米ABC『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』で主人公メレディス・グレイ役を演じるエレン・ポンピオ。看板スターである彼女が収入増の秘訣を明かした。エレンは1話あたり57万5000ドル(約6160万円)で出演する売れっ子女優。男女間の賃金格差を象徴する「イコール・ペイ・デイ」が4月10日(日本では4月6日)に訪れたことを受け、より良い対価を勝ち取る交渉術を語った。
自分に自信を持ち、ストレートな交渉を
エレンは、率直な姿勢で金額交渉に望むことを重視している。自分については100パーセント、他人については98パーセントの正直さを持つことが重要だと語る。残りの2パーセントは相手を気遣う多少のお世辞。交渉のテーブルでは物事のポジティブな側面から話題にし、次第に率直な意見を披露することがスマートな展開の秘訣だと明かした。
また、高い金額の提示には相当な自信を要するが、まずは自分自身にパーフェクトを期待することをやめるのが肝心ともアドバイスする。欠点は誰にでもあるため、話し方、外見、立ち居振る舞いについて完全を目指さないことが大切。代わりに、正直な態度を保ち、相手に敬意を持って接することが良いとしている。
さらに、そのように礼儀をわきまえる一方で、望ましい条件で合意できないのであれば交渉の断裂も辞さないという断固とした姿勢も必要だという。この覚悟なくして話し合いに望めば、相手に手玉に取られてしまうのだとエレンは力説する。
こうした精神論に加え、自らが要求する対価がなぜ相応しいのかという根拠も大切だと語る。具体的な数字を挙げ、複数の根拠を述べるとさらに効果的。
1話あたり約60万ドルという要求額については、欲張りすぎではないかと悩んだこともあったという。しかし、米People誌の伝えるところでは、『グレイズ・アナトミー』によってディズニーにもたらされる収益が30億ドルに迫りつつあることが代理店の収集したデータによって判明したため、額の正当さに確信を持つことができたという。
『グレイズ・アナトミー』については、英Daily Mail紙も、ゴールデン・グローブ賞やエミー賞などを受賞したほか、2007~2008年のTV広告収入がもっとも大きい番組となったと伝えている。ネットワークへの貢献を数字で可視化することで、局側を納得させることができた。
以上はあくまで賃金格差に悩む女性に向けたメッセージだが、説得力ある交渉術は性別を問わず参考にできそうだ。ちなみに高額の出演料を誇るエレンは、自身にとっての成功の定義を「幸福」とするなど、慎ましい一面も覗かせる。
『グレイズ・アナトミー』でブレイクし、2007年にはゴールデン・グローブ賞にノミネートされた一流女優も、かつては無名の新人だった。アメリカ東海岸、マサチューセッツ州の小さな街エバレットに生まれたエレンは、ニューヨークでバーテンダーをしていた当時、TVコマーシャル出演のオファーを受けたことをきっかけに芸能界入りする。以来、複数のコマーシャルやテレビの脇役などをこなし、『グレイズ・アナトミー』で一気に知名度を上げた。2007年には音楽プロデューサーのクリス・アイヴェリーと結婚し、代理出産などを経て現在は3児の母になっている。
相手を尊重しつつも要求ははっきり伝えるというエレンの交渉スタイルは、映画・テレビ業界以外でも応用できるかもしれない。(海外ドラマNAVI)
Photo:エレン・ポンピオ Kathy Hutchins / Shutterstock.com