皆さん、この猛暑をいかがお過ごしでしょうか? なるべく外に出ないで、涼しいところで海ドラ三昧...って方も少なくないのでは? そんな中、「普段、なかなか行く機会がないところにみなさんを(エアで)お連れしよう!」ということで、「海ドラNAVI的★大人の社会科見学」と題し、海ドラにゆかりのある会社を紹介していこう!ということになりました。
第1回は「Hulu」。Hulu日本代表のバディ・マリーニさん(イケメン!)にたっぷりと話を伺ってきました。社内の様子も含めてぜひお楽しみください。
――日本というマーケット、そして日本のユーザーについて、現段階でどのように捉えていますか?
すごく大きい質問ですね(笑)。そもそもHuluにとって、日本は(アメリカ本社からみて)初めて海外で展開した市場だという背景があります。もちろん様々なリサーチも行ったのですが、(日本に進出することが決まった要因は)大きく言って3つあると思います。
まずはインターネット環境。インターネットだけじゃなくて、テクニカルな部分での環境がすごく整っている。例えば、インターネットの普及率も高いし、モバイルもすごく普及していると...。あと、テレビやゲーム機などの環境ですね。我々のサービスを提供できる環境が整っているっていうのは1つありました。
もう1つはやはりユーザーさんですね。(日本のユーザーは)高いクオリティの映像が好きだと思います。エンターテインメントファンも多いし、もちろん海外ドラマを見る人も多いんですけど、全体的に世界と比べてエンターテインメントが好きな人が多いのではないかと思っていますね。
それから、日本のコンテンツも非常に充実しています。例えばですが、アメリカのHuluでは日本のコンテンツ、特にアニメなんかが結構ランキングの上位に立つんですね。例えば『NARUTO』がいい例ですけれども、常にトップ10に入っていて、アメリカの何十億も制作にかけたすごいドラマと一緒に並ぶわけですよね。日本のコンテンツはやっぱりものすごい、イイところをいっています。そういうことからも、アメリカ本社からの(日本の)エンターテインメントに対する思いが伝わって来ましたね。それもあって、日本に可能性を感じました。
――Huluの月額料金が1,480円から980円になったときに、入会する方が増えたのでは?と思ったのですが、今後はどういった層に向けたプロモーションに力を入れていこうとしていますか?
そうですね。我々のサービスは、コンテンツも豊富で、幅広い年齢層の方々に向けて提供しているので、若い人たちも、結構年配の人たちも、子供もみんな楽しめるようなコンテンツが並んでいます。やはり中心となる層というところでは、20代後半から40代くらいです。男性のほうが少し多いですけれども、男女比率はほぼイコールになってきています。昨年は、オダギリジョーさんをTV-CMのキャラクターに起用したのですが、その時はやっぱり、日本に来てまだ(Huluを)知っている人が少ない状況だったので、日本人が信頼できる人にHuluを紹介してもらう、という考えでタレントを探していました。オダギリさんという方は、非常にクリエイティブであり、シリアスなアクターですよね。格好いいのはもちろんですけど、それ以上に"本物"ですよね。その本物感っていうものと、「我々のサービス内容も本物です」ということが伝わればと思いご出演していただきました。
いろんな動画サービスがある中で、我々はクオリティの高いプレミアムコンテンツしか扱わない。だから、ユーザーが自由に作って投稿をするユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツみたいな、コンテンツもないので、「本物的な立ち位置で紹介しよう」という形でやりました。それが第1フェーズです。
今放送中のCMに出演して頂いているベッキーさんには、今度は「"視聴者側"に立って映画やドラマを見てる」という設定から、Huluが伝えたいメッセージを発信していただいています。CMの内容も、自分の部屋でテレビでHuluを起動して、周りにコンテンツがズラーっと1万本くらい出ているんです。以前のCMとは逆に、視聴者がベッキーさんの立場に立って見るような形で、「借りなくていい」「返さなくていい」っていう便利さと、「こんなにあって、そこから毎日見ても飽きない」っていうところをプロモートしていこうという形にしました。
今後も、視聴者にとってHuluにどのようなメリットがあって、それがユーザーにとってどのような価値を生み出すサービスであるかをプロモーションしていきたいと思っています。別に男女はあんまりこだわっているわけではないんですけども、今回ベッキーさんは「視聴者の目線にいる人だということを、みなさんがわかってくれるような人ではないか?」ということでご出演いただきました。
――例えば今後、第3フェーズとして、日本のユーザーをさらに取り込むタイミングやきっかけを作ろうとしているのなら、その点についてはどのようにお考えですか?
そうですね。いろいろ考えています。ただ、今話せることはあまりないんですけど(笑)。でも実際にこのビデオ・オン・デマンド(以下VOD)の市場っていうのは、まだまだ始まったばっかりなんですよね。
例えば今年「動画配信(VOD)の市場動向に関する調査」というものがデジタルコンテンツ協会というところから出ているんです。これは2012年の調査結果なんですが、5,000人に対して、「利用したVODサービスを選んでください」っていうような質問をしているんです。そこでHuluが1番に選ばれたんですね。VODを使った人の中で25.5%がHuluを使ったことがある、ということで、結構使われているんだなという実感はあります。ただし、5,000人の中で、実際にVODを使ったことのある人は6.6%しかいないんですね。だから、VODはまだまだこれから伸びる市場であると我々は確信しています。
これからもっともっとVOD市場全体が大きくなっていくだろうと思います。我々もそれに貢献するし、他の会社もプッシュしてくると思いますけど、ある意味こちらで仕掛けるだけでなく、どこかのタイミングで視聴者も「これは便利だ」とか「これはいいね」っていう波が来ると思うので、それにうまくポジショニングしていかなきゃいけないなと思います。
――VODユーザーの25.5%が選んだということは、他のVODのサービスとは差異があるからではないかと思います。他のサービスとの差異、差別化というものをどのように考えていますか?
いくつかあると思うんですけれども、やはり提供するコンテンツですよね。本当に良いものを提供しないと、すぐに飽きられたり、(利用を)止められたりすると思っています。なので、追加コンテンツの選び方や充実さというのはすごく大事だと思っています。
それから、ユーザー体験のクオリティにも大きなウェイトを置いています。視聴者が簡単に、今すぐ、ワンクリックで見られるような環境を作るということがすごく大事ですよね。インターネットの環境がどうであれ、すぐに再生できたり、お客様のデバイスに一番適した画質で提供するというところに、Huluはすごくフォーカスしています。技術まわりのことはアメリカが中心になるんですけども、システム・エンジニアが、例えば「スピード的にもっと早く」ですとか、「クオリティをもっと改善する」とか...すごく細かいところで言うと、コンテンツの画像をもっと大きくして見やすくするとか、いろんなことをやってるんですよ。それらが具現化されて、(お客様にとって)簡単で、体験することだけでもエンジョイできる、ストレスなく探して見つけられる、見つけて遊べると感じてもらえる、というところにウェイトを置いています。
あとは、カスタマーサービスですね。我々はカスタマーサービスをインハウスでやっていますので、カスタマーの声を直に拾えますし、カスタマーのことを常に考えてサービスを作り上げるっていうのはすごく大事だと思いますね。
――Huluのカスタマーサービスに関して、例えば「こういう事象があったとき、こういう対応をしてくれた」「これだけ早く対応してくれた」といった、ネットの書き込みなども見かけます。視聴者の声を直接聴くことができる一方、中にはクレーマーみたいな方もいると思うのですが、カスタマーサービスをインハウスでやるメリットって何ですか?
インターネットの時代ですし、声を聞くっていうのをリアルタイムでやっていかないといけないと思っています。リアルタイムで、しかも肌感覚でね。デジタルの世界では、お客さまが見えないわけですから、その部分がすごく大事だと思いますね。これはHuluだけがやっているわけじゃないですけど、インハウスでカスタマーサービスをやっている会社があるのは、おそらくそういう理由だと思います。我々もエンターテインメントを扱っていますけど、「カスタマー」の想いを特に意識してサービスを提供していこうと思っています。
――お客様の声の中には、「今後こういうのを増やしてほしい」といった要望もあると思うのですが、今後、コンテンツとしてはどの分野に力を入れていこうと思っていますか?
今まだ上がっていないもので、話しているというところはいっぱいあります。その進行状況は、話せないんですけども。戦略としては、スタート時は海外ドラマのみでスタートしていたので、その時も「日本のコンテンツを増やしたいな」という風には思っていました。なので、この1年半強くらいで、日本のコンテンツを増やしています。これからもさらに増やす予定でもありますし、やはりそこはすごく重要かなと...。やっぱり日本のコンテンツもクオリティが高いし、実際に日本のTV局のドラマとか、アニメとかは非常に人気が高いんですね。なので、今後も増やしていきたいとは思っています。
あとは、クオリティという意味では、もちろん人気があるっていうことは前提なんですけども、「みんなに人気がある」っていうものだけを入れることでもないと思っています。ちょっとニッチだけど、凄い人気があるコンテンツを探してきて、集めるということも意識してますね。我々はいろんな視聴者のデータとかを日々分析しているんですけども、「どういうパターンで視聴しているか」も見えます。もともとは「これが見たい」って思って来た人たちが、「でも、これもちょっと試してみよう」とかね。定額制なので、気軽にいろいろ試せて、例えばレンタルショップやビデオショップとかに行って「お金がかかるから、どうしようかな」っていうストレスがなく、いろいろ試せるので、思ってもいないようなジャンルだったり、思ってもいない系の番組にはまってしまったという傾向もあるみたいです。いいものだけを、でも幅広くという形で。コンテンツのアクイジション(獲得)は大変ですけど、重要な部分だと思いますね。
『Misfits/ミスフィッツ-俺たちエスパー!』という、我々が最近配信を始めたドラマもそうなんですけど、イギリスでは大ヒットしていたんですが、日本では過去、全く放送されていなかったんです。DVDパッケージ化もされてないし。だからこれは「ちょっと面白いな」「行けるな」と思って、実際にHuluで配信を始めたら、配信した時からずっと人気なんです。誰も知らなかったのに、物凄い人気が出ているっていう。やっぱり「いろいろ冒険したり、コンテンツを探している人たちが多いな」と思っています。そういう意味では、将来のトレンドづくりというか、そういうところにも役立てるんじゃないかなと思います。
――『Misfits/ミスフィッツ-俺たちエスパー!』に限らず、作品の買い付けについては日本独自で行うものなんですか?それとも全世界一緒に買い付けているんですか?
基本的に日本だけですね。やはりアメリカと日本っていう市場は全く違うし、アメリカでウケる作品が日本でウケるとは言えないですし、逆もそうなんですけども。実際、アメリカのHuluでもイギリスのコンテンツを多く提供したりしているんですね。それだからっていうわけではないんですけども、「イギリスのものはクオリティが高いなあ」と思います。『 Misfits/ミスフィッツ-俺たちエスパー!』だったり『SHERLOCK/シャーロック』だったり。やはり、日本のHuluでも人気が高いですね。
――今後も、日本初になるような海外ドラマをどんどん出していきたいですか?
そうですね。日本初とかにはあまりこだわってなくて、そこは、逆に他のディストリビューション、例えば放送局やケーブルなどといったところと一緒に作品を盛り上げるっていうケースもあり得るんじゃないかなと思っていますね。
例えば『ウォーキング・デッド』もそうなんですけど、DVDもあるし、FOXで放送もしているし、我々も提供している。一緒に盛り上げてきたような感じがあったと思うので、そういうのも重要かなと。我々だけが、プロモーションするだけじゃなくて、「いろんなとこで一緒にやってきましょう」っていう可能性もあります。
――『ウォーキング・デッド』のときは、海外ドラマNAVIでもニュースをいろいろ上げましたがどれも非常に反応がよかったです。海外ドラマに特化しているサイトとしては、そういう取り組みを、今後とも勧めていただければとてもうれしいですね。
――Huluのスタート時点では、海外ドラマが重要視されていたということですが、現在の海外ドラマの位置付けはどのように考えていますか?
海外ドラマっていうのは、我々のサービスでは1番人気ですし、やはりクオリティが高いので、コアな部分だと思っていますね。ロングランシーズンのものも多く揃っています。代表的なものでは『24』や『デスパレートな妻たち』、『プリズン・ブレイク』、『LOST』などですね。そういう作品を、途中までしか見てない人・実は全然見たことない人・最初から全部見たい人もいて、そういうニーズも非常に高いんです。ランキングも上位に入りますね。
――海外ドラマファンとしては、Huluにもう少し最新作品があるともっといいなと思っているのですが...。
まさにそうで、対策や戦略ももちろん考えています。最新のドラマとか、先ほど言ったローカルコンテンツですとかも、もっと手掛けていきたいですね。
――海外ドラマNAVIでは吹替版を強く推しているのですが、Huluでも吹替版を増やすことは考えていますか?
一応あるんですけどね(笑)。結構ユーザーの皆さんからの声があって、今、徐々にそれを増やしていっています。今後、それが具体的に見えてくると思います。
――(Huluのコンテンツを)テレビで見る人たちがいるという話も聞くので、吹替版の方がライフスタイルの中に入るだろうと思いますので、ぜひ増やしていってください!
――例えば、予算が決まっている中で、まだ日本に入ってきていない新作を入れたいという候補が3、4作ある場合、最終的にどの作品を買うか、その決め手はなんですか?例えば社員の多数決で決まるとか、実はバディさんの鶴の一声だったりということは(笑)?
基本的にコンテンツ・アクイジションチームがあって、そこでいろいろ話すんですよ。全体の戦略とかも含めて。僕も結構入ってやっていますけども、その辺は基本的にはメンバーにまかせています。「なぜこの作品が必要なのか」っていう議論はいろいろしますけど。ヴィジョンを持って仕事をしているメンバーがいるので、彼らもプロなのでそこは任せています。今後、もっともっと期待していただける展開になると思いますね。
――ちなみに、バディさん自身が好きなドラマは?
『GALACTICA/ギャラクティカ』とか、SF系が好きです。あとはアメリカン・コメディ。今でいう、例えば『30 ROCK/サーティー・ロック』ですとか、そういうのが好きですね。まぁだいたい30分くらいじゃないですか。だから気軽にぱっと1話を見て楽しいまま寝る...そういう環境で楽しみたいんで。コメディやSFのほかは、ちょっと変わった感じのドラマが好きですね。例えば『LOST』『ウォーキング・デッド』など。
――では、もしご自身が好きだと思う作品が候補に出てきたら...
もちろん!推します!推しますし、チームメンバーと闘いますね(笑)!
――なんとかしてこれを通そうという会議になるわけですね(笑)。みなさんもそれぞれも好きな作品があるんですよね。
ありますね。もちろん、客観的に判断して配信しているんですけどね。ただ、例えば「アウトサイダー」っていう格闘技のドラマがあるんですけど、あれもある1人のメンバーが「絶対ウケる!」って主張して...。そこでみんなで検討し、結局は大人気作品になったのです。いつもそうとは限らないんですが、やはりそういう声が大事なので...。そういう風に強く推している人たちの声をリスペクトしています。時には僕の(声)もありますけど(笑)。
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『Misfits/ミスフィッツ-俺たちエスパー!』(C) 2009 Clerkenwell Films