スターもつらいよ? 映画『ヘイル、シーザー!』の裏にあった苦労話

『ファーゴ』『ノーカントリー』で4つのオスカーを獲得しているジョエル&イーサン・コーエン兄弟の最新作『ヘイル、シーザー!』。1950年代、ハリウッド黄金期の撮影スタジオを舞台に、オールスターキャストによる華麗なミュージカルシーンや水中ショー、本格カウボーイアクションなどが展開する本作から、こうした華麗なシーンの裏に隠された俳優たちのプロ根性を紹介したい。

ミュージカルシーンでタップダンスに初挑戦したのは、人気ミュージカルスターのバート・ガーニーを演じるチャニング・テイタム。『ステップ・アップ』や『マジック・マイク』で華麗なダンスを披露してきた彼にとっても今回の挑戦は予想以上に大変だったようで、「タップダンスを学ぶのは簡単じゃないとわかってはいたけど、あんなに難しいとは思わなかった」と練習当初の苦悩を吐露している。まず動きを真似ることから第一歩を踏み出したというチャニングは「振付についていって覚えることが大変だった。タップにとって大事なのは、単に音を出すだけでなく、音楽を奏でることなんだ。楽器の演奏みたいにね。タップダンスじゃなく、フットパーカッションと呼ぶべきだよ。足で曲を演奏するんだから」と語っている。とはいえ、苦労した甲斐はあったようで、トニー賞受賞経験もある振付師のクリストファー・ガテリからは「彼は踊れたけど、タップはできなかった。すぐに覚えたけどね。天性の才能があるみたいだ」と称賛されるほどの腕前に。

『イノセント・ガーデン』『ブルージャスミン』といった秀作で印象を残し、今では『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフで若き日のハン・ソロ役候補にも挙がるほど注目の存在となったアルデン・エーレンライクは、本作でカウボーイアクションを披露。アクション俳優ホビー・ドイルとして、投げ縄や射撃の大半はアルデンが自らやっているが、さんざん馬に乗って練習したという。アクション監督のタッド・グリフィスは「彼は週に3回、合計6週間訓練した。最初にやったことは馬に乗ることに慣れ、どの速度なら問題がないかを体で覚えることだった。エーレンライクのことをとても誇りに思うよ。見事にやってのけた。今じゃカウボーイと名乗ってもいいほどだ」とお墨付きを与えた。賛辞を贈られたアルデンは「自分が投げ縄のエキスパートだとは言えないよ。腕のいい初心者ってところかな」と謙遜している。

30人以上が優雅に動き、万華鏡のような美しさをみせる華麗な水中ショーに挑んだのは、コーエン兄弟とは2001年の『バーバー』でも仕事をし、今回は若手女優ディアナ・モランに扮したスカーレット・ヨハンソン。この役のために彼女はマンハッタンのミッドタウンにある汚いプールで人魚の尾びれをつけて練習を重ねたそうで、シンクロナイズドスイミングの指導者であり、水中でのダンスを振り付けたメシュ・クシャマンは「彼女は何でも協力してくれた。すごくダイナミックで、演じろと言われた瞬間、輝きを放った。見ているだけで胸が高鳴ったわ」と、その協力的な姿勢とスター性を称えた。

1950年代、ハリウッドが"夢"を作り、世界に贈り届けていた時代。スタジオの命運を賭けた超大作映画「ヘイル、シーザー!」の撮影中に、主演俳優であり世界的大スターのウィットロックの誘拐事件が発生する。撮影スタジオが大混乱に陥る中、事件解決を命じられたのは貧乏くじばかりを引いている"スタジオの何でも屋"。お色気たっぷりの若手女優やミュージカルスター、演技がどヘタなアクション俳優など、撮影中の個性溢れるスターたちを巻き込みながら世界が注目する難事件に挑む!

チャニング、アルデン、スカーレットのほかには、ジョシュ・ブローリン(『ノーカントリー』)、ジョージ・クルーニー(『フィクサー』)、レイフ・ファインズ(『グランド・ブダペスト・ホテル』)、ジョナ・ヒル(『ウルフ・オブ・ウォールストリート』)、フランシス・マクドーマンド(『ファーゴ』)、ティルダ・スウィントン(『ナルニア国物語』)などが顔を揃える。

『ヘイル、シーザー!』は5月13日(金)、TOHOシネマズ シャンテほかで全国ロードショー。(海外ドラマNAVI)

Photo:チャニング・テイタム、アルデン・エーレンライク、スカーレット・ヨハンソン(『ヘイル、シーザー!』)
(C) Universal Pictures