クリフハンガーで打ち切りが多い印象も? Netflixシリーズ更新率は実際どの程度?

先日開催された第73回エミー賞でも『ザ・クラウン』や『クイーンズ・ギャンビット』などで数多くを受賞したNetflix。賞レースでも常連となった同社だが、シーズン1で打ち切りになる作品も多い。その理由をTV Insiderが報じている。

先週もイスラエルとアメリカ合作クライムアクション『ヒット&ラン ―追跡―』がシーズン1にてキャンセルに。今年の夏には『The Pit Crew ザ・ピットクルー』『カントリー・コンフォート ~家族の歌~』『ベイカー街探偵団』『ジュピターズ・レガシー』『グランド・アーミー』『パパ、恥ずかしいからやめて!』といった新シリーズが次々と打ち切られていた。このNetflixの交代劇に視聴者からは「Netflixは素晴らしい作品を作っているが、1シーズンで打ち切ってしまう」と不満の声も出ている。

もちろん、その批判を把握しているNetflixだが、共同CEOであるテッド・サランドスは昨年11月に開催されたPaley International Council Summitにおいて、グローバルTV部門の責任者であるベラ・バジャリアと共に"Netflixが過度にキャンセルをしている"という主張に反論。

バジャリアは、Netflixの更新・キャンセル率は同社の競合他社と同様であると主張。「第2シーズン以降を見ると、当社の更新率は67パーセントで、これは業界標準です」と述べており、実際、この更新率は地上波ネットワーク放送局(NBC、ABC、CBSなど)よりも良い数字なのだ。米Hollywood Reporterの調査によると、2009年から2019年までの10シーズンで、ネットワーク局の新作の打ち切り率は58.2パーセントだった。

また、メディアで報道されるNetflix作品のキャンセルの数に対して、ニュースにならない更新数の方がはるかに多いと述べている。「Netflixは新作を大量に製作しているため、シーズン1でのキャンセルが多いように感じることがありますが、更新率を見るととても高い数値です。常にリミテッド・シリーズに最適な作品と、複数シーズンにわたって放送される作品が混在しているのです」

さらに、バジャリアの説明によると、他のプラットフォームやネットワーク局では、新作のパイロットエピソードを発注しても、そのストーリーが視聴者のテレビに届く前に、第一話の段階で多くのプロジェクトがお蔵入りしてしまうと述べている。「私たちは、パイロット版を製作して、その後を決めるのではなく最初からシリーズとして発注するので、結果的にシーズン1のキャンセルが多くなることがあります。それでも、はじめから1シーズンを製作する方が脚本家たちのアイデアをよりクリエイティブに表現できると思っているので、これが私たちにとって正しいモデルだと思っています」と続けた。

サランドスは、テレビ業界での成功を再定義し、歴史的にテレビシリーズが放送局向けに販売されるための境界線であった100話までという基準から脱却することができると主張した。

「100話というものがゴールであり、100話に到達しないものや4シーズンまでのものは成功したとは言えませんでした。一方で、多くの作品は、あるがままの姿で成功を収めることができ、1シーズンでも5シーズンでもそのストーリーをきちんと語ることができると思います。昔のやり方と比べて評価されるからこそ、これだけ話題になるのだと思います」と過去の基準と比較した。

とはいえ、シーズン2に更新される作品でさえも、3シーズンまで継続することはなかなか難しいようだ。(IGNは最近、Netflixのオリジナル作品について「1回で終わるか、2回で終わるかのどちらかだ」と述べている)

英Wired UKは『オルタード・カーボン』『センス8』『The OA』などの作品がそのような運命をたどった述べ、シーズン2をもってキャンセルされる傾向について深く考察。同誌が指摘するように、Netflixは視聴率に関して公にしていないことで知られているが、元Netflixオリジナルコンテンツ担当のシンディ・ホランドは2018年に記者団に対し、シリーズが更新されるには視聴率が「シリーズのコストを正当化」しなければならないと語っている。

Netflixは、2019年に英国議会の通信・デジタル委員会に提出した書簡の中で、視聴率の測定基準の一部を説明している。それによると、プラットフォーム上で最初の7日間と最初の28日間で、それぞれ映画の2分や1エピソードを視聴した世帯「スターター」と、映画やテレビシーズンの90パーセントを視聴した世帯の「コンプリート」の数を集計しているという。

しかし、同社のビジネス的な計算は先見性のないものかもしれない。特に、スタートはそれほどでもない評価だったがシーズンが進んでいくうちに人気が出た作品を考えるとなおさらだ。1シーズンで終わる多くの作品が、そのように後から人気が出るような勢いを生み出せたかどうかは結局のところずっとわからないからだ。(海外ドラマNAVI)

Photo:Netflixオリジナルシリーズ『ジュピターズ・レガシー』『サイテー! ハイスクール』『ノット・オーケー』『Away ―遠く離れて―』は独占配信中