第71回エミー賞予想〜現地メディアはどう見る?【コメディ・シリーズ部門】

アメリカTV界にとって年に一度の祭典、第71回エミー賞授賞式が日本時間9月23日(月・祝)に行われる。各カテゴリーで魅力的な作品や俳優などが候補に挙がる中、【ドラマ・シリーズ部門】、【コメディ・シリーズ】、そして【リミテッド・シリーズ/TVムービー】部門の主要部門について、現地メディアの予想をまとめ、受賞の行方を様々な視点から追ってみよう。2回目の本日は【コメディ・シリーズ】からご紹介。

作品賞

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『バリー』
『Fleabag フリーバッグ』...大穴
『グッド・プレイス』
『マーベラス・ミセス・メイゼル』...対抗
『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』
『シッツ・クリーク』
『Veep/ヴィープ』...本命

昨年、同部門を含む8冠を達成した『マーベラス・ミセス・メイゼル』は、今年はノミネーション数をさらに伸ばし(14→20)、うち6部門をクリエイティブアーツ・エミー賞で受賞済と勢いを保ち続けている。しかし、大本命は2015年から3年連続で作品賞を受賞し、過去6シーズンの受賞数は17を数える『Veep/ヴィ―プ』。昨年は主演のジュリア・ルイス=ドレイファスの闘病による製作中断を受けて対象外だったが、それを乗り越えて製作されたファイナルシーズンはとりわけ評価が高く、4度目の作品賞を手にして有終の美を飾ることが期待されている。

一方、シーズン2にしてエミー賞初ノミネートの『Fleabag フリーバッグ』も大きな可能性を秘めている。2016年のシーズン1から3年ぶりに配信されたシーズン2はTV批評家協会賞で最優秀TV番組賞、最優秀コメディ・シリーズ賞、コメディ・シリーズ個人功労賞(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)の3冠を達成している。英国で社会現象を巻き起こすほどの人気を博し、フランスでリメイクもされた本作は今春に幕を下ろしており、その功労がエミー賞で認められるか、注目したいところ。

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主演男優賞

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アンソニー・アンダーソン『Black-ish』
ドン・チードル『Black Monday』
テッド・ダンソン『グッド・プレイス』...対抗
マイケル・ダグラス『コミンスキー・メソッド』...対抗
ビル・ヘイダー『バリー』...本命
ユージン・レヴィ『シッツ・クリーク』...大穴

昨年『バリー』で1シーズン目にして主演男優賞を獲得したビル・ヘイダーが今年も最有力候補。殺し屋から引退したいと思いながらもそれを叶えられずに苦しむ主人公を今シーズンも見事に演じきった。加えて、監督賞と脚本賞にも2年連続でノミネートと、その才能を余すところなく発揮している。

そのビルを追いかける70代の大ベテラン、マイケル・ダグラスとテッド・ダンソンの受賞を後押しする声も多い。テッドは『Cheers(原題)』で1983年から11年連続でコメディ・シリーズ主演男優賞にノミネート(1990年と1993年は受賞)という偉業を成し遂げている。昨年はビルに敗北を喫したが、今年こそは『グッド・プレイス』で再び同じトロフィーを手にすることができるか、ベテランコメディ俳優に注目が集まる。一方のマイケルはアカデミー賞主演男優賞に輝いた経歴を持ちながら、エミー賞受賞は2013年の『恋するリベラーチェ』のみ。ノミネートもその時以来、6年ぶりとなる。授賞式直後の9月25日に75歳になる彼がもらえば、一足早いバースデイプレゼントになりそうだ。

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主演女優賞

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クリスティナ・アップルゲイト『デッド・トゥ・ミー ~さようならの裏に~』
レイチェル・ブロズナハン『マーベラス・ミセス・メイゼル』...大穴
ジュリア・ルイス=ドレイファス『Veep/ヴィープ』...本命
ナターシャ・リオン『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』
キャサリン・オハラ『シッツ・クリーク』
フィービー・ウォーラー=ブリッジ『Fleabag フリーバッグ』...対抗

誰が獲得してもおかしくないと言えるほど、拮抗した戦いを繰り広げているのが主演女優賞。昨年の受賞者であり、2年連続でゴールデン・グローブ賞女優賞にも輝いているレイチェル・ブロズナハン、女優としてもクリエイターとしても高い評価を得ているフィービー・ウォーラー=ブリッジを有力視する声も高い中、やはり本命は過去6シーズンすべてで同賞を獲得しているジュリア・ルイス=ドレイファスのようだ。2017年に前代未聞の6年連続受賞を成し遂げた翌日に乳がんと診断されて治療を始めた彼女は、それでも『Veep』を降板することはなく、辛い治療を乗り越えて再びエミー賞のステージに帰ってくる。その復帰を全シーズン受賞という形でお祝いするのが一番ありそうなシナリオではある。

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助演男優賞


アラン・アーキン『コミンスキー・メソッド』...対抗
アンソニー・キャリガン『バリー』
トニー・ヘイル『Veep/ヴィープ』
スティーヴン・ルート『バリー』
トニー・シャルーブ『マーベラス・ミセス・メイゼル』...本命
ヘンリー・ウィンクラー『バリー』...大穴

助演男優賞には『バリー』から、昨年受賞のヘンリー・ウィンクラーを含む3人がノミネート。同一作品で複数の候補者がいる場合、投票が分かれて結果的にその作品以外の人が受賞するというパターンも少なくはないが、2004年には助演女優賞に『SEX AND THE CITY』からキム・キャトラル、クリスティン・デイヴィス、シンシア・ニクソンの3人がノミネートされ、シンシアが受賞したというケースもある。

しかし今回のライバルは、『名探偵モンク』時代に8シーズンすべてで主演男優賞にノミネートされ、そのうち3度で栄冠を手にしたトニー・シャルーブと、過去4度アカデミー賞にノミネートされ、『リトル・ミス・サンシャイン』で助演男優賞に輝いたアラン・アーキンという名優たち。ちなみに、85歳のアランはエミー賞はこれが5度目のノミネートでいまだに受賞歴はない。

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助演女優賞


アレックス・ボースタイン『マーベラス・ミセス・メイゼル』...対抗
アンナ・クラムスキー『Veep/ヴィープ』
シアン・クリフォード『Fleabag フリーバッグ』...大穴
オリヴィア・コールマン『Fleabag フリーバッグ』...本命
ベティ・ギルピン『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』
サラ・ゴールドバーグ『バリー』
マリン・ヒンクル『マーベラス・ミセス・メイゼル』
ケイト・マッキノン『サタデー・ナイト・ライブ』

今年のエミー賞で候補者数最多の8人を抱える混戦模様の助演女優賞。専門家の見解では昨年の受賞者アレックス・ボーンスタインと、本年度のアカデミー賞で見事なスピーチを披露してファンの心を掴んだオリヴィア・コールマンのほぼ一騎打ちだが、ややオリヴィアが優勢なようだ。

明日は【リミテッド・シリーズ/TVムービー】の現地予想をお届け!

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第71回エミー賞授賞式は、日本時間9月23日(月・祝)に米ロサンゼルスのマイクロソフトシアターで開催される。また、FOXチャンネルでは午前9時から二カ国語版(同時通訳)で、今年も日本独占生中継となる。午前8時からはレッドカーペットも生中継予定。

今回参考にした米メディアは以下の通り。
(Indie Wire, Variety, Deadline, Los Angeles Times, Gold Derby)

Photo:『コミンスキー・メソッド』 『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』 『マーベラス・ミセス・メイゼル』 『Fleabag フリーバッグ』 『Veep/ヴィープ』 (C)2017 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc. ビル・ヘイダー (C)NYPW/FAMOUS ジュリア・ルイス=ドレイファス (C)2016 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R)and all related programs are the property of Home Box Office, Inc. エミー賞 (c) Television Academy.