10月末に米CBS All Accessで配信スタートしたサスペンスドラマ『Tell Me a Story(原題)』。「三匹の子ぶた」「赤ずきんちゃん」といった有名な童話をモチーフにした、背筋も凍るようなホラーストーリーがニューヨークの街を舞台に展開する。『ヴァンパイア・ダイアリーズ』や『スクリーム』を手掛け、ホラーに精通したケヴィン・ウィリアムソンが製作総指揮を務める。
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◆童話の主人公たちが禁断の行為に
少女ケイラ(ダニエル・キャンベル)がニューヨークの街に越してくる。赤い一枚布を身に纏い、腿に狼のタトゥーを入れ、肉食系の男性を従えるというアダルトな風貌。問題児である彼女は、教師(ビリー・マグヌッセン)と禁断の関係に発展する。「こんなこと間違っている」「分かってる」と言葉を交わしながら、ベッドにもつれ込む二人。
一方、街角では三匹の子ぶたが、銃を片手に銀行へ向かっていた。黒い装束に身を包み、豚のマスクで顔を覆った3人組だ。凶悪な子ぶたたちは銃を構えて金を要求するが、その一人エディ(ポール・ウェズレイ)は罪の意識にさいなまれることになる。
さらに、巨悪に追われながら互いを必要としている兄妹、ゲイブ(ダヴィ・サントス)とハンナ(ダニア・ラミレス)が登場。現代のヘンゼルともいうべき兄は、PTSDを抱えたグレーテルとともに、こっそりと街を出てゆく。復讐と殺人の予感に満ちた、ホラー仕立ての現代版おとぎ話が幕を開ける。
◆童話をホラーに
誰もが知る童話を、オリジナリティ溢れるサスペンスに仕上げたのが本作の最大の特徴だ。これまで誰も見たことがないようなエッジの効いたトーンに仕立てた、と米Variety誌は評価している。3つのストーリーに共通するのは、どの話も不安と疑心暗鬼の感情に隅々まで支配されていることだ。例えば三匹の子ぶたのパートに登場するジョーダン(ジェームズ・ウォーク)は、日増しに危険が増してゆく環境に怯えながら暮らしている。大惨事の発生を告げるニュースが大音量で鳴り響き、ホラーストーリーとしてのスリルをいっそうかき立てる。
同様に米Los Angeles Times紙も、童話というモチーフに注目。童話では主に深い森を舞台にしていたがコンクリート・ジャングルに場所を変えて現代に蘇ったと表現。殺人、情欲、復讐、そして希望の断片が、大幅にアレンジされた童話の隅々に散りばめられている。早いペースで進行するストーリーは裏切りと秘密に満ちており、時折挿入されるツイストが驚きを与える。童話とホラーという組み合わせも、意外なほど自然に感じられる。グリム童話と、Netflixの大ヒットミステリー『13の理由』を掛け合わせたような作品だと同紙は述べ、ユニークなコンビネーションを歓迎している。
◆よくあるストリーミング作品とは別格
本作の不思議な魅力を語るのはVariety誌。レビュー記事の筆者はシリーズの半分ほどを思わず一気観したそうで、推進力が感じられ心を動かされる本作は、何も考えずに観続けてしまうほどの魅力があると述べる。
その魅力を生み出しているのは、作品のユニークな着想かもしれない。通常の童話とはキャラクターの印象が全く異なる、とLos Angeles Times紙は指摘する。三匹の子ぶたといえばオオカミに怯えながらワラや木の家に立てこもる役回りだが、本作では大胆にも銀行強盗を働く。伝統的な童話上の解釈とは違っていることが本シリーズの美点だ、と同紙は述べている。
グリム童話は残虐だと言われるが、本作のアレンジもなかなかのもの。『Tell Me a Story』は米CBS All Accessで配信中。なお、同プロデューサーによる『ヴァンパイア・ダイアリーズ』はHulu、Amazon Videoなどで視聴可能。(海外ドラマNAVI)
Photo:ダニエル・キャンベル
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