出生率が低下した近未来のアメリカで、女性たちが迫害され、子を宿すため男性の所有物として扱われる―――。『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』は、そんなディストピアを描いた海外ドラマ。昨年アメリカで配信されると、ダークで悲痛な世界観にもかかわらず好評を博した。米Huluで配信が開始したばかりの第2シーズンでも、エリザベス・モス演じる主人公ジューンの表情が視聴者の感情を強く揺さぶる。(※本記事は、同シリーズの重大なネタバレを含みますのでご注意ください)
◆奴隷ジューンが愛する夫と娘との再会を目指す
ターゲット層である女性が感じている痛みを表現したことで注目を集めた『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』。前シーズンでは、主人公ジューンが司令官フレッドの侍女として奴隷化され、妊娠させられた。名前も「フレッドの所有物」を意味する「オブフレッド」に変えられてしまう。
シーズン2はジューンが黒いバンで輸送されるシーンで幕を開ける。仲間を石打ちの刑で殺すことを断った罰として、口輪をはめられ、多くの他の反逆者とともに処刑地に送られたのだ。彼女たちの目の前に広がるのは、数え切れないほどの処刑台だった。
前作に続き、ジューンはまだ司令官フレッドのために生むべき子を身ごもっている。しかし、実は子どもは主君のドライバーを務めるニックとの間に授かったもの。さらに彼女には、彼らとは別に、愛する夫と娘が存在する。自由を求める彼女は娘との再会を決意し、危険を承知でギレアドからの脱出を目指す。
◆辛すぎて観るに耐えない
今シーズンでも、弱い立場に置かれた者たちが自由の片鱗を掴み取ろうと立ち上がる姿は健在だ。ストーリーが進むにつれ、ギレアド共和国設立の過酷な時期を生き残った彼女と仲間の侍女たちの屈強な精神が明らかになる。共和国の体制側は、失うものすら失くした人間の強みを目の当たりにするだろう。
しかし、その道のりはあまりに残酷だ。米Hollywood Reporter誌(4月16日)では、シーズン2を「ダーク」の一言だと表現している。本作に対してはシーズン1放映当時から、脚本も演技も良いが辛すぎて見るに耐えないとの反応が多かった。今シーズンでも自由を求めて行動を起こしてはさらに状況が悪化するという繰り返しだ。同記事は「『ハンドメイズ・テイル』がわずかな希望の光を見せて転落が終わりを迎えたと思った時でさえ、このドラマは新たに向かうべき仄暗い場所を見出す」と綴る。エピソード4から5は特に悲惨だが、物語は急速に展開するため、悲痛なエピソードが早く過ぎ去るのがせめてもの救いだ。
敵役を好演するのは、指導係リディア役のアン・ダウド。米Variety誌(4月16日)は、主君に忠実なのか、それとも単に侍女たちを痛めつけることに快楽を見出しているのか計りかねる姿は、ヴィランとしての真の資質を感じさせると評している。
◆名優と息ぴったりのクリエイティブ・チーム
作品の1番の魅力は、ジューン役のエリザベスの名演技だ。自らの名をオブフレッドではなくジューンだと幾度となく訴えるシーンでは、瞳の奥に静かに燃え上がる怒りを感じさせる。Variety誌では「モスの表情は、当然ながら、世界で最も釘付けになる感情を放つ源だ」とその演技力を讃えている。
また、彼女の演技の魅力を存分に引き出す製作チームの功績も大きい。シリーズではセリフの数が抑えられているが、Hollywood Reporter誌の伝えるところによると、これは脚本家があえてモスの表情に全てを語らせるよう意図しているためだという。冗長な会話をすべてカットし、表情で勝負させる好判断が効いている。
さらに、秀逸なカメラワークがエリザベスの演技を最大限に高める。ニューヨーク誌のウェブサイトVultureではショットの使い分けに注目し、女性たちが監視下にあることを俯瞰ショットで強調する一方、必要な場面ではジューンの感情を伝えるクロースアップを多用するなど、巧みな使い分けが行われていると分析している。
名優エリザベスとぴったり息のあった製作チームが贈るシーズン2は、アメリカでは4月25日(水)からHuluで公開中。
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『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』シーズン1より
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エリザベス・モス
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