オリヴィア・コールマンが圧巻の演技 『ザ・クラウン』シーズン3、「最高のシーズン」の評を獲得

歴史ドラマ『ザ・クラウン』は、英国史に名高い女王・エリザベス2世の生涯を追う物語。内乱の気配に戦争と、不安定な情勢のイギリスを統治する王室の、その知られざる苦悩に光を当てる。このたび公開されたシーズン3を含め、日本でもNetflixで視聴可能だ。

国乱れ、女王に力はなく

1947年の結婚式に幕を開ける本シリーズでは、クレア・フォイがエリザベス2世女王を演じてきた。シーズン2までに多くの史実を盛り込んでおり、第2次チャーチル内閣の誕生、マーガレット王女の恋愛と離別、そして第二次中東戦争など、激動の時代に直面した王室とその内幕を描く。

20191204-crown5-dramanavi-1-00-view.jpg

最新のシーズン3では、エドワード王子が誕生した1967年以降の英国が舞台に。主演をオリヴィア・コールマンが引き継ぐ。齢40に近づきつつあるエリザベス2世女王は、伴侶であるフィリップ王配との生活を安定させつつある。一方、イギリス国内は極度の不景気に見舞われ、労働層がいつ反乱を起こしてもおかしくない不安定な情勢。与野党の対立から議会も紛糾するが、王室に打つ手はなく、女王は無力さを痛感する。国民の間にくすぶる不満が君主制への疑問へと深刻化するなかで、女王はアメリカへの援助要請やロシアからのスパイ疑惑への対処など、外交課題の解決に奔走する。

20191204-crown4-dramanavi-1-00-view.jpg

女王の知られざる苦悩

エリザベス2世といえば現在も英国女王の座に君臨し、イギリス国民から絶大な信頼と人気を得ている人物だ。本作『ザ・クラウン』は、その知られざる多面性に光を当てた作品だといえるだろう。

20191204-crown3-dramanavi-1-00-view.jpg

新たにオリヴィアが演者のバトンを引き継いだ女王について、十分な表現力が発揮されていると米Los Angeles Times紙は捉えているようだ。作中のエリザベス2世は、次々と起こる事態に限定的に対応しており、その反応は見方によっては冷淡と感じられることも。しかし決して国民に無関心というわけではなく、混乱のなかに安らぎを求める人々に希望をもたらす存在でなければならないという責任を痛感している。ただし、必ずしもそうできない現状は彼女の心痛の種だ。事故現場に臨席した際には涙を流しているように装い、同時に悲しみの感情が高まらない自身に対して苛立ちを感じてしまう。一種の冷たさと、公人としての苦しみの両方を、オリヴィアの演技は重層的に表現している。

20191204-crown7-dramanavi-1-00-view.jpg

彼女を取り囲むほかの王室メンバーの芝居もまた素晴らしい。複数の魅力的なキャラクターを列挙する英Guardian紙は、マーガレット王女(ヘレナ・ボナム=カーター)の高飛車な振る舞いなど、目が離せない登場人物を紹介している。シーズン中盤からはコミカルな笑いを振りまくアン王女(エリン・ドハーティ)も登場し、緊張感が目立つシーンの合間にほどよい緩和を加えている。

20191204-crown9-dramanavi-1-00-view.jpg

これまでで最高のシーズン

シーズンを更新するにつれ当初の勢いを失う作品も多いが、『ザ・クラウン』最新章はこれまでで最高のシーズンだとLos Angeles Times紙に言わしめている。女王とフィリップ王配の関係は一通り安定したものの、さまざまな人物の間で巻き起こる王宮内での対立は尽きることがない。フィリップ王配の動きも先が読めず、ストーリーはさらなる盛り上がりを見せる。

20191204-crown1-dramanavi-1-00-view.jpg

シーズン2までを観た方は、懐かしい人物との再会に思わず頬が緩むことになるだろう。過去のキャラクターの再登場をGuardian紙は歓迎している。さらに、主役級人物でさえも、その人物像をゆっくりと変化させ、時代の移り変わりを演出する。エリザベス2世は女王としての貫禄を増し、イギリスの統治者にふさわしい姿を見せるようになった。先に述べたように、王族の混乱の火種であるマーガレット王女も再登場し、一段と見どころを増したシーズンとなる。

20191204-crown8-dramanavi-1-00-view.jpg

エリザベス2世女王とイギリス王室の歴史を紐解く『ザ・クラウン』シーズン3は、Netflixで全3シーズンを配信中。シーズン4は現在製作中で2020年の配信を予定している。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ザ・クラウン』シーズン1 ©Alex Bailey/Netflix/ 『ザ・クラウン』シーズン3 ©Sophie Mutevelian/Netflix/Sophie Mutevelian / Netflix