【映画レビュー】80代のおじいちゃんが麻薬を運ぶ...実話ベースのクリント・イーストウッド監督・主演映画『運び屋』

3月8日(金)公開の映画『運び屋』は、実在した老齢の運び屋を描くクライムサスペンス。コカインの輸送業に手を染めてしまった孤独な老人が送る、スリルと哀愁の生活とは。88歳のクリント・イーストウッド(『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』)がメガホンを取りつつ、主役の運び屋を自ら演じる。

妙に報酬の良いドライブ稼業

退役軍人のアール(イーストウッド)は、ガーデニングをして暮らす孤独な老人。経済的に困窮したことから、車を運転するだけで高額の報酬をもらえるという仕事に手を出してしまう。それがメキシコの麻薬カルテルが取り仕切る、コカインの運搬業であるとは知らずに...。

一見温和で免許の違反歴もないアールは、どこからどう見ても善良な市民。一度に100キロ以上ものコカインを易々と輸送し、すぐに巨大カルテルのなかでもトップの運び屋となる。おんぼろトラックで始めた稼業も、いつしか高級車にグレードアップする。

ところがある日、麻薬取締局のベイツ捜査官(ブラッドリー・クーパー『アリー/ スター誕生』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)がコカインの輸送情報をキャッチ。当局による盗聴で、移送ルートと車の色、そして取引の時間が漏れてしまう。5時間後に迫る受け渡しよりも前に摘発しようと、ベイツ捜査官は気合十分。捜査の手が迫るなか、アールは持ち前の機転で摘発を逃れようとするが......。

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深みのある演技 クリント・イーストウッド

88歳にして、いまだ才能が枯れる気配を微塵も感じさせないクリント・イーストウッド。この歳で大手スタジオ作品の監督・主演を買って出るのはほぼ前代未聞だと、米Los Angeles Times紙は驚きを露わにしている。「自らをハンサムに撮ろうと思ったことはない」と、1992年の西部劇『許されざる者』の公開時にも断言していたイーストウッド。単なる老齢の男を超え、知恵が回るが脆さも併せ持つという深みのあるアール役を演じる。

実話に基づく良作、と米Wall Street Journal紙はコメント。コカインに関するアールの知識は素人同然で、プロの運び屋といった風情ではない。それでも、一仕事成功させるごとに豊かになってゆくその姿を追うのは愉しい、と同メディアは述べている。

センスあるコメディ要素も盛り込まれた、風変わりなクライム・ドラマとして楽しめる本作。素晴らしい役者をキャストに迎えた愉快な作品だ、と米Chicago Sun-Times紙は評価する。イーストウッド扮する足取りのおぼつかない運び屋が、ウィットの効いたセリフを繰り出して驚かせてくれる。

全米2位の良作

全米公開は昨年の12月14日。2600館近いシアターでクリスマスシーズンに上映されると、『スパイダーマン: スパイダーバース』を追う形で全米2位につけ、公開初週の週末興行成績は1750万ドル(約19億3800万円)を突破した。哀愁漂うドラマパートと、緊迫感溢れる捜査官との駆け引きとの両面を楽しめる一本だ。

驚きの実話に基づくクライムサスペンス『運び屋』は、3月8日(金)より全国ロードショー。

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映画『運び屋』
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