映画『エリン・ブロコビッチ』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジュリア・ロバーツが主演を務め、ラミ・マレック主演の若き天才ハッカーを描いたサスペンス・ドラマ『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』を手掛けるサム・エスメイルがクリエイターを担う、Amazon Prime Originalドラマ『ホームカミング』。2月22日(金)より、シーズン1全10話の一挙独占配信開始を記念して、エスメイル監督のオフィシャルインタビューが到着した。
本作は、イーライ・ホロウィッツとマイカ・ブルームバーグによるポッドキャストの同名フィクション番組をもとにした政治スリラー。エスメイルは、1話30分の本作全10話でメガホンを取っている。秘密政府機関"Homecoming:ホーㇺカミング"の社会福祉職員ハイディ(ジュリア)と、普通の生活に戻ることを願う兵士ウォルター(ステファン・ジェームズ『ビール・ストリートの恋人たち』)を中心に描かれる。本年度のゴールデン・グローブ賞で「作品賞」「女優賞」「男優賞」の3部門にノミネートされた話題作だ。
助けようとする気持ち、人を振り回す上司、妄想にとらわれる兵士、手に負えない予期せぬ結果...様々なことに翻弄されながらハイディはカウンセラーとして、帰還兵の社会復帰を支援する施設"ホームカミング"で働いていた。その何年か後、母親のいる実家に戻り、ウェートレスとして働きながら新たな人生を送るハイディの元に、国防総省の調査員が訪れ、ハイディがホームカミングを去った理由を問いただす。その日をきっかけに、彼女は自分の知る物語の裏に、まったく別の物語が隠されていたことに気付く、というあらすじ。
――『MR. ROBOT』があんなに成功すると予測していましたか? また、あの番組で人生はどう変わりましたか?
あの成功はまるで予測していなかったよ。あれは小規模で奇妙なドラマ。カルト的人気を得られればと思っていたくらいで、こんなにビッグになることは期待していなかった。あのおかげで、僕の人生は、すべての側面において変わったよ。僕のキャリアを立ち上げてくれることになり、スタジオやネットワークは、僕がどんなフィルムメーカーで、どんなテイストを持っているのかを理解してくれた。僕の人生は、本当に変わったんだ。
――『ホームカミング』にしても『MR.ROBOT』にしても、15年前のTVではあり得なかった、複雑で非常によく考えられたものですよね。この業界が変化していることを、監督は肌で感じていますか?
映画業界がスーパーヒーロー物やシリーズ物ばかりに集中するようになってきて、TVがその穴埋めをしている、それが、今の状況だ。派手なアクションではなく、キャラクターやストーリーを重視する、いわば昔スタイルのプロジェクトが、TVに流れているのさ。僕が『ホームカミング』を作りたいと思ったのも、まさにそれが理由。このストーリーには、アラン・J・パクラ、スタンリー・キューブリック、アルフレッド・ヒッチコックの映画を思い起こさせるものがある。カーチェイスやアクションが中心なのではなく、人について...。そこにどんでん返しや思いもかけぬことが起こっていき、秘密が明かされていくんだ。
――この番組のもととなったポッドキャストについてはいつからご存知でしたか?
始まった頃から聞いていたよ。僕のエージェントに教えてもらったんだ。まだ 3 回しかやっていなかったので、3回分を一気に聞いたんだが、すっかりハマってしまった。それで、エージェントに続きも欲しいと言ったのさ。エージェントから次の3回も入手し、それもひと息に聞いた。その後、妻にも聞かせるために、また最初から聞いたよ。これを映像化したら面白いかもしれないと考え始めたのは、さらにもう一度、最初から聞き直し始めた時だ。さっきも言ったけれど、ここには何かヒッチコック風のものがある。そういうものは、今、あまり見かけない。これはとても楽しいスリラーになり得ると、僕は感じたのさ。
――ジュリア(・ロバーツ)はどんな形で関わることになったのですか?
それから2ヶ月ほどして、僕がイーライ(・ホロウィッツ)、ミカ(・ブルームバーグ)と第1話の脚色作業を始めた時、エージェントから電話があり、ジュリアがこのポッドキャストのファンだと教えてもらったんだ。僕は彼に「僕はジュリアのファンだよ」と言った。僕とジュリアは同じエージェントについているんだよね。それがきっかけなのさ。それで、僕とジュリアはフェイスタイムで話すことになった。実際に話す前、僕はものすごく緊張したよ。でも、話し始めた途端、それはすぐに吹き飛んだ。彼女がとても普通で、地に足がついた人だったから。僕と彼女の好みは似ていて、この番組をどんなものにしたいのかという方向性も一致した。彼女が演じるキャラクターについてのアイデアにしても同じ。僕らは最初からとても気が合ったんだ。そうやって、彼女は、この番組の重要な人になっていった。もうひとつ、最初に話したことがある。僕は『MR.ROBOT』も抱えていたので、この番組を毎回自分で監督できるかわからなかったのだけど、ジュリアは、僕が全部を監督するのでなければ参加しないということだったんだよ。
――それはなぜなのでしょうか?
彼女は劇場用映画の世界から来た人だからさ。劇場用映画では、先に脚本があり、一人の監督が撮影して編集をする。TVでは、回によって監督が違い(複数回分の)脚本、編集作業が常に同時進行する。僕も実は彼女に同感。だから『MR.ROBOT』は全部自分で監督すると決めたんだ。先に脚本も全部作っておくことで、俳優は撮影が開始する前に、自分のキャラクターにどんなことが待ち受けているのかを知っておける。毎週違う人が監督をするのは、俳優にとってやりづらいんだよ。監督の好みはそれぞれで、違うことを希望されたりするからね。つまり、僕とジュリアはどちらも同じことを望んでいたわけだ。問題は僕のスケジュール。だけどジュリア・ロバーツを失うわけにはいかないからね。
――『MR.ROBOT』は、第2シーズンから、シーズン全部の脚本を最初に揃え、その全部を映画のように撮影したそうですね。昨日、第3話のシーンを撮影したと思ったら、今日は第8話のシーンで、明日は第2話とか...。今、キャラクターがどんなところにいるのか、俳優は混乱するのではないでしょうか?
ああ、それはよくあるね。でも、僕は脚本から深く関わっていて、撮影現場には毎日いて監督をしているから、どの瞬間を取り出されても、その時、それぞれのキャラクターがどんな状況にあるのかを、完全に把握している。俳優は、今、自分のキャラクターがどんなところにいるんだっけと混乱したら、僕を頼ってくれればいい。
――『ホームカミング』も同じように撮影したのですか?
そうだ。全部をいっぺんに撮影している。このロケ場所が出てくるシーンだからと、第10話、2話、3話のシーンを立て続けに撮ったり。そんなふうにあちこち飛びつつ撮影をした。
――第2シーズンは、どんな感じになるのでしょうか? あなたは先ほどヒッチコックを出してこられましたし、どこかであなたがブライアン・デ・パルマにも影響を受けていると読みましたが、そういった雰囲気は、第2シーズンに明らかに表れますか?
今、まさに第2シーズンを書いているところで、まだ僕たちも考えているところなんだよ。だけど、パクラやキューブリックの影響を受けたスリラーになると言っておこう。キューブリックの最後の映画『アイズ ワイド シャット』で僕が好きなのは、スリラーでありながら、あからさまなスリラーではないところ。ストーリーは、夫婦の関係から始まる。妻は夫以外の男性と関係を持ちたいという密かな願望を持っている。そこからミステリーが始まるんだ。スリラーの中にある、親密な人間ドラマ。それが『ホームカミング』に僕が求めるもの。今、そういう映画は、もうあまり見られない。映画でスリラーというと、アクションスリラーが主流だ。その中にちょっと人間ドラマもある、というような。でも、『ホームカミング』は内面を重視する。最初から最後までキャラクターに重点が置かれるんだ。
本国ではシーズン1の配信前に2シーズンまとめての製作が決定するなど注目を集める『ホームカミング』。ポッドキャスト番組のクリエイターであるホロウィッツとブルームバーグは、シリーズ版で脚本を担当。製作総指揮にはエスメイルと共に『MR.ROBOT』を手掛けるチャド・ハミルトンをはじめ、アリシア・ヴァン・クーヴァリング(『新しい夫婦の見つけ方』)、クリス・ギベルティアレックス・ブルームバーグ(『トースト ~幸せになるためのレシピ~』)、マット・リーバー(『ドクター・ドリトル』)らが名を連ねている。
ジュリア、ステファン以外の出演者はボビー・カナヴェイル(『VINYL‐ヴァイナル‐ Sex,Drugs,Rock"n"Roll&NY』)、シェー・ウィガム(『バイス・プリンシパルズ』)、アレックス・カルポフスキ(『GIRLS/ガールズ』)、シシー・スペイセク(『ブラッドライン』)、フランキー・ショウ(『ブルマン大学 ~俺たち、もっこりフットボーラー~』)、ダーモット・マローニー(『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』)ら。
■ Prime Original『ホームカミング』配信情報
Amazon Prime Original 『ホームカミング』はPrime Videoにて2月22日(金)より独占配信スタート。
Photo:
Amazon Prime Original『ホームカミング』