『ブレイキング・バッド』で大ブレイクのアーロン・ポール、"ジェシー・ピンクマン"を終えて...

本年度第66回エミー賞授賞式で、見事有終の美を飾った『ブレイキング・バッド』。ドラマシリーズ部門作品賞をはじめ、合計6部門で受賞し、世界中から称賛されている本作。助演男優賞獲得のジェシー・ピンクマン役アーロン・ポールがシリーズ終了後のインタビューで明かした『ブレイキング・バッド』の6年間。 さっそくインタビューをご覧いただこう。

ブレイキング・バッド

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――撮影の最終日にタトゥーを入れたというのは本当ですか。

本当だよ。"No Half Measures" (中途半端はなし)と入ってる。撮影の最終日にブラブラ歩いてたんだ。すごく悲しかったよ。みんなでおそろいのタトゥーを入れるべきだと思った。もちろん冗談で言っていたんだけど、そのうちに話が大きくなって、あっという間に現実になった。キャストやクルーとバーに行ったんだけど、クルーの一人がみんなにタトゥーを入れたんだ。 "No Half Measures" と入れた人もいるし、番組のロゴを入れた人もいるよ。「BR」と「BA」という小さなマークだ。

――このドラマのエンディングについてどう思いましたか?

悲しかった。ラストシーズンの最初の8話はあっという間だったよ。最後の8話は、台本をできるだけじっくりと味わうようにした。最終話は、ブライアンと一緒に大きな声で台本を読んだんだ。アルバカーキの彼の家でやったんだけど、『ブレイキング・バッド』のドキュメンタリーを撮っているクルーがそれを撮影した。僕らは、その時初めてこのドラマがどういう風に終わるのかを知ったんだ。そしてブライアンが、ただ「シリーズが終わる」とだけ書いてある最後の説明を読んだ。その部屋にいた全員が強く感動したよ。ブライアンと僕はお互いの顔を見た。二人とも何も言えず、目に涙があふれていた。あの物語が終わってしまうなんて信じられなかった。でも、いい終わり方だったよ。

――『ブレイキング・バッド』の禁断症状をどうすればいいか、ファンにアドバイスはありますか?

正直に言って、人の助けになるようなアドバイスはできないよ。自分もまだ抜けきっていないのだからね。しばらくは苦しむことになるだろうね。繰り返し見ればいいんだよ!まだ見ていない人と一緒に見てほしい。

――『ブレイキング・バッド』がスタートした時は、どんなことを期待していましたか?

第1話を撮影した時には、何か特別なものになるだろうな、と思っていたんだ。第1話を見るまでは、音楽の選択、演出の仕方、照明などの、このドラマのトーンをちゃんと理解していなかったんだ。あまりにも驚いて、心の中で、「やった!すごくラッキーだ!」と思ったのを覚えているよ。今でもラッキーだと思っている。

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――ジェシー・ピンクマンは、当初シーズン1で死ぬことになっていたのですよね?

そうなんだ。ジェシーは死ぬはずだった。次のシーズンに視聴者を引っ張る、シーズン最後の山場にすらならない予定だった。ひどい爆発か銃撃戦に巻き込まれて死ぬ予定だったんだ。どちらだったか忘れたけど。でも第1話を撮った後、撮影が本格的に始まったら、全体的なストーリーの動きが変わっていった。ヴィンスがウォルターとジェシーの力関係を気に入って、そのストーリーを続けていくことになったんだ。

――ジェシーを演じるにあたって、どんなリサーチをしましたか?

ドラッグが出てくるシーンのリサーチはYouTubeを頼ったよ。すごいんだ。初めてジェシーがヘロインを使う時も、YouTubeで検索したよ。映画やドキュメンタリー番組など、ドラッグを使う人の映像がたくさん出てきた。ヘロインを使った時の反応も見ることができるんだ。薬物依存症のリハビリ施設に行って、ドラッグを常用していた人やドラッグを絶とうしている人と話をした。街でもメスを使っていた人に話を聞いて、できるだけリアルな演技ができるようにしたよ。自分が本当にそのシーンのような生き方をしていると自分に信じ込ませるのが、僕の役作りなんだ。そのくらいだよ。単純なことだ。

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――今はテレビでは何を見ていますか?

今は妻と一緒に、『素晴らしき日々』を最初から見ている。あのドラマが放送された当時、僕は主人公と同じ年齢だったんだ。今見るともっといいよ!まったく違う見方ができる。あと、『ゲーム・オブ・スローンズ』も見ているよ。

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――『ブレイキング・バッド』が始まった当初と比べて、俳優として成長したと思いますか?

もちろんだよ。最高の上級演技コースだった。ブライアン・クランストンと毎日一緒に仕事ができたのは幸運だったよ。最初はひどい俳優だったと言っているわけではないけど、このドラマから学んだことは多い。脚本からすべてが始まるんだけど、その脚本が最高だったんだ。普通の脚本からいいものを作ることはできない。普通の作品になる。脚本がよくなければ終わりなんだよ。

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――ジェシーとウォルターの関係は父と息子のような関係だったと思いますか?

すごくうまくいっていない父と息子の関係だ。最初ジェシーは、自分にクリスタル・メスを作らせようとする変な高校の化学教師と関わりたくないと思っているんだけど、脅されてやるんだ。でもすぐに、芸術的とも言えるウォルター・ホワイトのクリスタル・メスを作る能力に感動して考えを変え、彼に教えを請うことになる。

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――現場でイタズラをする人はいましたか?

ブライアン・クランストンだね。彼が僕に誰かを殺せと言うシーンがあるんだ。その撮影の最中、ブライアンはウォルター・ホワイトのセリフを言ってから、すごく長いペニスの形をした水鉄砲を引っ張り出すと、僕に向かって発射し始めたんだ。そういうことをする人なんだよ。そういう人なんだ。ブライアンは、僕がこれまでの人生で出会った、一番プロフェッショナルで幼稚な人だ。楽しいけど、コストがかかる。今でもフィルムで撮影している珍しいドラマの一つだからね。砂漠のシーンで、ブライアンと僕の笑いが止まらなくなったこともある。フィルムを3ロールもムダにしたんだ。大量のフィルムと時間を使ったよ。

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――現場の小道具で持ち帰ったものはありますか?

RVのドアが欲しいと言ったんだけど、あのRVは、しばらくの間、ワシントンD.C.のスミソニアン博物館に行くらしいよ。もしかしたら、ドアを渡したくないからそんなことを言っているだけかもしれないけどね。製作のヴィンス・ギリガンが、シーズン2のピンクのテディベアをくれるとずっと言っているんだ。ジェシーの最初の車のナンバープレートも持っているし、ゲールの車のフロントドアも持っている。そこから僕は彼を撃ったんだ。銃撃戦の時にマイクが隠れるトラックの後ろの部分も持っているよ。どれも巨大で弾痕だらけなんだけど、何だかすごく美しいんだ。

――あのドラマの何が一番恋しいですか?

ジェシーだよ。あの役に別れを告げるのはつらかった。はっきり言って、彼ほどの複雑なキャラクターを演じるチャンスは二度とないと思う。ここからはすべてが下り坂だ。でもそれも悪いことじゃない。『ブレイキング・バッド』とジェシー・ピンクマンの位置づけが自分の中でそれだけ高いということだ。あのドラマに参加できたことがどれほど幸運なことか分かっているから、下り坂でもいいんだ。
キャストとクルーが恋しい。ファミリーだからね。誰もが、自分たちは幸運だと思っていた。恵まれていた。毎日、全員がそんな気持ちでいたんだ。あの現場は、僕たちにとっては仕事ではなく、楽しみだった。すごく珍しいことだと思う。

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――あなたの人生はどう変わりましたか?

ヴィンス・ギリガンが僕に今のキャリアを与えてくれた。『ブレイキング・バッド』がなかったら仕事がなかったとは言わない。あったと思う。でも、このレベルの仕事ではなかったはずだよ。

――お気に入りのシーンやエピソードはありますか?

ブライアンと僕の笑いが止まらなかった、あの砂漠のシーンかもしれないね。すごく長い時間笑っていたよ。エピソードでは、「荒野の四日間」が好きだ。最高だったね。ブライアンと僕は、何もない砂漠で問題を解決しようと試みるんだ。一番好きじゃないのは最終回だね。

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――最も難しかったシーンは?

ジェシーが目覚めるとガールフレンドが死んでいるというシーンだ。実際に起きていることだと思おうとしたので最悪だったよ。短いシーンだったのに、撮影に時間がかかった。

――最後の「カット」という声を聞いたときは何を考えましたか?

いろんな感情があふれ出した。前のエピソードから続いているブライアンと僕だけのシーンだったんだ。すごく感動した。僕らはセットの中に隠れていたんだけど、みんなの拍手が聞こえてきた。出ていくと、100人ものクルーが待っていてくれて、みんな泣いていたんだ。つらかったよ。

――町中では、どんな風に声をかけられますか?

「ビッチ!」とか、「ヤー、ビッチ!」とか、「ヤー、サイエンス!」とか、「ゲータレードしろよ、ビッチ!」とか。

――「ゲータレードしろよ、ビッチ」? ドラマの中で、そんなセリフはありましたか?

違うんだ、あれはロンドンでの出来事だった。すごく暑い日で、買ったばかりのゲータレードを持って道を歩いていた。そうしたら、突然、誰かが「ゲータレードしろよ、ビッチ!」と叫んだんだ。何も考えずに、僕はただ後ろを振り向いてその男に向かって真っ直ぐにボトルを投げた。びっくりさせたと思うよ。

――仕事を一緒にしてみたい監督はいますか?

ブライアン・クランストンとは、ぜひまた一緒に仕事がしたい。彼はすばらしい監督だし、一緒に仕事をするのが楽しいからね。ブライアンが最初に監督した『ブレイキング・バッド』のエピソードでは、彼は1920年代の映画監督の格好をして現場に現れたんだよ。乗馬ズボンをはいて、小さなムチを持って、片眼鏡と長いタバコでね。ライアン・ジョンソンが監督したエピソードもいくつかあった。彼はすごく優秀な脚本家兼監督なんだ。『ドライブ』のニコラス・レフン監督も最高だね。でも、僕を使ってくれる人なら誰とでも仕事がしたいと思っているよ。


Photo:『ブレイキング・バッド』
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