米アニメシリーズ史上最長寿の記録を誇る人気番組『ザ・シンプソンズ』。その900話近いエピソード群の中でも、ミステリー好きであれば絶対に外せないと語り継がれる“伝説の神回”が存在する。米CBRも取り上げた、その緻密な構成は、まさに「天才的」と称されるべき完成度を誇る。
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ミステリー好き必見!『ザ・シンプソンズ』が誇る伝説の神回とは?
米アニメシリーズ史上最長寿の記録を誇る人気番組『ザ・シンプソ …
ミステリーファン必見の「伝説の神回」
そのエピソードは、シーズン6の第25話「誰がバーンズを撃ったか?(前編)」である。数多の名作を生み出してきた本番組において、この回は「最も巧妙に作られたミステリー」として群を抜き、今なお熱狂的なファンを生み出し続けている。
物語は、ごく日常的なシーンから一転、スケールの大きな事件へと発展する。
スプリングフィールド小学校で、スキナー校長がネズミの遺骸を発見する。用務員のウィリーがその遺骸を埋めるために地面を掘り進めたところ、なんと油田が発見されるという展開だ。学校は突然大金を手に入れ、街には希望の空気が広がる。しかし、この幸せな状況をぶち壊すのが、スプリングフィールド随一の権力者であるバーンズである。
バーンズはその利益を奪おうと画策。巧妙な手口で油田を横取りし、ついには自分の会社で強引な掘削を行い、街中に被害を振りまくという暴挙に出る。油田を奪われた学校や、バーの閉店に追い込まれたモーなど、その被害は甚大だ。結果として、ほぼ町中の住民がバーンズに激しい恨みを抱くことになる。
王道ミステリー作品の定石通り、被害者であるバーンズに対する「動機を持つ複数の容疑者」が、違和感なく自然な流れで揃っていく展開は圧巻だ。
衝撃のラスト!完璧なクリフハンガーが伝説を生んだ
街の人々の怒りが頂点に達したのは、バーンズがさらに街のエネルギー消費を増やすため、太陽を遮断する計画を実行に移した時だ。彼の忠実な秘書であったスミザーズでさえ、バーンズを見放すほど、街の人々の怒りは限界に達する。
タウンホールでの集会では、住民全員が「殺意」を口にするほど憎悪を募らせ、ついにバーンズは銃撃されて崩れ落ちてしまう。容疑者は街の住人全員という、完璧なクリフハンガーをもって、前編は幕を閉じる。
巧みな「伏線」と「構成」が生んだアガサ・クリスティ級の緻密さ
このエピソードが30年経った今でも「天才的」「神回」と語り継がれる最大の理由は、そのストーリーの構成と伏線の巧みさにある。
アガサ・クリスティ作品のように、動機と機会を持つ「複数の容疑者」をきわめて丁寧に配置し、視聴者が公平に推理できるだけのヒントが散りばめられている点が秀逸なのだ。バーンズが犯人を認識したという描写や、現場から消えた銃など、全てが後の真相へつながる完璧な伏線として機能している。
さらに、シリーズ特有の映画・ドラマのパロディも健在であり、『007/ゴールドフィンガー』やミュージカル映画『雨に唄えば』へのオマージュがさりげなく盛り込まれている。ミステリーの緊張感とコメディの軽妙さが実に見事に共存しているのだ。
後編では、海外ドラマ『ツイン・ピークス』など、犯罪映画のパロディがさらに全開となるが、前編の緻密な構築力こそが伝説のエピソードとして語り継がれる最大の理由である。「誰がバーンズを撃ったか?(前編)」は、その構成の妙により、ミステリー作品としての一級の完成度を誇ると言えるだろう。
『ザ・シンプソンズ』の神回を含むシーズン1~36はDisney+(ディズニープラス)で配信中。(海外ドラマNAVI)




