構想30年を掛け、9回も企画が頓挫し、映画史上最も呪われた企画と謳われる『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』が公開した。本作で『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョナサン・プライスが演じる自らを<ドン・キホーテ>と信じる男の鎧には隠された秘密があった―。
企画頓挫するあまり、『ロスト・イン・ラ・マンチャ』としてその過程がドキュメンタリー映画として上映された異色の本作。主人公トビー役を射止めたのは、ドラマ『GIRLS/ガールズ』に出演し、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のカイロ・レン役や、『マリッジ・ストーリー』では本年度ゴールデン・グローブ賞&アカデミー賞主演男優賞にノミネートされアダム・ドライバー。
そして、自身をドン・キホーテと信じる老人ハビエル役を『ゲーム・オブ・スローンズ』でハイ・スパロウを演じ、Netflix映画『2人のローマ教皇』で同じくゴールデン・グローブ賞&アカデミー賞主演男優賞にノミネートされているベテラン俳優ジョナサン・プライスが扮する。
資金繰りや候補者の体調不良などにより幾度となく、キャスティングが変更となったハビエル。2000年の撮影時はジャン・ロシュフォール(『列車に乗った男』)が演じたが、腰痛を発症し無念の途中降板。その後、ジェラール・ドパルデュー(『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』)やロバート・デュバル(『ゴッドファーザー』シリーズ)らの名前が上がるが決まらず。また『エレファント・マン』や『ハリー・ポッター』シリーズにも出演した名優ジョン・ハートに決定するも、クランクインの直前にすい臓がんと診断され撮影が中止に。だがキャスティングが難航していくうち、ハビエルを演じるに丁度良い年齢となったジョナサンに白羽の矢が立ち、本作で4度目となるテリー・ギリアムとのタッグが実現。
そんな、ジョナサンが劇中で纏っている年季の入った鎧は、なんとジャン・ロシュフォールが着用していたものと同じ鎧。何人もの俳優が演じ切ることができなかった無念の想いが詰まった鎧をジョナサンが纏った。
映画撮影時に衣装アシスタントをしていたカルロ・ポッジオーリがほかの舞台の衣装を探している際、偶然にドン・キホーテの鎧を発見。そして本作の衣装担当であるレナ・モッサムが微調整を施し、ジョナサンに完璧にフィットする鎧が誕生した。
ジョナサンは今回のオファーについて、「とても嬉しいです。この歳になっても仕事があるなんて(笑) ギリアムとまた仕事をするならば、一切躊躇することはないでしょう」と喜び、「"数々の障害物でこの映画の完成を阻んできたのは、(私が)ドン・キホーテを演じるのに十分な老人になるのを待つためだ"と言っていていました」とギリアム監督に言われたジョークを明かした。
そしてドン・キホーテが纏う年季の入った鎧については「ジャン・ロシュフォールが着用したオリジナルの衣装が手に入った!」と誇らしげに語り、テリー・ギリアムは「もし資金が潤沢にあったら、こんなにもこの映画にあう衣装は誕生しなかった」と衣装を絶賛し、ウィットに富んだコメントを残している。
無念の想いはジャン・ロシュフォールからジョナサン・プライスへ―。『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』は、大ヒット上映中。(海外ドラマNAVI)
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『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(c) 2017 Tornasol Films, Carisco Producciones AIE, Kinology, Entre Chien et Loup, Ukbar Filmes, El Hombre Que Mató a Don Quijote A.I.E., Tornasol/『ロスト・イン・ラ・マンチャ』(c) 2001 QUIXOTE FILMS LIMITED ALL RIGHTS RESERVED