『ボルジア家 -愛と欲望の教皇一族-』が8月23日からDVDリリースされることとなりました。この作品の魅力をもっと知ってもらいたい! できることなら作品や世界観をよく知っている方から紹介してもらいたい...と思った海外ドラマNAVI編集部。そこで目に留まったのが俳優・兼崎健太郎さん。実は兼崎さんは舞台『カンタレラ~裏切りの毒薬~』でチェーザレ・ボルジアを演じた方なのです。登場人物を演じたからこそわかる本作の魅力をたっぷり語っていただきました!***
―『ボルジア家 -愛と欲望の教皇一族-』を事前にご覧いただきましたが、いかがでしたか?
舞台では描きにくい部分が、映像ではストレートに描かれていたので...殺しだったり、血だったり...結構エグかったですね。内容も生々しいですね! 僕は舞台『カンタレラ』を初演と再演と出演してきたんですが、自分が実際演じたのを通して本作を観ると、本来はこんなに生々しくて、いろんな私利私欲が働いてる中で人々が生きてるんだろうなって感じました。
僕自身も演じるための役作りの段階で、権力を手に入れることや、自分の私利私欲に対して固執する感情など、すごく考えていました。ドラマでは、こういった感情がわかりやすく描かれてあったから、僕自身も「こういうことを本当は演じたかったのかな」と改めて思っています。
―ご自身が舞台で演じられる前に見たかったんじゃないですか?
見たかったですよ!『カンタレラ』って舞台は、先にできていた曲の世界を舞台化したという作品だったので、演じる際のイメージが浮かびづらかったこともあったんです。手探りだったし。でも、このドラマはまさにそのままじゃないですか! 僕が演じていた作品の時代背景、そしてボルジア家というものがわかりやすく描かれてあって、もっと早くみたかったなって、正直思います。きっと見ていたらかなり勉強になったと思いますよ。
―実際舞台をなさった時は、自分の中でチェーザレという人物を知るために何か調べたりしたんですか?
もちろん、ロドリーゴとかチェーザレとかは、ネットで調べたりはしたんですけど、なんていうんだろう...正直文字でみてもあんまりわからないんですよ。こういう時代で人々がどういう生活をしていたのかっていうのも全然想像できないし。権力がモノを言う時代で、自分が力を得るためにどう行動すればいいのか...。特に僕の場合は、チェーザレがボルジア家をどう思っているのか、という点を結構掘り下げていったんです。弟ホアンに対して、妹ルクレツィアに対して、もちろん父ロドリーゴに対してどういう思いでいるのかっていう点を。その部分をすごく濃く深く考えて役作りした記憶がありますね。初演からだともう3年ぐらい前ですが。再演のときでももう1年半ぐらい前なんで。まだ僕がピチピチだった頃です(笑)
―ピチピチって(笑)。 実際ドラマを見て、興味がわくような気になる人物はいましたか?
ミケロットに興味が! ドラマの序盤は、ミケロットの動きが目立っていたから特にそう感じたんですが、チェーザレに対して忠実さを求めていた部分ですとか。ミケロットはただチェーザレに「報酬を倍にしてやるから俺についてこい」って言われただけで彼についていくんですよ。そもそもはチェーザレを殺しにきたはずなのに、コロッと本来の雇い主を裏切るって点が特に気になって。ミケロット自身にもきっと野望みたいな感情があると思うんです。そこも踏まえてどういう思いでチェーザレについていこうと決めたのか、がすごく気になりましたね。チェーザレに向かって「あなたはすごく冷静で、王になる」みたいなことをどこかのシーンで言っていたように思うんですが、それも印象的ですね。
―ドラマの主人公・主役となるボルジア家のロドリーゴについては、どんな印象を持っていますか?
この『ボルジア家』ってドラマは、ボルジア一族が主役だからこそですが、本来はロドリーゴってすごく悪い奴ですよね。自分が教皇になるために財を与えて自分に投票させたりとか。そういう意味では敵対しているジュリアーノ・デッラ・ローヴェレの方が正義なのかもしれないですけど、このドラマの中では、ロドリーゴたちが正義に見えてきちゃいますよね。
とはいえ、ドラマの冒頭は、権力を得るために悪になろうとしているんだけど、悪になりきれてない人間らしいモロさが出ている気がしました。「人殺しは駄目だ」とか言ったり。でも権力を得るためだったら賄賂は全然「アリ」で。この人にとっては善悪はどこがボーダーなんだろうって。いちばん人間らしい人だなって思いましたね。人間の弱さとかもいちばん描かれてますし。
―ご自身が演じられたチェーザレはいかがでしたか?
僕が演じたのがドラマでは中盤以降くらいなんですよね。
舞台では、もうロドリーゴ自体が老いてきて、政治に対してあまり興味を持てない状態の頃からを描いてました。ロドリーゴが自分で役割を担うことができなくなったので、チェーザレに引き継いだんですが、チェーザレはそんな父を見て「こういう風にならなくてはいけない」「これが正しいんだ」と思ってやってたように思います。でも人を殺せば憎しみや恨みとかが自分に返ってきたりとか...罪を与えれば自分にも罪が返ってくるみたいな、そういうこともチェーザレは感じていたと思います。
チェーザレ自身は、「家族を守るために」って何度も言っているじゃないですか。「僕は一族を守っていく」って言っているし。そういう思いは僕が演じたチェーザレと同じものを感じます。ただそれが間違った方向に向かってしまって最終的に自分を滅ぼしてしまうという...。チェーザレは、身体的にも強いし、意志も強い。父ロドリーゴよりも「自分はこうなりたい」っていう意志の強さがすごく見えて、かっこいいな、素敵だなって思ったんです。でも、この先彼がどうなっていくのか、彼の意志がどんどんおかしくなっていく点や、自分の生き方にズレが出始めていく部分をすごく見たいです。なんとなくストーリーは自分でもわかってるんですけど、でもこうやって映像になると、そのストーリーがどう描かれていくのかすごく気になりますよね。舞台では描ききれない部分...そういうところを見ていきたいですね。
―兼崎さんご自身は、そもそも舞台やミュージカルをやりたくてこの世界に入ったんですか?
いや、僕はあんまり興味なかったんです、正直に言うと(笑)。21、2歳だった頃、ミュージカル『テニスの王子様』が若手俳優の登竜門みたいになっていて。僕も3回オーディションを受けたんですけど、それで絶対取りたいなって思ってて。で、最初の2回が駄目で、3回目でこれが駄目だったらこの道は辞めようかなって正直思ってたんですけど、とりあえず全力でオーディション受けたらなんとか受かって、今、この仕事を続けてるような感じです。
―そこを乗り越えて、その後『カンタレラ』に主演されましたが...。
『カンタレラ』初演のときはよかったんですけど、再演した時、役に入りすぎて毎晩自分の手首を切る夢だったりとか、自分のことを殺めてしまう夢を何度も見て、結構入り込んじゃっててキツかったんです。でも、あの時代に生きた人間はそういう気持ちもあったのかな。「明日の命もわからない」みたいな感覚に自分もとらわれてしまったのかもしれませんね。
―ちなみに普段、海外ドラマってご覧になりますか?
『プリズン・ブレイク』は観ました。DVDで一気に、その日は一日中見てましたね。でも最近はあまり見れていませんね。僕は、どちらかというとアクションがバンバン入っているド派手な洋画が好きなんです。見ていてスッキリするし、ストーリーもわかりやすいし、頭使わなくていいし、なにかしながらでも気楽に見れたりするんでそういうのが好きなんです。
でも、最近はなるべく洋画よりも邦画を借りるようにしてますね。最近見たのは三谷幸喜さんの『笑の大学』とか『ラヂオの時間』とか、あとは三谷さんじゃないですけど『任侠ヘルパー』とか。『笑の大学』おもしろかったな。
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―ボルジア家の最大のテーマが「人間の欲」にあると思うんですが、兼崎さんが今もっている「欲」ってなんですか?
欲ですか・・・なんだろうなぁ。大河ドラマとかやりたい欲はありますね。舞台でヨーロッパ版の大河ドラマをやったので、今度は日本の大河ドラマをやって...昔の戦国時代とかを演じてみたいと思っています。どちらの大河ドラマも似ている部分はあると思うんです。自分が上に立つためにいろんな手段を使って、卑劣と言われようともやりのける。そういう時代は演じていてすごく面白いですね。演じながら自分自身が病みそうですが、でもその瞬間に、自分はもしかしてちょっとずつその役の人物に近づいていけているのかな、っていう変な快感みたいなのがあったりするんです。そういうのを感じるのは案外好きかもしれませんね。
あとは、旅に出たいとか、海に行きたい、夏ですし。バーベキューもしたい。あとなんですかねー、僕、物欲とかも無いしなぁ(笑)。とにかく夏らしいことをしたいです。
―普段、お仕事の無い日はインドア派ですか?アウトドア派ですか?
どっちだろう...。でも僕あんまり関係ないですね。疲れていると家に引きこもって家の大掃除をするんです。トイレだったり風呂だったりを細かくするんです。あと、何もないときは、一人でぷらっと街に出てベンチでぼーっとするの好きですね。結構忙しい日々が続いたので、ホントにボーッとして人の波を見ながら、「みんな急いでるなぁ...」とか「ちょっと俺は休憩しよう」みたいな。なんか癒しを求めたいのかもしれないです。そういうの好きですね。
―ところで、先ほどからお話しを伺いつつ思っていたのですが、とっても素敵な声をされていますね。...吹き替えのお仕事に興味はないですか?
まだ経験はないですが、やってみたいですよ! 本当に! ぜひ僕に、やらせて下さい。(笑)
この間やった舞台で、田中真弓さん(『ONE PIECE』ルフィ役)がすごく褒めてくれて、「ちょっと~声の仕事もやりなよ!」みたいなことを言われたんです。「是非やらせて下さい」って言ったんですけど(笑)
―では、ぜひ田中さんについていって勉強ですね!
そうですね(笑)。本当に声優とかも面白いだろうなと思うし。声のお芝居ですもんね!そういう意味でも僕はすごく芝居がしたいので、すごく興味があります。勿論ステージにも興味があるし。『テニスの王子様』をやらせてもらって、生のお客さんとのやり取りを感じることもすごく楽しくなって好きになったし、もちろん映像でやるお芝居も違う形での芝居でしょうし。お芝居はやっぱり続けたいなと思いますね。やりたいなって。
この年になると、「演出」っていうのもやってみたいなって思う仕事ではあります。ただそれにはやっぱり勉強しなきゃいけない。なんか最初は、「役者をやって売れたい、お金を稼ぎたい、有名になりたい」とか「欲」があったんですけど、この仕事を続けてきた今は「良いものを作りたい」っていう意志に変わってきたように思います。18、19の時は単純な思いだけだったんですけど、いろんな作品に出会って、自分が関わることによって少しでも良いものになればいいな、という感情が出てきたというか。だから自分に任せてもらえれば絶対に後悔はさせません!っていう思いで常にやるようにはしていますね。
―『ボルジア家』を初めて観る方へ、兼崎さん的みどころを是非!
日本人は日本人で勿論自分の国の歴史はある程度知ってると思います。でも「世界ではこういうことがあったんだ」っていうことを僕も舞台やドラマで知ったんです。こういうものを見て世界を知るのも面白いなと思いますよ。「ボルジア家」という一族が、史上最悪の一族みたいに言われていますが、世界でも類を見ないこの一族の結末は絶対に面白いと思うんです。
―最後になりますが、もしこの『ボルジア家』のドラマに出演されるとしたら、誰の役をやりたいですか?
僕はやっぱり、チェーザレをやりたいですね!
―そこはブレませんね。(笑)
チェーザレって、父教皇にはさまれ、ルクレツィアや弟たち、さらにいろんな敵に囲まれていて、いろんなものを愛そうとしたばっかりにそれらに振り回されていく感じが好きです。だからこそ、難しいと思うんですよ、演じるのが。でもやっぱりそこが面白そうだなと思います。
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[兼崎健太郎プロフィール]
1984 年生まれ、山口県出身。06 年ミュージカル「テニスの王子様」真田弦一郎役で俳優デビュー。以来舞台・映像に多数出演。主な出演舞台に、「テンペスト」(11/堤幸彦演出)、「桃天紅」(11/山内圭哉演出)、「カンタレラ」(12/主演、上島雪夫演出)、「HUG!ステレオサウンズ」(12/南原清隆作近藤芳正演出)、「真田十勇士」(12/伊勢直弘演出)など。映像作品は、映画「新宿歌舞伎町保育園」「刺青-背負う女」「ローカルボーイズ」(10/堀江慶監督)、2013 年公開主演映画「浅草探偵物語~龍と亀~探偵物語」、TV「戦国鍋TV」レギュラー(tvk 他)など。
インゴットエンタテイメント所属
健太郎BLOG>>http://ameblo.jp/kanesaki-kentaro/
INGOT HP>>http://www.ingot-e.com/