第1話の放送から15年。『ゲーム・オブ・スローンズ』は、世界的な社会現象から最終章の失速、そしてスピンオフによる鮮やかな復活劇まで、波乱万丈の軌道を描いてきた。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』などの成功により、再びフランチャイズのマスタークラスに返り咲いたが、その前途には巨大な挑戦が待ち受けている。かつて無敵を誇ったMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)でさえ「観客の疲弊」という荒波に揉まれる今、果たしてウェスタロスの物語はいかにして次の15年を生き残るのか。その生存戦略を紐解いていく。
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MCUの失敗に学ぶ:『ゲーム・オブ・スローンズ』スピンオフの在り方
ジョージ・R・R・マーティンによる小説を原作とした本作は、シーズン1のカルト的ヒットから始まり、シーズン3までには世界的な社会現象へと上り詰めた。見事に作り込まれた物語、重厚かつ巧みに演じられたキャラクターたち、そして驚異的なプロダクション・バリューは、世界中から称賛を浴びたのである。最終シーズンで評価を落とすという不測の事態に見舞われながらも、高く評価されたスピンオフ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』と『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』によって、ファン層の信頼を取り戻したのだ。
しかし、2020年代は、確立された映画・テレビのフランチャイズにとって必ずしも追い風ではない。例えば、かつては無敵に見えたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)でさえ、近年は苦戦を強いられている。2023年の『マーベルズ』が歴史的な低収益に終わったように、興行収入の減少や、広く知られるようになった観客の疲弊という課題に直面しているのだ。これは他のフランチャイズにとっても看過できない事態である。
では、いかにして『ゲーム・オブ・スローンズ』は次の15年を生き残っていくのだろうか? 現状、シリーズは正しい軌道に乗っていると言える。MCUにおける「疲弊」の主な要因は、新作を理解するために膨大な過去作という「宿題」をこなさなければならないという重圧にあった。対照的に、『ゲーム・オブ・スローンズ』のスピンオフは完全に逆の方向を目指している。
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』などの作品は、本編の前日譚として機能しながらも、単体で自立した物語となっている。ジョージの描く世界をすべて熟知していればより深い体験ができるのは確かだが、それは決して視聴の必須条件ではない。全く新しいキャスト、ショーランナー、そしてトーンを採用することで、視聴者に同じことの繰り返しを感じさせない工夫が凝らされているのだ。
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アニメーションと舞台への進出――表現の限界を突破する新機軸
特に注目すべきは、中世バディ・コメディの様相を呈する『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』のような新機軸だ。こうした多様なアプローチが、フランチャイズに新たな血を注いでいる。さらに、近年爆発的な人気を誇る「大人向けアニメーション」の分野も視野に入っている。
Z世代の約半数がアニメを視聴しているという現在のマーケットにおいて、『インビンシブル ~無敵のヒーロー~』や『ハズビン・ホテルへようこそ』といった作品が大成功を収めていることや『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のアニメーションスピンオフ『ストレンジャー・シングス: 1985年の冒険』も誕生するという事実は無視できない。ジョージも2024年に、予算の懸念から実写化を断念した『9 Voyages(原題)』をアニメーションとして開発中であることを明かしている。アニメーションは、実写では不可能なスケールの物語を語り、より若い層へリーチするための絶好の機会となるだろう。
また、画面を飛び出した展開も始まっている。舞台演劇『The Mad King(原題)』が、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)で開幕する予定だ。舞台という媒体は、映画やテレビとは異なる没入感を提供する。ブロードウェイで記録を塗り替えた『ストレンジャー・シングス 始まりの影』や、世界的な成功を収めた『ハリー・ポッターと呪いの子』のように、舞台化はフランチャイズを若返らせる強力なツールとなる。RSCが手掛けることで、物語はよりシェイクスピア的な重厚さを増し、究極の劇場体験を生み出すに違いない。
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供給過多を回避せよ
一方で、警戒すべき点も存在する。スーパーヒーロー映画の衰退が示した教訓は、フランチャイズには時間をおくことが必要だということだ。ディズニーがマーベルの制作本数を制限したように、供給過多はコンテンツにとっての死の接吻に他ならない。
HBOのCEOであるケイシー・ブロイスは、開発中のプロジェクトがすべて実現するわけではないと強調している。「開発プロセスこそが重要であり、制作を確定させることなく多くの可能性を試す能力が必要だ」と語る。粗製濫造を避け、質の高い作品を厳選する姿勢こそが、ファンの期待を維持する唯一の道である。
そして最も重要な禁じ手がある。それは、オリジナルのキャラクターを安易に画面に復帰させないことだ。かつて検討されていたジョン・スノウの続編シリーズはお蔵入りとなり、現在はアリア・スタークのスピンオフの噂も流れている。しかし、オリジナルキャストが再演する続編や前日譚に手を染めれば、それは「必死の金儲け」と見なされ、語るべき新しい物語が尽きたという敗北宣言になりかねない。
幸いにも、ジョージの無限の想像力によって、ウェスタロスの世界には語られるべき物語がまだ山ほど残されている。この先、数十年を生き残れるかどうかは、HBOがいかに賢明な選択をし、いかに優れた物語を語り続けるかにかかっている。
『ゲーム・オブ・スローンズ』全シーズン、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』、『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』はU-NEXTで独占配信中。(海外ドラマNAVI)
参考元:Radio Times






