英ITVにて1989年から2013年まで続き、原作者アガサ・クリスティーが描いたポワロの冒険70作のすべてを映像化し世界中で大ヒットした『名探偵ポワロ』。放送終了から7年、メインキャストたちがその後どうしているのかを、それまでの経歴もまとめてご紹介しよう。
目次
デヴィッド・スーシェ(エルキュール・ポワロ役)
まずは主人公エルキュール・ポワロ役のデヴィッド・スーシェ。1985年のTV映画で実はジャップ警部を演じたこともあった(その時のポワロ役はピーター・ユスチノフ)彼は『名探偵ポワロ』で一気に世界的な知名度を得ただけでなく、英国アカデミー賞候補にも。
他作品ではなるべく名探偵以外を演じていた?
しかし、他では異なる役を演じたいのか、名探偵役に起用されて以降は、中東のテロリストを演じた1996年の『エグゼクティブ・デシジョン』をはじめ、2003年の『セイブ・ザ・ワールド』、2017年の『アメリカン・アサシン』などアクション作品への出演が目立つ。2006年の『Dracula(原題)』では吸血鬼ハンターのヴァン・ヘルシングに扮した。
一方で、TVシリーズは『名探偵ポワロ』以外は日本未上陸作品が多いが、その中には犯罪ものもいくつかあり、1998年の映画『ダイヤルM』(『ダイヤルMを廻せ』のリメイク)や2002年のミニシリーズ『NCS Manhunt(原題)』で刑事を演じている。
舞台俳優というルーツ
ポワロ役でブレイクした後も、舞台俳優出身らしく文学作品に多数参加しており、2011年には、チャールズ・ディケンズの名作「大いなる遺産」のミニシリーズのほか、アーサー・ミラーの戯曲「みんな我が子」の映画化で『名探偵ポワロ』のオリヴァ夫人役で知られるゾーイ・ワナメイカーと再共演。翌年はウィリアム・シェイクスピアの戯曲のドラマ化『ホロウ・クラウン/嘆きの王冠』に出演した。
また、13シーズン続いた『名探偵ポワロ』の収録の合間を縫って舞台にも立ち続けた。『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』でダイアナ・リッグス(『ゲーム・オブ・スローンズ』)と夫婦役を演じ、アカデミー賞作品賞に輝いた映画『アマデウス』の舞台版でサリエリを演じ、オスカー・ワイルドの戯曲『真面目が肝心』にも姿を見せている。
70代でも俳優活動を継続中
70代になった今も俳優活動を続けており、近年は、2017年に長寿番組『ドクター・フー』初出演。2018年のミニシリーズ『プレス 事件と欲望の現場』でタブロイド紙の重役を演じたほか、2019年に始まったファンタジードラマ『ダーク・マテリアルズ/黄金の羅針盤』で声優を務めている。
俳優活動以外も大充実
プライベートでは、大英帝国勲章のオフィサーを2002年に、一つ上のランクのコマンダーを2011年に授与された。2013年に出版した自伝のタイトルは「Poirot and Me(ポワロと私)」。ヘイスティングス役のヒュー・フレイザーも学んだロンドンにある英国最古の演劇学校、LAMDA(London Academy of Music and Dramatic Art)の理事会メンバーを務めていた。
ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス役)
ポワロの相棒、軍人のヘイスティングスとして『名探偵ポワロ』でポワロに次ぐ出演話数(43)を誇り、同作オーディオブックのナレーションも担当しているヒュー・フレイザー。にもかかわらず、実は1994年から9作にわたってアクションドラマ『炎の英雄 シャープ』シリーズにも出演し続けていた。
様々な映画やコメディ作品にキャスティング
そのほかには、ハリソン・フォード主演映画『パトリオット・ゲーム』、ディズニー映画『101』といった大作映画にも参加。そしてサスペンスドラマ『切り裂きジャック』、『名探偵ポワロ』にも出演したマーティン・ショウ主演の刑事ドラマ『アダム・ダルグリッシュ警視 神学校の死』といった犯罪作品にも顔を出している。
また、ヘイスティングスとしてのコミカルな演技が買われたのか本人がコメディ好きなのか、コメディ作品へも頻繁に出演。ジョン・ハート主演のコメディドラマ『The Alan Clark Diaries(原題)』やマペットを使った風刺映画『Jackboots on Whitehall(原題)』で脇を固めていた。
現在は、『アラビアのロレンス』の主人公のその後を描く映画『Lawrence: After Arabia(原題)』が待機している。
溢れ出る創作意欲
俳優としてだけでなく、舞台演出家、作家としての顔も持ち、近年はロンドンの王立演劇学校(RADA)でシェイクスピアの権威としてオーディションの審査員や講師も務める。2007年には戯曲「ワーニャおじさん」のデヴィッド・マメット版の演出を手掛けた。
ポワロ役のデヴィッドより一つ年上の彼の創作意欲は衰えることがないようで、2015年からリナ・ウォーカーという女性を主人公にした犯罪スリラー小説シリーズを執筆。2018年までに4作を発表している。
フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部役)
ポワロと一緒に捜査に当たることが多く、ヘイスティングス不在時は代わりに相棒的な役割を務めることもあるジャップ警部役のフィリップ・ジャクソン。実はこれまでに出演した作品は160本以上に上る大ベテランでもある。
味のある名バイプレイヤー
主な活動先はドラマ界だが、映画界でも味のある脇役を好演。1996年の『ブラス!』と1998年の『リトル・ヴォイス』でユアン・マクレガーと、2011年には『マリリン 7日間の恋』でのちにポワロ俳優となるケネス・ブラナーと共演した。近年は『鑑定士と顔のない依頼人』でジュゼッペ・トルナトーレ、『ピータールー マンチェスターの悲劇』ではマイク・リーと、有名監督とも組んでいる。
ジャップ警部になる前から警官役に起用されたり犯罪ドラマに出演していたが、以降はそれがさらに加速。『刑事フォイル』『ミステリー in パラダイス』『バーナビー警部』『主任警部アラン・バンクス』『ニュー・トリックス ~退職デカの事件簿~』『シェイクスピア&ハサウェイの事件簿』といったシリアス&コメディ両方のミステリードラマでゲストを務めている。
名脇役として知られる彼は、1984年のa-haのヒット曲「Take Me On」のPVにもイラストという形で悪役で出演している。
ポーリン・モラン(ミス・レモン役)
ポワロと同じように几帳面で有能な秘書ミス・レモンを好演するポーリン・モラン。ヘイスティングス役のヒューも関わりのあるRADAで演技を学んだ彼女だが、40年以上前から演じている割に出演作は20本足らずと多くはない。というのも、ポーリンはミス・レモン役に決まる前から別の仕事も持っているからで、1987年からプロの占星術師として働いている。『名探偵ポワロ』でミス・レモンが占いの腕を披露するエピソードがあるが、これはポーリンの特技を生かしたもののようだ。
俳優としてのキャリアは控えめ
そんな限られたキャリアの中でも、ジョニー・リー・ミラー(『エレメンタリー』)が文豪バイロンを演じたTV映画『Byron(原題)』、チャールズ・ディケンズの「ニコラス・ニクルビー」のミニシリーズ、クレオパトラが主人公の歴史ドラマ『The Cleopatras(原題)』などに出演。女優としては2014年にアラン・リックマン(『ハリー・ポッター』)が監督した映画『ヴェルサイユの宮廷庭師』が最後の出演作となっている。
まさかのバンドメンバーに?
また、1960年代半ばから5年ほど、女性バンドでベースとボーカルを担当していたという顔も。ミス・レモンも秘書としての業務だけでなくポワロのために様々な調査をしたり、時には潜入捜査っぽいこともしているが、多才なのはポーリンも同じだったようだ。
多彩で魅力的な『名探偵ポワロ』のキャストたち
いかがだっただろうか。今もなお色褪せることのない『名探偵ポワロ』に再度注目するのも良いかもしれない。
(海外ドラマNAVI)
Photo:『名探偵ポワロ』© ITV PLC