映像とストーリーに吹替現場も驚きの連続!『スター・トレック:ディスカバリー』よのひかり×桐本拓哉インタビュー

50年以上前に作られた『宇宙大作戦』を皮切りに、単なるドラマの枠組みを超えた文化と呼ばれるほどの人気を獲得している『スター・トレック』シリーズ。その待望のドラマシリーズ最新作『スター・トレック:ディスカバリー』シーズン1がついにDVDが12月19日(水)、Blu-rayが12月26日(水)よりリリースとなる。

今回は、日本語吹替版で主人公マイケル・バーナムを担当するよのひかりと、ケルピアン人サルーを担当する桐本拓哉を直撃! キャラクターの魅力、作品の見どころ、収録現場での様子などについて語ってもらった。

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――歴史あるSFシリーズの最新作ですが、そんな作品にメインキャストとして吹替に参加された時の気持ちを教えてください。

桐本:子供の頃に見ていたので、真似て遊んだりしていました。数多くの作品が作られていますけど、今までドラマシリーズも映画版にも参加したことがなかったんですよ。それで、もうずっと見ているしかないのかなと思っていた頃に、副長という重要なキャラクターにキャスティングしてもらえて嬉しかったですね。タイトルを教えてもらう前に吹替演出の方から「ちょっと変わった役だけど、大丈夫?」なんて心配されたんですが、後で『スター・トレック』シリーズの最新作と聞いて"どんな役でも大丈夫!"と思いました(笑) それぐらい僕としては嬉しかったですね。

よの:私はほとんど見たことがなかったんですけど、もちろん『スター・トレック』というタイトル自体は存じ上げていました。ですけど、これだけ長い歴史のあるシリーズなので、どこから見たらいいんだろというような、取っかかりのないままちょっと来てしまって。そんな『スター・トレック』というすごいシリーズに吹替で参加させていただく嬉しさはあるんですけど、一つのお仕事として捉えると、気持ち的には他のお仕事とすごく差があったわけではないですね。ただ、これまで見てなかったことで、ニュートラルな気持ちでこの作品に向かい合えたかなという気はしています。もし見ていたら、熱くなりすぎて気負っちゃうところもあったかもしれませんね。本当にまっさらな状態で迎えられたのが良かったと今では思っています。

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――実際に吹き替えてみて、演じたキャラクターにどんな魅力を感じられましたか?

よの:マイケルは本当に頭の良い女性です。最初は、ちょっと若さゆえに勢いで暴走しちゃって、たくさんの犠牲を出してしまうようなシーンもあるんですよ。それでも彼女の優秀さが彼女自身を救うんですよね。だから、USSディスカバリー号のロルカ船長も彼女を部下として欲しがるんです。生きるか死ぬかというようなギリギリのところで彼女が瞬間的に選び取っていく判断力の凄さは、机の上の勉強ができるというのとはまた違う頭の良さを感じさせますね。

桐本:基本的にマイケルは突進していくタイプなんですけど、ケルピアン人であるサルーは極力リスクを冒さないように事を運んでいくのが一番良いと考える種族なんですよね。だから、二人のぶつかり合いというのが最初は強く出るんですよ。でも、サルーが惑星連邦に入る前の短編エピソードの吹替収録をしたんですけど、そこでサルー自身もリスクを冒して今の状況にいるというのが分かったんですよね。そういうのが根っこにあるから、マイケルとぶつかりながらも分かり合える部分もあるんだなと思いましたね。

――マイケルは地球人でありながらバルカン人に育てられたということで、感情を抑制するバルカン人らしさもありますね。

よの:シーズン前半の方は少し無感情というか、とにかく笑わなかったんですよね。後半になってきて笑うシーンも増えてくるんですけど、笑うとすごく素敵なんですよ。彼女の笑った時のとても女性らしい柔らかな表情は本当に魅力的だなと思いますね。

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――マイケルは保安主任のタイラーと恋の予感もありますが、タイラーのどんなところに惹かれたと思われますか?

よの:マイケルの生い立ちに関わるような話の要所要所で、気付きを与えてくれるような言葉をタイラーが口にするんですね。自分では思いもしていなかったことを言われたりすると、気になってしまうのではないでしょうか。それに、何か自分と相反するものを感じたんだと思います。マイケルは恋愛経験が多くはないという設定なので、余計にタイラーのような影のある男に惹かれたのかもしれませんね(笑) マイケルは任務をこなしつつも、タイラーとの関係ではとても穏やかで幸せそうな表情をするんですよ。そんなところからも、彼との時間は彼女にとって大切なものなんだろうなというのは感じました。

――桐本さんは宇宙艦隊初のケルピアン人という地球人ではないキャラクターを演じるにあたり、気をつけた点はありますか?

桐本:見た目が特殊なので、最初は悩みましたね。サルーを演じたダグ・ジョーンズさんが実際に特殊メイクをして演じているので、声を聴くとセリフ回しが鼻声になっているんです。だから僕も吹き替える時にそういう声の方が映像にしっくりくるのかなとも考えたんですけど、それだと演技できないですし、声に加工を入れちゃうようなものなのでやめました。でも、普通の人間のようなしゃべり方じゃないことをやった方がいいと思ったんですよね。それで、アメリカとイギリスの役者さんは同じ英語でも発音とかリズムとかも違うので、ダグさんはアメリカの役者さんですけど、周りの役者さんとの異国感的な違いが出るようにクイーンズ・イングリッシュのようなイメージを持ち込んでいるんです。ただ、そういう言い方にしたがために言いづらい言葉がいっぱい出てきちゃって、しまったなと思うことが多かったですね(笑)

よの:言いづらかったなんて全然感じませんでしたよ。

桐本:いや、いっぱいあったんですよ(笑)

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――ドラマシリーズの設定を踏襲しつつも映画版のような迫力ある映像が本作の魅力の一つですが、印象的なシーンはありますか?

桐本:シーズン1の第1話を最初に見た時は、凄いのができる世界になったんだなってビックリしましたね。マイケルが宇宙服で未知の物体に向かうシーンは特にインパクトがありました。

よの:どのシーンも映画じゃないのに凄いんですよね。

桐本:とにかく全話のクオリティが高いんですよ。映画だとある程度は制作に時間をかけられますけど、ドラマシリーズは本来そこまで時間をかけられないのにね。どうしてこんなにクオリティを高く保てるんだろうと思っちゃいます。

よの:私にとって印象的だったのは、胞子ドライブの部屋の中にある胞子を培養している場所ですね。そこの映像が綺麗だなと思いました。でも、どのエピソードでもどのシーンでも、本当に驚かされる映像がたくさんありましたね。

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――吹替の収録中もハイクオリティな映像から目が離せないんじゃないでしょうか?

桐本:実は、ここ最近の日本語吹替制作の流れとして、配信の作品はCGなどによるVFXがまだ完成していない状態の映像で吹替収録のリハーサルを始めることが多いんですよ。本作は特にSFモノだからCG加工前の映像が含まれているとシーンの状況がよく分からないんですよね。向こうの役者さんは説明を受けているからまだ見えていないものに対しても芝居ができますけど、僕らは想像でリハーサルをしないといけないんです。

――メイキング映像みたいですね。

桐本:例えば、本作のCGでクマムシ生物という大きな虫が出てくるんですけど、あれは白タイツを着た大柄な俳優さんが演じているんですよ(笑) ものすごくシリアスなシーンなのに(笑)

よの:隊員が宇宙空間に放出されてしまうシーンでも、吊り下げているワイヤーが思いっきり見えていたり(笑)......というような状態で、シリアスなマイケルのモノローグというのは、正直きつかったですね(笑)

桐本:だんだんと映像が出来上がってくるのが分かるから、完成版を見ると「あれがこうなっていたんだ!」と衝撃を受けるよね。

よの:そうですよね(笑)

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――収録現場で吹替キャストの皆さんと本作についてどんなことを話されていましたか?

よの:実は医療部長ヒュー・カルバーを吹き替えている奈良徹さんってスター・トレックのフリークなんですよ(笑)

桐本:「"トレッキー"(スター・トレックの熱心なファン)だね」と言うと、本人は「いや、そこまでは」と言うんですけどね(笑) いろいろと収録では助けてもらいました。

よの:私はスター・トレックの知識がほとんどなかったので、分からない時は"奈良先生"が解説してくれるんです。

桐本:心強いよね。僕らは表面的だけじゃない、裏設定的なところなんて分からないんだけど、奈良さんが「いや、実はですね......」って教えてくれるんです(笑) それでいろいろと分かってくることもありましたね。だけど、本番前に話が盛り上がっちゃって、吹替演出の方に「もういいから始めるよ」って呆れられたりしていました(笑)

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――『スター・トレック』シリーズが初めての人でも楽しめる本作ですが、そんな初めての人に楽しめるポイントや楽しみ方を教えてください。

よの:シリーズをほとんど見ていない、いわゆるスター・トレック初心者として参加させていただいた私でも十分楽しめたので、他のシリーズを見てないからとか恐れることなくぜひ手に取ってください。一つの物語として楽しんでいただけると思います。もちろん、他のシリーズを知っていたらもっと楽しめるところはいっぱいあると思うんですけど、初心者でも間違いなく楽しんでいただける作品です。さらにSFとしての面白さだけでなく、物語にはサスペンス的な要素もあります。その面白さは、収録中に吹替演出の方から今後の展開を聞いてショックを受けたぐらいですから。

桐本:本作は、シリーズ第1弾の『宇宙大作戦』の前日譚になるので、『スター・トレック』シリーズが気になる方はこの作品を最初に見てから『宇宙大作戦』を見るというのも一つの正しい見方なんじゃないかと思います。そういう意味では、シリーズを初めて見るには一番いい作品なんじゃないでしょうか。それから、全てのシリーズはつながっているので、本作を見てからでも別のシリーズを楽しめると思います。それにシーズン1全15話で一つの話がちゃんと完結していますし、さらにラストには僕らのようなスター・トレック初心者でも驚きつつ、かつ熱心なファンが喜ぶこともあって、シーズン2にもつながっています。見終わると長編映画を見たような満足感がありますし、イッキ見されたらとても爽快感があると思います。

(取材・文・写真/豹坂@櫻井宏充)

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■『スター・トレック:ディスカバリー』シーズン1 商品情報
<セル>
DVD-BOX 12月19日(水)発売 ...9,800円+税
Blu-ray BOX 12月26日(水)発売 ...12,800円+税
<レンタル>
DVD Vol.1~8 12月19日(水)レンタル開始
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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Photo:よのひかり、桐本拓哉『スター・トレック:ディスカバリー』 TM & ©2018 CBS Studios Inc. STAR TREK and related marks are trademarks of CBS Studios Inc. CBS and related logos are trademarks of CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved.