『GOTHAM/ゴッサム』ジム・ゴードン役小野大輔インタビュー!「これから先も出来る限り彼の声はやりたい」

『バットマン』シリーズの前日譚を描き、現在全米で大ヒット中の『GOTHAM/ゴッサム』がいよいよ日本に上陸! 『The OC』や『サウスランド』のベン・マッケンジー演じる若き日のジム・ゴードンが、悪がはびこるゴッサムシティで日夜悪と対決し、奮闘していく様を描き出していく本作。吹替え版ではこのジム・ゴードン役を小野大輔が担当。『The OC』でもベンの声を担当した彼から見た、ベンの成長ぶり、そしてドラマの魅力を大いに語ってくれた。

 

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――『The OC』でもベン・マッケンジーの声を担当していましたが、『GOTHAM/ゴッサム』で久しぶりに彼の声を担当した印象は?

以前吹替えを担当した俳優さんの声をもう一度担当できるということで、もう純粋に嬉しかったです。最近はなかなか一人の俳優さんに一人の決まった声優が声をあてる機会が減ってきていると思うので。もちろん、それぞれの作品の中でのイメージに合った人が声をあてるのも、それはそれで正解だと思うんですが、やっぱり「ジャッキー・チェンは石丸さんだよね」みたいなものに憧れてきたので、こうしてまたベンと一緒に生きる事ができるのは役者冥利に尽きます。さらに言うと『GOTHAM/ゴッサム』って『The OC』の時と同じ音響監督さんなんです。今回のオファーがあった時に「ベンと言えば僕の中では小野さんなんだよね」って言って頂いて、それもまた嬉しくて。だからこれから先も出来る限り彼の声はやりたいと願っています。

――『GOTHAM/ゴッサム』もアメリカでヒットしてますし、まずは『The OC』越えが目標ですね。

そういえば今思い出しましたけど、『The OC』の時って、彼だけちょっと老けてたんですよね(笑)。青春ドラマでミーシャ・バートンとかまだ10代でみんな若いのに、ベンはなんか年季入ってる感じで。当時26歳くらいで僕と同い年だったんです。そういうところもすごく運命的なものを感じていて、そしてこうしてまた『GOTHAM/ゴッサム』で再会して、これはもう偶然じゃないんじゃないかって気がするんです。だから『GOTHAM/ゴッサム』も長く続いて欲しいですね。

 

――同じベンの声を担当するにしても、『GOTHAM/ゴッサム』ではまた違った雰囲気になると思うのですが、その辺りはどう意識しているのでしょう?

そうですね。彼自身役者としてのキャリアを積んできて、『The OC』の時より芝居に重みがありますよね。これまでの経験値に加えて、『バットマン』史に残るビッグタイトルに関わるようになった彼が、いろんな事を考えながら演じているのが、見ていて分かるんです。そういう意味では同じ俳優でも、『The OC』の頃の彼とは全く、もう佇まいからして全然違います。彼を見ていると僕の演じ方も自ずと決まってくると言うか、彼に寄り添って演じれば自然と『GOTHAM/ゴッサム』のジム・ゴードンになるという感じです。ただ、細かいクセは昔と変わらないんですよね。これは本当に些細な事かもしれないんですけど、息の仕方だったり。洋画の吹替えは向こうの俳優さんのブレス(息継ぎ)の位置に合わせるわけなんですけど、「ここでブレスするか」という感じとか、動いている時の息遣いなんかは変わってないんです。そういう意味では僕がまたこうして演じる意味もあるんじゃないかって思います。こうした些細な事が妙に嬉しかったりしますね(笑)

 

――『バットマン』シリーズの世界観に入っていくというのはどういう感じですか?

『バットマン』については僕も多くの方と同じく映画から入って、最近ではやっぱり『ダークナイト』シリーズが一番好きで、バットマン=『ダークナイト』だったりするんですが、実は僕にとってジム・ゴードンを演じるというのも意味があって。ベンの声を演じる事も運命的なんですが、『ダークナイト』でゴードンを演じたゲイリー・オールドマンの声を担当しているのが納谷六朗さんで、僕にとっては師匠にあたる人なんです。同じ事務所で養成所時代から演技を習っていた大先輩であり恩師であり、すごく尊敬する役者さんでした。そんな納谷さんが演じたゴードンの若き頃を僕が演じるというのも運命的で、納谷さんの意思を引き継ぐという意味で、、すごく名誉な事だと思っているんです。だから『ダークナイト』はめちゃくちゃ見ました。でも全く同じように出来るわけではなくて、ジム・ゴードン=正義の人というのを納谷さんがどう演じていらっしゃったのか、技術ではなくその気持ちをちゃんと受け継ぎたいと思いながら、毎回アフレコに挑んでいます。

――ジムのどんなところが気に入ってますか?

『GOTHAM/ゴッサム』の世界観の中で、ジム・ゴードンという人物は真っ白なんですよね。ゴッサムという街自体がまっ黒で、その中で唯一の白がジムなんです。とにかく染まらないというのを自分の中でも意識していますね。でも白と黒なら黒の方が強くて、いつかは染まってしまうのかもしれない。そういう存在として、ちょっとグレーになっているハービー・ブロックという相棒がいるんですけど、ジムはいい意味でその相棒とも一線を画すというか、周りの人たち全員と一線を画しているんですよね。自分の正義を貫きすぎて婚約者とも距離ができちゃったり。ゴッサムに住んでいる人はホント、みんな黒いんですよ。普通の人でもちょっとグレー。そんな中で彼はなぜ染まらずにいられるのかが不思議なくらいの街なんですけど、やっぱり彼は絶対染まってはいけない人だし、そういう彼だからこそ演じ甲斐がありますね。一番難しいところではあるけれど、一番好きなところでもあります。

――小野さんから見て『GOTHAM/ゴッサム』の魅力はどんなところにあるんでしょう?

そうですね。まず『バットマン』シリーズが好きな人なら、ものすごくニヤニヤすると思います。随所にギミックが仕込んであって、分かりやすいところではオズワルドが後のペンギンだとか、有名な悪役が次々と若き姿で登場して、思わずニヤっとできる部分がまずひとつ。そしてそれを包括してしまえるくらい、ゴッサムという街がすごく魅力的なんです。警官ですらみんなダーティで、さっき僕はゴードンの真っ白なところが好きだと言いましたし、それとは矛盾するようなんですが、その悪に満ちたゴッサムという街が本当に魅力的なんです。もし『バットマン』シリーズを一度も観た事がなくて、『GOTHAM/ゴッサム』で初めてバットマンシリーズに触れたとしても、面白く見られると思います。今、僕がこうして取材を受けさせて頂いているのは、ジム・ゴードンがこの作品の主役だという事からなんだと思うんですが、実はこのドラマの主役はゴッサムの街そのものなんじゃないかと思うんです。だから誰が見ても面白いんです!

 

――悪が魅力的というのは強烈ですよね。ちなみに気になる悪役はいますか?

毎回強烈な悪役が出て来るんですが、バルーンマンという悪役はちょっと印象深かったです。ペンギンたちみたいにシリーズを通して出て来る悪役じゃなくて、1話限りのゲスト悪役です。悪は悪なんですけど、悪なりの正義があるというか。ゴードンと彼の対話シーンでは、正義とはなんぞやと考えさせられましたね。ゴードンも迷ってたくらいですから。そういうところもすごく『GOTHAM/ゴッサム』らしいな、と感じましたね。そういう悪役は彼だけじゃないんです。だからゴッサム市警が完全な正義だと思ってちゃダメなんですよね。そこが感動する部分でもあり、ゴードン役としては悶々とさせられる部分でもあります(笑)

――では『バットマン』シリーズとしての魅力はどうですか?

これはもう悪役の魅力に尽きると思います。ゴードンは善人として描かれていますけど、ヒーローであるバットマン自身、完全なる正義ではないですよね。ダークヒーローですから。それぞれに正義があって、それぞれに共感できる部分がある。ドラマにはまだ出て来ないけれど、ジョーカーにすら共感するものがある。それにどの悪役にも華がありますよね。どうしても好きになってしまう。見ている人たちが背徳的な気持ちになってしまう、それって抗えない魅力だなと思います。だからこそジム・ゴードンがいるんだろうな、と。いないと多分、ヒドい話になってしまうから(笑)『バットマン』シリーズは、黒いところが魅力なんです。

――そんな黒い街で白い人物を演じている小野さんですが、もし小野さんがゴッサムに住んだらどうなってしまうと思います?

真っ先に黒くなってしまうんではないでしょうか(笑)。そしてペンギンに殺されるかも(笑)。彼、かなり凶悪なんですよ。まったく関係のない通りすがりの人を平気で巻き込むので。今のところ一番のワルだと思いますよ、彼は。これは余談ですが、ペンギンのあまりの悪行三昧に、ドン・マローニ役の楠見さんが、ペンギン役の阪口周平さんを「ダメだぞっ!」としかっていました(笑)マフィアのボスに諭されるというのもアレですが(笑)

 

――ヒーローであるバットマンもダークなところが魅力なわけですが、小野さん自身のヒーローはどなたなんでしょう?

僕は子供の頃からサッカーをやってきたので、奥寺康彦さんですね。今の若い方はご存じないかもしれないですが、海外に渡ったプロサッカー選手のパイオニアで、本当にすごい人なんですけど、昔僕が習っていたサッカークラブに教えに来てくれた事があったんです。その時にサインをもらったんです。以来ずっとヒーローですね。僕にとって身近にいるヒーローってスポーツ選手なんですよね。アメコミのヒーローにはなれないけど、スポーツ選手は頑張ったらなれるかもしれないじゃないですか。もちろん簡単ではないけれど、リアルに目指す事ができるから。ドラマに紐づけるつもりはないんですけど、そういう意味では『GOTHAM/ゴッサム』の登場人物たちは荒唐無稽ではあるけれど、「もしかしたらこうなるかもしれない」と思えるところが魅力なのかもしれないですね。リアルな人間が演じているからこそ、もしかしたらこういう生き方ができるかもしれないと思える、ある種のお手本になるから。僕にとっては奥寺さんもアメコミ・ヒーローのような存在ですし。サッカー選手にはなれなかったけど(笑)

――最後にこれからご覧になる方へメッセージを

さっきも言ってしまったけれど、『バットマン』シリーズのファンの方ならすごくニヤニヤして楽しめると思いますし、多彩なギミックとあっと驚く仕掛けがふんだんに散りばめられているので、文字通り見逃せない作品になっていると思います。これから『バットマン』の世界に触れる方、もっと言うとこれから洋画の世界に興味が出てきたという人にも、入門編としてオススメの作品です。それくらい実は分かりやすくて、痛快で、それでいて考えさせられるドラマです。この作品をきっかけに『バットマン』シリーズを好きになって欲しいし、もっと言うと洋画を好きになって欲しい。さらにもっと言うと洋画の吹替え版を好きになって欲しいです。ぜひ僕たちの息遣いをこの作品で感じて頂ければと思っています。

 

■DVD情報
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメントより、
7月22日(水)レンタルDVD Vol.1~4(各巻2話収録)/デジタルレンタル順次配信開始
8月12日(水)レンタルDVD Vol.5~8(各巻2話収録)
9月9日 (水)レンタルDVD Vol.9~11(各巻2話収録)
9月9日(水)ブルーレイ&DVD発売
「『GOTHAM/ゴッサム』 <ファースト・シーズン> コンプリート・ボックス」
・ブルーレイ(4枚組)¥16,200+税
・DVD(11枚組)¥14,300+税
発売・販売元:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

Photo:
『GOTHAM/ゴッサム』 小野大輔
『GOTHAM/ゴッサム』劇中スチール
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