2017年1月21日に、米ワシントンD.C.で「女性の権利」を訴える大規模なデモ「ウーマンズ・マーチ」が起こり、その波は世界中へ。その1周年を記念し、今年も同日にウーマンズ・マーチ 2018がニューヨークで開催されました。そして、毎年3月8日は国際女性デーということもあり、海外ドラマに登場する印象的な女性キャラクターを取り上げ、彼女たちの”強さ”について語ってみたいと思います。
強い女性キャラクターNo.1『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のクレア・アンダーウッド(ロビン・ライト)
本作は、大統領になるためならば卑劣な手段もいとわない、フランク・アンダーウッド(ケヴィン・スペイシー)の陰謀と策略を描く政治サスペンス。例え、フランクが崖っぷちに立たされ危うい立場になっても、決して夫を見捨てることなく支え続けていた妻のクレア。
ところが、夫に勝る野心を彼女が抱いていたことが、シーズン5で明らかに…。ここまでフランクを支え続けてきたのも、アメリカ史上初の女性大統領になる野心を達成させるため。クレアの女としての底力というか怖さを見せつけられたのは、「愛人関係にあったことバラす」と彼女を脅したトーマス・イェーツ(ポール・スパークス)を、涙も見せずに毒殺するシーン(シーズン5第12話)と、シーズン5の最終話「第65章」のラストシーン。
そのシーンは、記者だったゾーイ・バーンズ(ケイト・マーラ)を殺害した罪に問われ、辞任に追い込まれたフランクの代わりに暫定大統領となったクレアが、夫に恩赦を与えて復帰させるつもりなど微塵もなく、そのまま大統領の座に居座ることを決意した瞬間です。クレアの行動全てを支持するつもりはありませんが、一国の大統領の座を狙う女性は揺るぎない強さと自信、自分への信念を備えてなければ無理ではないかと感じずにはいられませんでした。
強い女性キャラクターNo.2 『ゲーム・オブ・スローンズ』のブライエニー・タース(グウェンドリン・クリスティー)
自分の剣に”Oath Keeper:忠誠を守る者”と名付けてしまうぐらい、一度誓いを立てたら何があっても守り抜く女戦士ブライエニー。スターク家の女城主キャトリンに、娘サンサとアリアを探し出し守ることを誓った彼女は、次々と襲いかかる苦難にも負けず、その誓いを果たします。
剣にも劣らぬ鋼のような意思は、他に類を見ないほどの強さ。そして、戦闘で負け知らずの巨漢ハウンドことサンダー・クレゲイン(ロリー・マッキャン)との一騎打ちで、彼を打ちのめすシーズン4第10話「世継ぎたち」のシーンは、ブライエニーの凛々しさと力強さに感動すら覚えるほどでした。
強い女性キャラクターNo.3 デナーリス・ターガリエン(エミリア・クラーク)
兄ヴィセーリスの策略で、ドスラク族の長カール・ドロゴと強制的に政略結婚させられたデナーリス。ドロゴに犯されるように抱かれていた彼女は、自分の身を嘆く代わりに侍女からドスラク語を学び、床で夫を喜ばせる術を習得するのです。そんな涙ぐましい努力が実を結ぶシーンが、シーズン1第2話「王の道」に登場します。こうして、夫婦として本当に愛し合うようになった二人の関係は、デナーリスの努力なしには実現しなかったでしょう。簡単に心が折れてしまう女性には、成すことが出来ない技だと言えそうです。
ドロゴ亡き後も数々の試練を乗り越えた彼女は、大人の女としてだけでなく民に慕われる女王へと成長。シーズン7第3話「女王の正義」で、なぜ自分が七王国の女王に相応しいのか説くシーンで、彼女が述べた「私は雌馬のように売られ、鎖につながれ裏切られた。犯されて汚され、それでも私を持ちこたえさせたものは信念よ。信じたのは神ではなく自分自身。デナーリス・ターガリエンを信じたの」との言葉には、女の強さの真髄を見たと思いました。
強い女性キャラクターNo.4 『グレイス&フランキー』のグレイス(ジェーン・フォンダ)とフランキー(リリー・トムリン)
子ども達も成人し、これから隠居生活を謳歌しようとしていたグレイスとフランキー。ところが、お互いの夫ソル(サム・ウォーターストン)とロバート(マーティン・シーン)が恋仲にあり「一緒になりたいから離婚してくれ」と言われてしまうのです。
多少不満はあったとしても、何十年も結婚生活を共にしたパートナーと別れて、新しい生活をスタートさせることは簡単ではありませんよね。しかも夫同士が愛し合っているとは、かなり女として屈辱的…。ところが、フランキーとグレイスは思いがけず直面した苦境に屈することなく、老齢期の女性向け性玩具を開発して起業。普通なら途方に暮れてしまってもおかしくない状況なのに、たくましく人生の再スタートを切るのです。いざという時に女のド根性を見せるグレイスとフランキー、本当に強いです!
そして、シーズン2第1話「願い事」で結婚式を挙げたソルとロバートの傍に寄り添い、元夫の特別な時を祝福してあげる二人の優しさにも、年を重ねた女の余裕を感じずにはいられませんでした。
強い女性キャラクターNo.5『ブレイキング・バッド』のスカイラー(アンナ・ガン)
末期癌を宣告された夫ウォルター(ブライアン・クランストン)が、足を突っ込んだドラッグビジネスに巻き込まれてしまった妻スカイラー。一度は夫と離婚も考えたものの思い留まり、彼女はドラッグマネーを洗浄する手段として、ウォルターがバイトをしていた洗車場に目をつけます。
シーズン4第3話「マリーの苦しみ」では、悪徳弁護士ソウル・グッドマンの手下カビーに指示を出し、洗車場のオーナーを騙して安くビジネスを買い取ることに成功。巻き込まれたはずのビジネスに自ら加担したのは、妻として腹を括ったスカイラーの女の底意地ではないでしょうか。こうして、資金洗浄と洗車場の経営に楽しみすら見出していたような彼女は、かなり肝っ玉が据わった強い女性だと言えそうです。
強い女性キャラクターNo.6 『ジェーン・ザ・ヴァージン』のジェーン(ジーナ・ロドリゲス)
結婚するまで純潔を守るよう、熱心なカトリック教徒の祖母から厳しく育てられたジェーンだが、手違いで人工授精を受け、妊娠してしまう。前代未聞の出来事に、うろたえながらも赤ちゃんを産んでママになる決心を固めた彼女は、この時点でかなり打たれ強い女性であることを証明しています。
そして、シーズン3第10話「第54話」で最愛の夫マイケルを亡くし、失意のどん底へ…。続く「第55話」では舞台設定が3年後へ飛び、ジェーンの息子マテオは4歳に。3年経ってもマイケルの死を乗り越えられないでいたジェーンですが、出版社で働きながら小説家になる夢を決して諦めず、新しい恋にも踏み出そうと常に前向き! へこたれてしまいそうな状況にも関わらず、負けずに元気に振舞っている彼女を見ていると、こちらまで元気づけられてしまいます。どんな時でもポジティブな影響を周りに与えることが出来る彼女は、揺るぎない強さを身に着けた女性ではないでしょうか。
強い女性キャラクターNo.7 『ウォーキング・デッド』のミショーン(ダナイ・グリラ)
主人公リックたちのグループに加わる前は、鎖につないだウォーカー2体を引き連れ、刀を武器に一匹狼のように行動していたミショーン。
ウォーカーが蔓延る以前の世界では子どもを生み、母親として幸せに暮らしていた彼女の過去が、シーズン4第9話「そして、独りに」で明らかに。刀を振り回し、ゾンビ・スレイヤーのごとくウォーカーを打ちのめす姿が凛々しい彼女ですが、同エピソードで過去を思い出したせいか、いつも張り詰めていた緊張感がフっと解ける瞬間が。途中ではぐれてしまったリックと彼の息子カールを見つけ、思わずミショーンが涙ぐんでしまうシーンは、いつもタフでいようと努めている彼女の強さを逆に感じてしまう場面でした。
いつも意気がっているだけでは、本当の強さとは言えないですよね。そんなミショーンだからこそ、リックの右腕&良きパートナーが務まるのではないかと思います。
強い女性キャラクターNo.8 『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』オブフレッド(エリザベス・モス)
数少ない健康な女性が子どもを産むための侍女として、支配者層に仕えるデストピアな世界が描かれる本作。夫を殺され、娘ハンナと引き裂かれたジューン(エリザベス・モス)は”オブフレッド”と名前を変えさせられ、フレッド・ウォーターフォード司令官に奉仕することになります。
フレッドと交わす月ごとの”儀式”は、女性にとって考え得る最悪の状況ではないでしょうか。シーズン1第2話「出産の日」で、儀式の最中に心を無にするかのごとく天井を見つめ続けるオブフレッドの表情が、あまりにも痛々しくて一女性として見ていられないほどでした。しかし、絶望感に満ちた世界で生きることを余儀なくされても、奪われた最愛の娘と自らの人生を取り戻すために耐え抜くことを誓ったオブフレッドは、女の強さを象徴するような存在だと感じてしまいました。
(文/NAMI)