『LOST』『Xファイル』のスタッフが製作を務め、米Syfyチャンネルで放送された大ヒットドラマの『HELIX -黒い遺伝子-』。現在dビデオで絶賛配信中の本作だが、『LOST』『リベンジ』など数々の海外ドラマに出演し、本作では、感染の秘密を知る研究施設のハタケ所長役としてレギュラー出演した真田広之のインタビューが届いたので紹介しよう!
――本作に出演を決めた要因は何だったのでしょうか?
今の時代にマッチしながら、どこか懐かしい空気を感じた作品の持っていたアイデアの面白さです。それから、自分が演じた「ハタケ博士」という複雑でやりがいのあるキャラクターですね。ただ、こちらのドラマ(アメリカのドラマ)ではゲスト出演の経験はありましたが、シーズン1からレギュラー出演したのは初めてでした。そのテンポの速さや、言葉が英語であるということも含めて、準備期間が映画と比べると少ないので、「やれるかなぁ」「そろそろ挑戦してみないといけないのかな」と思い、揺れていました。
そんなとき、僕の過去の作品を見て、非常に気に入ってくれていた脚本家の方から、「この役は君のために書いた」「君に当てて書いたものだから、出来れば第一候補である私にやってもらえると嬉しい」というラブレターというか、ありがたいお手紙を頂いたんですね。異国の地で、脚本家が、自分のために役を書いてくれた。その熱意に打たれたというのも出演を決めた大きな要因の1つだった。それで「これも修行だと」思って、飛び込んだら苦行でした。(笑)
ただ、ハードな壁を乗り越えるにふさわしい内容だと僕は確信できました。
――日本のドラマとの大きな違いは何でしょうか?演技へのアプローチの違いについてお教えて下さい。
基本的に自分のポジションとしては、役を演じてカメラの前で表現するということに、あまり大きな違いは感じていないのですが、アメリカのドラマは世界中でオンエアされて、海外各国に出回るっているので、非常に市場が大きい。その大きな市場を相手にしている所はやはり、日本のドメスティックなドラマとの第一の違いであると思います。そして市場が世界に広がるという事は、どんなにマニアックなテーマのドラマでも、国籍、習慣、宗教感を超えて、老いも若かきのも、物語を理解し、楽しめるという、普遍性が求められる。ですから、コアな題材といって、一部の年齢層とか、一部のファンとかだけに通用する表現は、通用しない。本当に大筋に沿って、王道の作り方をする。そしてアイデアとキャラクター勝負で世界に持って行くぞという気持ちを、クリエイター、現場のスタッフ、キャスト、みんなが自覚しながらやっている。その志の高さを強く感じます。その中で自分が貢献できるかというのは、非常にプレッシャーでもありました。ただ、言葉が違うということ以外は、アプローチとか、現場に臨むスタンスは変わらないので、あえて、自分を失わずにどこまで行けるかという、こちら(アメリカ)に来てからのテーマを忘れずに、こちらのシステムを学びながら、上手く接点を見つけていくことを意識しています。
――ファーストシーズンの見所を教えてください。また、印象的だったシーンは何ですか?
第1話のオンエアを見て思ったんですけど、自分が出ていながらもいきなり僕は引き込まれました。謎の二人が、死体に囲まれながら歩いているミステリアスなシーンに、非常に懐かしいポップスのような音楽が流れる。完全に、画とミスマッチなんです。それがまた妙に恐怖を掻き立て、ディープな世界で重くなりがちな時に、そういった音楽で乾かしてくれる。非常にうまいバランスを醸し出しているなと思います。音楽と映像のミスマッチ。もしくはマッチ。笑 そんなものも全編を通して楽しんでいただける、見所だと思いますね。
印象的なシーンとしては、毎回オープニングとエンディングはショッキングですが、共演者との関係性が、どんどんどんどん明らかになって、深くなっていくシーンです。全13話を通して、その人間ドラマのダイナミクスが、映画ではできない連続ドラマならではの奥行、いろんなフレアーが表現できる要素だと思う。だんだん謎が解けていくに従って濃厚な人間模様が見えてくる所は見所だと思います。このドラマは全編モントリオールで撮影したんですけど、北極が舞台のドラマなので雪原での芝居が多いので、作り物の雪・風をマシンを使って表現するんですが、後半は実際に寒くなってきて、夜間のロケで本当の雪が降ってきて吹雪いてきたんです。これはちょうどいいから撮ってしまおうということで、実際の吹雪の中で、朝まで撮影したのは、シーンとしても印象深いし、いい思い出としても残っていますね。
――『HELIX -黒い遺伝子-』とは、どういったドラマでしょうか?また、同ジャンルのドラマシリーズと比較した時、この作品はどのように異なるのでしょうか。
このドラマは、北極にあるウイルスの研究施設を舞台に、人類を滅亡させるほどの危険なウイルスに感染したという情報が入り、CDCのメンバーが調査にやってくる。そこから物語が始まります。そのメンバーが癖のある、いわくつきの人間関係を持ったメンバーなんです。この作品は、北極圏の基地という下界との交信を遮断された世界で、行われる密室サスペンス劇です。
ほかの同じジャンルのドラマと比較した時に、SF的な要素、恐怖、サスペンスを中心に、プラス人間ドラマというのがしっかり描かれていることがこの作品の特徴であり、武器なのかなという気がします。男女、親子、兄弟、義理の親子、いろんな関係性がその中にうごめいていて、どこかで地球の存亡に関わる危機のようなスケールの大きなものを設定しながら、描いているのは、実は小さなファミリードラマ、人間ドラマ、感情の機微です。SFと人間ドラマの融合を狙い、そこにちゃんと到達できていることが、ほかのドラマと大きく違う所ではないかと思います。
――真田さんが演じる「ドクターハタケ」というキャラクターの役柄はどんなものですか?
ドクターハタケは、ミステリアスな科学者でありながら、どこか人間味も兼ね備えた、人物です。前半は何を企んでいるのかという訳のわからない謎な男ですが、後半では人間味のある男の部分が出てきます。科学者としての冷静さと、人間的な情熱を持ち、特殊な過去を持った人間ならではの複雑な想いが内在している男です。
そして、組織に属しているので、指令をうけて研究を続けていますが、そこに反旗を翻してでも、人類に役立つ事を企てています。独自の使命感、夢をもっている人間だと思います。
――「ドクターハタケ」を演じながら、ご自身が感じてらっしゃることを教えてください。これまでの演じられた役と比較していかがですか?
本当はほかの人と分かち合って、言いたいけど言えないそのもどかしさと戦いながら、いろんな秘密を抱えて、自分ひとりで目標を達成しようとしている、そういう部分は自分の中でのもどかしさにもなりました。早く物語が展開して、みんなに分かってもらいたいという想いは「ドクターハタケ」と共有できたんじゃないかなと思います。自分が彼のような能力を持っていたら、どのように使っていただろうというのは常に考えていましたし、同時に彼の過去を考えると、非常に孤独だと思います。でもその孤独さ故に、大事なものを助けたいという思いも強くなる。非常に複雑かつ、ユニークな役が、今までやってきた役と違うとところだと思います。
内面では本当にいろんなことを感じ、外見ではポーカーフェイスを装っていなければいけない役なので、まるで、ジェットコースターに無表情で乗ってくれと言われたようなものでしたので、難しくもあり、やりがいも感じました。
――今後、チャンレンジしてみたい役柄やドラマのジャンルなどはありますか?
過去にやったことのないものには全てチャレンジしてみたいと思っています。以前やったことのあるジャンルのものでも、役柄が違ったり、スタッフや共演者などやってみたいと感じる自分の直感を信じてチャレンジしていきたいです。毎回、高いハードルを設定して、チャレンジして、次のステップを目指していく、一つ一つの経験を次に活かしていきたいです。
Photo:『HELIX -黒い遺伝子-』
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