に見られなかったりするんですよね。
今回、ヒーローやヴィランみたいに特殊なパワーがあるキャラクターではないですが、マーベル作品に関わることができてとても嬉しかったですし、テンションはめちゃめちゃ上がりました。「やっと俺にも!」と。
――それこそ、ジョーダンに近い感情だったんでしょうか。
下野:確かに。そう言われると、今までの思いを爆発させられたのかなと思います。ジョーダン役で良かったです!
――平野さんはアニメやゲームなどの声優だけでなく、ミュージカルや舞台、ドラマなど、多様なメディアで活躍されていますが、本作のオファーを受けた決め手はありますか?
平野:私は下野さんと真逆で、マーベル超好きなので「やっときた!」という思いでした。やりますってすぐ返事させていただきました! 映画だけじゃなくって、ディズニープラスで配信されているドラマシリーズも全部見るくらい大好きなんです。
ウルヴァリンをはじめとするX-MEN中心のストーリーだったので、「これはちゃんともう1回見直さなきゃダメだな」と思って、X-MENの映画を全て見返しました。
いろんなお仕事させていただく中で実写だとどうしても限界がありますが、声の仕事はその限界がないので、やっぱりテンションは上がりますね。「私がこんな魔法使えるんだ!」「こんな能力使えるんだ!」みたいな。現実の世界とかけ離れたものを演じさせていただけるっていう楽しみはすごく毎回あります。
下野:女性声優さんで、マーベル好きな人多いですよね。少し前も、女性声優さん同士で話してましたよ。「あそこのシーンよかった」「超よかった!」みたいな。男性声優さんは個々で楽しむ人が多い印象があるかも。
平野:ドラマのシリーズですかね? 最近だと『ロキ』とかマジで好きで、今回トム・ヒドルストンが来日しているので今すぐ会いにいきたいくらいです(笑)
下野:映画の話もしてました。『アベンジャーズ』の1作目くらいから。若い子たちがすごい盛り上がってるなと、遠くから見てました。
平野:私はなかなかそういう輪に入っていけないタイプなので…。ちょっと今度声かけてみます!
下野:きっと「そんなに好きじゃないんだろうな」とみんな遠慮してしまってるんだと思いますよ。グッズとかもたくさんあるから持ち物につけてアピールして、仲間を見つけていけばいいですよね、ってごめんなさい。これ何のインタビューでしたっけ?(笑)
――最後にお聞きします。本シリーズをどんな人に聞いてほしいですか?
多田野:小さい子どもたちにたくさん聞いてもらいたいです。『Marvel’s・ウェイストランダーズ』のロケット=多田野って認識してもらえれば。
下野:ロケット復活計画(笑)
多田野:そして、未来の多田野曜平ファンを増やす!
下野:僕は、この作品自体マーベル作品を知らない方でも楽しめると思っています。マーベル作品を楽しんでいる方が聞くと、おー! となるポイントがたくさんあると思いますし、そうではない方にも聴いていただきたいです。
特に『ブラック・ウィドウ』に関しては、主人公は別にヒーローでもなんでもないというところからスタートします。そして、あえて言葉を選ばないとすると、出てくる男性陣がポンコツばかり。一方で強くて格好いい女性がたくさん登場します。
そういう意味では、女性の方だと「わかるな」と共感できるのではないでしょうか。男性陣がいかにダメダメかというのを、楽しんで聞いていただければと思います(笑)
平野:本シリーズはヴィランに支配された世界が舞台で、パラレルワールド感がありますよね。マーベルファンの方も、いい意味ですごく裏切られるというか、新しいシリーズとして聞いていただけると思います。
『ウルヴァリン』はシリーズのシーズン4ですが、シーズン1~3をうまく踏襲しているので、本作から聞いて「もっと知りたい」と思っていただけたらぜひ前のエピソードを聞いてほしいと思います。そうやって徐々にマーベルファンになってほしいなって!
――ありがとうございました!
『Marvel’s・ウェイストランダーズ』配信情報
『Marvel’s・ウェイストランダーズ』シーズン1~3はAudibleで独占配信中。シーズン4にあたる『Marvel’s・ウェイストランダーズ:ウルヴァリン』は2024年3月に配信開始予定。
『Marvel’s・ウェイストランダーズ』詳細はこちら
(海外ドラマNAVI)