【インタビュー】『ゲーム・オブ・スローンズ』第三章 ロブ・スターク役リチャード・マッデン

第三章では、壮絶な運命がロブ・スタークに降りかかる。まさかの結末に驚いたファンも多いだろう。今回はロブ・スタークを演じるリチャード・マッデンのインタビュー記事を紹介しよう。

 

リチャード・マッデンのインタビュー

――第三章の見どころは?

第三章の冒頭から僕が扮するロブに、行動を共にする家族が増えていくという設定が気に入ってる。彼のそばには母の生家であり、何年も疎遠にしていたタリー家の人たちがいるんだ。そんな家族の状況のなかに置かれたロブの境遇をとても不思議に感じるよ。それだけでなく、以前、タリー家の人たちに会った時には、ロブは単に甥であり、いとこであったのに、今や"北の王"になっている。そして叔父たちは、彼に、かしずかなくてはならない。奇妙な力関係のなかに巻き込まれていくんだ。

――ロブの母親を演じるミシェル・フェアリーとの共演シーンが多いようですが、このドラマの出演を通して彼女と親しくしていると以前、話していましたよね?

そのとおり、親しくしているよ。ミシェルも親しくしている共演者のなかの一人だ。僕にとってロブ役はすごく特別なんだ。そしてロブを演じるどの瞬間もとてもいとおしく思う。特にミシェルとの共演シーンは格別なんだ。ミシェルと僕はかなり親しい間柄なんだよ。数年間にわたって毎年1年のうち半分を一人の俳優と一緒に仕事をするなんてめったにないことだからね。普通ではあり得ない。第一章では、関わりのなかで信頼関係が築けるように心がけて撮影に臨んだんだ。そして実際、そんな関係を築くことができた。セットに立ち、ミシェルとのシーンに臨むとキャラクターが変化し、進化していく様子がうまく演じられるんだ。それは本当に特別なことだと思う。こんなすばらしい関係が築けたことは僕にとって特別な意味を持っている。信頼関係があるからこそスクリーンでの演技がより深みを持ち、繊細で、さらにドラマチックにもなる。そして心を打つ芝居ができたらいいと願っているんだ。

――それぞれの王族を演じる俳優たちの間でライバル心はありますか? たとえば「僕たちはスターク家、向こうはラニスター家」といったような...。

取るに足らない程度だけどね。でも実のところ、他の俳優たちに会っていないんだ。だいたいは「ラニスター家は何をやってるのかな?」と思ってる(笑)。僕たちの撮影は雨に降られる確率が高いようで、いつもこんな調子で話しているんだ。「ラニスター家がどこにいようと、僕が輝く太陽になる」とね。また、衣装に着替えると誰かがこう言ってくる。「ほら見て。先週、クロアチアでヨットに乗った写真だよ」クロアチアやアイスランドやモロッコでロケがある出演者はラッキーだからね。一方で「この5年間、ずっとアイルランドにいて、同じパブに通ってる。クロアチアでラニスター家のやつらと楽しくやってきた写真なんて見たくもない」と言ってる人もいる(笑)。だから笑ってすませられる程度のちょっとしたライバル心はあるけれど、本当のところ、敵役の俳優たちに会っていないんだ。レナ・ヘディ(サーセイ・ラニスター役)はアメリカに住んでいるし、ニコライ・コスター=ワルドー(ジェイミー・ラニスター役)も仕事していないときは、イギリスにいないんだ。

――撮影の進捗に合わせて原作を読んでいると聞きましたが...。

そうだよ。撮影より先に全部、読んでしまったら、物語の旅に対する僕の興味が薄れてしまう。そうなるとドラマもつまらなくなる。だから、その章の撮影が終わったら読むんだ。物語の旅が困難を極めるほど演技に身が入ると思う。そして、みんなにもドラマをもっとおもしろく見てほしいと願っている。

――原作を読んで、その内容に驚きましたか?

驚いたよ。いろんな所で、なんて卑劣なやつらなんだってね(笑)。予想外の展開だった。でも、じゃあ自分は何を期待してたのかと聞かれても答えられないんだけどね。原作を開いた瞬間、物語の語り手としてのジョージの力量を実感できるよ。一瞬にして彼が作り出した世界のにおいが立ち込めてくるんだ。ありありとね。言うまでもなく、僕はこの物語に強い関心があった。すでに僕がロブ役を演じるんだと分かっていたからね。だからこそ、色鮮やかにイメージを膨らませながら読み進めた。それにしても原作は本当にすばらしかったよ。

――原作者ジョージ・R・R・マーティンに会ったことはありますか?

あるよ。何度か会うことができて本当にラッキーだった。前には短い時間だったけれどコミコンのときにロサンゼルスで一緒に過ごしたよ。

――あなたは若手でありながら、子供のころから俳優としてキャリアをスタートさせ、長い経験があります。でも、一時期、俳優業から離れましたよね。それはなぜですか?

そう、一時期、俳優業をやめたんだ。11歳で『サイコ2001』に出演して、その後、数年間にわたる番組も含め、いくつかのテレビ番組に出演した。それは俳優としても子供としてもすばらしい経験だったよ。一方で、人生という観点からみると少し問題があった。僕は学校で浮いた存在だったと思う。テレビに出ている子役だったし、学校にはろくに行かず、仲のいい友達グループにもちょっと顔を出すだけで、すぐいなくなるというような付き合いだった。一日中、俳優たちとセットで過ごし、学校にも行かなくてはならないなんて、大変なことなんだ。僕は子役とはいえ、セリフを覚えたり、現場に出かけて朝から晩まで撮影をしたりといった、すべてにおいて大人の俳優と同様の責任を持っていた。それに一日中、自分を一人前の人間のように接してくる大人たちとおしゃべりしながら過ごすんだ。だって、子供だけど、やることはすべて大人と同じなんだから。そうかと思えば、今度は学校という場に身を置くと、たちまちただの子供になってしまう。幼い年齢でそんな状況を理解することは至難の業だよ。「なぜ、この大人は僕と一緒にランチを食べないの?」ってね。だから、学校はそういう点で少し困難な場所だった。それで僕は数年間、俳優業を休み、学校に戻ることにした。

――いつか俳優業に戻るという自覚は常にありましたか?

なかった。ただ自分の人生から俳優業を締め出したんだ。完全に休業していたんだけど、17歳の時「自分にとって適切な進路を選びなさい。選ぶ時期だよ」と学校で言われたんだ。それで思った。「俳優だ。僕にできるには演じることだけだ」ってね。それなのに、俳優が冒険的な職業だという理由で学校側から指導を受けた。"ちゃんとした"学位がもらえるところに願書を出すならという条件で、僕は演劇学校に入学許可の申請をすることだけ許された。そして実際、"ちゃんとした"学位がもらえるところにも願書を出した。そっちには行かないと思いながらね。

――"ちゃんとした"学位とは何ですか?

コンピュータサイエンスを専攻するようにしてた。今、考えると僕にできるわけない。ラップトップを使うのがやっとなのに。でも、一部の人にはこう言われたよ。「演劇学校に入れるわけないんだから、地に足の着いた仕事を考えなさい」とね。でも実際、僕は演劇学校に入れたし、俳優としてのキャリアもすべて順調にいった。

マッデンは2007年、ロイヤル・スコティッシュ・アカデミー・オブ・ミュージック・アンド・ドラマで学び、卒業後は舞台、テレビ、映画で着実にキャリアを重ねている。セバスチャン・フォークスの小説をBBCがテレビドラマ化した大ヒット作「Birdsong(原題)」でエディ・レッドメイン扮するスティーブン・レイフォードの相手役であるマイケル・ウィアー隊長を演じた。また、チャンネル4で放送されたコメディードラマ「Sirens(原題)」ではアンサンブルキャストの一人として出演した。

(海外ドラマNAVI)

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