サスペンスやサイコスリラーなど、比較的ニッチなジャンルのオリジナル番組を製作してファンを集めてきたNetflixだが、ここにきてファミリー層をターゲットにしたSFドラマを打ち出してきた。『ロスト・イン・スペース』は60年代のTVシリーズ『宇宙家族ロビンソン』をリバイバルしたもので、暴力表現や政治的メッセージが抑えられ、家族で楽しめる内容になっている。ただし、人畜無害なストーリーを物足りないと感じる向きもあるようだ。
希望に満ちたコロニー開拓の旅が一転…
今から30年後の未来、地球は危機的状況に陥り、人類は厳しい環境での生存を迫られていた。ロビンソン一家は危険を承知で新天地を求め、地球から遠く離れた惑星アルファ・ケンタウリに向けて入植の旅に出る。一家を襲うのは、予想外のアクシデントだ。トラブルに見舞われた宇宙船は、本来予定にない名も無き星への不時着を余儀なくされ、一家はその星でのサバイバル生活を強いられることになる。
一家のメンバーは、卓越した航空宇宙エンジニアの母と、勇敢な精神と強靭な肉体を備える父。これに、素晴らしい才能を持つがプレッシャーにはめっぽう弱い幼き息子ウィルなど、3人の個性豊かな子どもたちが加わる。他にも、あの手この手で一家の行く手を阻むドクター・スミスや、惑星に住み着いている顔のない謎のロボットなど、アクの強いキャラクターたちがドラマを盛り上げる。
ファミリー向けで当たり障りのない内容、評価は二分
Netflixではこれまで暴力やアクションシーンなどをふんだんに盛り込んだオリジナル作品を製作してファンに支持されてきたが、ファミリー向けの色が濃い本作は従来作品とは毛色が異なる。米Hollywood Reporter誌では『ロスト・イン・スペース』を、ヒューマン・ドラマ『THIS IS US 36歳、これから』と、火星での孤独な生活を描いたSF映画『オデッセイ』のミックスだと表現している。ティーンエイジャーあるいは家族向きと捉えれば全般にある程度楽しめるとの評価だ。特に、数十秒ごとに次から次へと危機が襲う展開は手に汗を握らずにはいられない。
一方、米Entertainment Weekly誌(4月2日)のレビューは辛辣だ。スリルあるファースト・シーンには感動するが、1話が終わる頃には退屈してしまうと述べる。まるで2時間ドラマを1シーズンに引き伸ばしたかのようなプロットの薄さは致命的で、キャラが平面的に見えるとしている。「Entertainment Weekly誌のTV批評家二人がこの新シリーズを見たので、あなたは見なくても大丈夫ですよ」とは厳しいコメントだ。
謎の知性体、ロボット
ロビンソン一家の他には、惑星に住むロボットが重要なキャラクターとなる。最初は正体不明の存在だが、少年ウィルと次第に友情を育んでいく様子はストーリーの重要な柱だ。このロボットに関しても、評論家の意見は割れている。
米Variety誌は、作られた経緯も目的も不明のこのロボットは、ミステリアスで想像力を掻き立てると評価している。作品全般に、ご都合主義で行動するキャラクターには辟易するが、ことロボットに関しては好感を抱いている様子だ。
対するEntertainment Weekly誌は、デザイン面で不満を顕にする。これは、顔の代わりに赤と青に変化する発光部が据えられており、表情の変化がほぼ感じられないため。オリジナルの作品ではレトロなブリキ人形さながらの愛嬌のある出で立ちをしており、個性が感じられるデザインだった。前述のプロットの薄さとあいまって、同誌のタイトル全体への評価は「D+」と、かなり辛口になっている。
物足りなく感じるファンもいる中、かなりの予算投資を感じさせるような迫力とスリルのあるシーンもあり、光る点も多い。感動的な家族ドラマとしても見ごたえ抜群だ。ゴールデンウィークを利用して、家族で鑑賞してみるのもいいかもしれない。(海外ドラマNAVI)
Photo:Netflixオリジナルシリーズ『ロスト・イン・スペース』