凄い映像配信サービスがやってくる!TV&映画ファン騒然の「ディズニー+」って!?

今年の11月にアメリカで驚異的な映像配信サービスが始まる。これまでNetflixが王座に君臨していた感ありの映像配信サービス業界だが、その世界に大革命が起こるのだ。それが、ディズニー・プラス(「 Disney+」)の登場である。

『リロ&スティッチ』『アナと雪の女王』などのディズニーアニメーション映画のすべて、そして『スター・ウォーズ』シリーズや『アベンジャーズ』シリーズといった大ヒット映画の数々、おまけに『サウンド・オブ・ミュージック』や『猿の惑星』の名作を含む、数千と推定されるディズニーの映像ライブラリーを月々たったの6ドル99セント(約780円)あるいは年間一括の70ドル(約7,830円)で楽しめるサービスである。

これだけの大ヒット(ただのヒットではなく、「大」ヒットである)作品が、低料金でいつでも楽しめる...。これはまさにBuzzFeed.comのいうところの「Epic!」という表現がピッタリだ。「エピック」という単語は「壮大な、素晴らしい」という意味合いを持つのだが、ディズニー+の配給する映像リストを見ると、まさにエピックである。

ディズニー+の詳細が発表された日、全米ではTVでもオンラインでもその話題でちょっとしたお祭り騒ぎとなった。

普通、映画ファンは自分の好きな番組や映画作品が、どのスタジオの持ち物かなどということはあまり気にしないものだが、ディズニー+がどれほど凄いかということをご理解いただくために、どうやってこの膨大な量の大ヒット作品がディズニーにあるのか、ということをご説明したい。

ディズニーの絶大パワー

それはつい先日、ディズニーが21世紀フォックス社の映画・テレビ部門を買収したからだ。これは簡単に言うと、フォックスがどっさりと持っていたTV番組や映画作品が、一気にディズニーのものになったということだ。

これまでフォックスの持ち物だったフランチャイズ(=シリーズ化されている作品)、例えば映画『エイリアン』『X-MEN』『デッドプール』、アニメ映画『アイスエイジ』なども、すべてがディズニーの持ち物になる。一度に放出されるかどうかはともかく、ディズニー+でゆくゆくは視聴できることになるのだ。これはラーメンや丼ぶりで言うところの全乗せ、ヘンゼルとグレーテルに出てくるお菓子の家で食べ放題...である。

フォックスがディズニーのものになったことで、映像配信サービスのディズニー+が受ける恩恵は計り知れない。特に全米のファンが大喜びしているのが、これまでどこの配信サービスでも見られなかったフォックスの長寿人気アニメ番組『ザ・シンプソンズ』の30シーズンがディズニー+で配信されるということだ。

そしてこの原稿を書いている最中に飛び込んできたニュースによると、全米大手通信企業AT&Tに続いてユニバーサル映画を所有するコムキャストもHuluの株を売り払う予定だという。この速報によれば、Huluがほぼ完全にディズニーの所有になるということだ。飛ぶ鳥も落とす勢いとはこのことだろう。

日本でのHuluはアメリカの展開と多少違うのでどんな様相となるかは不明だが、アメリカではディズニーの映像配信パワーがますます格段にアップするのは間違いなく、NetflixやAmazonにとってはさらに予断を許さない雲行きになってきている。

ディズニーは11月のディズニー+開始準備に際して、Netflix×マーベルのオリジナルシリーズ『パニッシャー』や『ジェシカ・ジョーンズ』などマーベルTVシリーズの引き上げをしており、現在は米Netflixで視聴可能な『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』などの『スター・ウォーズ』シリーズも間もなくすべてNetflixから姿を消し、ディズニー+に引っ越すことになる。

ファン歓喜のディズニー+ラインナップ

現在わかっているだけでもディズニー+の配信作品は、新旧ディズニー・アニメーションをはじめマーベル、ピクサー、ルーカスフィルム(『スター・ウォーズ』関連全域)、ナショナル・ジオグラフィック関連作品で、会員はネットがないところでも視聴できるよう作品をダウンロードすることもできる。

ディズニー+の強みは既存作品だけではない。ディズニー+のオリジナル作品として注目されているのは、『スター・ウォーズ』の人気悪役ボバ・フェットを扱う(という噂の)スピンオフ・シリーズ『The Mandalorian(原題)』だ。マーベル作品の礎となったヒット作『アイアンマン』『アイアンマン2』をはじめ、最新作『ライオン・キング』の実写リメイクも手がけたジョン・ファヴロー監督が製作総指揮を担っており、早くも話題を呼んでいる。

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この他にも、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の英雄キャシアン・アンドー(ディエゴ・ルナ)が主人公で、この映画の前章にあたるストーリーを描く題名未定のシリーズ、『アベンジャーズ』の愛すべき悪役ロキ(トム・ヒドルストン)が主人公となる『Loki(原題)』、そしてスカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセン)とヴィジョン(ポール・ベタニー)が主人公の『WandaVision(原題)』、ファルコン(アンソニー・マッキー)とバッキー・バーンズことウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)が主人公の『Falcon & Winter Soldier(原題)』がスタンバイ中。

そしてアニメシリーズではオリジナル声優を再び迎えての『モンスターズ・インク』スピンオフ、そして『リトル・マーメイド』の魔女ウースラが主人公のアニメシリーズも待機している。まさにてんこ盛りだ。

こう見ていくと価格の面でもコンテンツの面でもディズニー+は断トツの強さに見える。これからNetflixをはじめAmazonが差をつけるとしたら、ディズニー以外のスタジオが所有するTV番組や映画の配信は言うまでもないが、ディズニーが手をつけないような大人向けでエッジーなドラマやアクション(全米映画協会規定でR以上の範疇に入る作品)、特にホラーを売り物にすることだろう。ホラーは、大金をかけずにできる作品が多いため量産されている一方、忠実なファンが多いことから必ず製作費の元を取った上に利益が出るジャンルとして知られており、配信サービスでも大いにデマンドが高い。

ただ、Huluがディズニー傘下となった今、ディズニー+にはそぐわない大人向けコンテンツがHuluに流れたとすると、映像配信サービス業界はディズニー+の一人勝ちになる可能性も出てくる。

そうなると、やはり勝負の決め手はNetflixやAmazonがどれだけ秀悦なオリジナル・コンテンツを生み出せるかにかかってくる。有りもので勝負したらディズニー+に負けるのは目に見えている。だが、もしNetflixやAmazonがオリジナル作品で『SEX AND THE CITY』や『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』、そして『ゲーム・オブ・スローンズ』のような"大人向け"ヒット作を生み出せば、ディズニー+に立ち向かえる強力な武器となるだろう。

いずれにせよ、ディズニー+の出現で映像ファンにとっては至福のシーズン到来となりそうだ。

(文:Akemi Kozu Tosto/神津トスト明美)