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【インタビュー】『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』笠松将が明かす、国境を越える活動の原点

2025年10月10日 ※本ページにはアフィリエイト広告が含まれます

『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』兼松将

2014年のブッカー賞を受賞したリチャード・フラナガンによる傑作小説を映像化したヒューマンドラマ『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』が、U-NEXTで全話一挙独占配信される。太平洋戦争下、日本軍の捕虜となったオーストラリア人軍医ドリゴ・エヴァンスの半生を、戦前、戦中、戦後という3つの時代にわたって描いた本作。人間の尊厳、記憶、愛と赦しを深く問いかける重厚な物語は、国際的な制作チームによって映像化された。そんな本作で、国内外で活躍の場を広げる俳優、笠松将が物語の鍵を握る難役に挑んでいる。過酷な運命に翻弄されながらも、真摯に役と向き合った彼の心境を伺った。

『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』(原題:The Narrow Road to the Deep North)
『メンタリスト』サイモン・ベイカー出演『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』 10月10日(金)より独占配信

2014年に英国ブッカー賞を受賞したリチャード・フラナガンの …

『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』あらすじ

物語の舞台は1943年、太平洋戦争下の泰緬鉄道。オーストラリア軍の軍医ドリゴ・エヴァンスは、日本軍の捕虜として強制労働を強いられる。死と隣り合わせの地獄のような日々の中、彼を支えていたのは、故郷に残してきた愛する人との記憶だった。

本作は、戦争の残酷さと若き日の情熱を対比させながら、若き日の秘めた愛、捕虜仲間との絆、そして戦後に連れ添う妻との間に芽生える感情という、3つの異なる愛の形を描く。一人の男の人生を通して、希望と人間性の本質に迫る重厚なヒューマンドラマだ。

葛藤を抱える日本軍将校を演じる笠松将

笠松将が演じるのは、捕虜収容所でドリゴたちと対峙するナカムラ少佐。

命令と個人の信念の間で葛藤を抱えるという、非常に難しい役どころに挑んでいる。笠松は、この役の複雑な内面を深く掘り下げ、リアルな人間像を表現。日本語吹替版でも自身の声で吹替を担当し、実写と声の両方で役と向き合った。

『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』

ーーー 本作への出演のきっかけや、オーディションの経緯についてお聞かせいただけますか?

はい。本作のプロデューサーが、以前に僕が出演した作品を観てくださったらしく、それがきっかけで連絡をいただきました。オーディションというよりは、監督の目の前でセリフを読んで、出演が決まったという流れです。

ただ、その時点ではスケジュールが厳しかったんです。本当はもっと早く撮影に参加してほしいと言われていたのですが、僕の別の作品の撮影が終わるのが1月だったので、それに合わせて1月末からまとめて撮影していただく形になりました。スケジュールを調整してまで任せていただけるということがさらに光栄でした。

ーーー 役が決まったと知らされた時の感想を覚えていらっしゃいますか?

もちろん、人によって考え方は違うと思いますが、オーディションには「受かるために行く」という気持ちで臨んでいるので、落ちる方がしんどいというか。今回はプロデューサーが僕に演じてほしいと言ってくれていたので、あとは監督に認めてもらうだけという状況でした。なので、役が決まった時は、まず「ああ、よかった」とほっとした気持ちでした。

ただ、その後で、この役や作品に参加することの重みをすごく感じました。単に作品が決まったというだけでなく、これは大変なことなんだろうなと。撮影前は、そうした葛藤もありましたね。

ーーー 俳優として、そんな風に「落ちない」という強い気持ちをお持ちなのは素晴らしいですね。

ありがとうございます。僕は「落ちるかもしれない」と思うくらいなら、行かない方がいいと思っています。もったいないじゃないですか。そんな中途半端な気持ちではいられない。やるならやる、やらないならやらない、そう決めています。

ーーー 本作の原作は世界的にも有名な小説ですが、元々ご存知でしたか?それとも出演が決まってから読まれましたか?

オーディションの話をいただいて、調べてみたら日本でも翻訳版が出版されていたので、それを読んでから臨みました。

ーーー 読んだ時の感想はいかがでしたか?

シンプルに「良い作品だな」と思いました。いろんな人たちの心境が多角的に描かれていて、「どうしようもないな」と感じる部分が多かったですね。僕が演じた役についても、それぞれの立場で「仕方ない」と思える部分が多く、どうしたらよかったんだろうと考えさせられました。

ーーー 役作りに関してですが、捕虜役の俳優さんたちはかなり減量されたと伺いました。笠松さんも体重を落とされたのでしょうか?

本作では捕虜役の俳優と対比させる必要があったので、監督と打ち合わせを経て意図的に体重制限はしていません。ただ、役柄の心境として、徐々に病に侵されていくという設定だったので、それに合わせて体重を落とすことはしました。飢えで痩せていくのとはまた違うんです。見た目は同じように見えるかもしれませんが、意味合いは全く異なります。撮影序盤は普通にしていたのですが、徐々に体調が悪くなっていくというアプローチで挑みました。

ーーー 第2話の、大佐が斬首するシーンは非常に緊張感があったと思います。実際の現場はどのような雰囲気でしたか?

正直に言うと、個人的にはその場の空気についていけないことも多かったです。でも、皆で大変な状況に身を置くことで、一時的にものすごいパワーが生まれるという感覚も、今回初めて経験しました。ああいうシーンは、一言では言い表せない難しさがありました。ただ、ポジティブな意味だけではないですが、すごいパワーに満ちていましたね。

ーーー 精神的にもきつかったと思いますが、撮影中に意識したことはありますか?

現場の「当たり前」を、自分の中に入れないようにしていました。それが良いことか悪いことかは分かりませんが、僕はそういうのが好きではないので、やりたくないことはやらないと決めていました。

『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』

ーーー ドリゴ役のジェイコブ・エロルディさんとの共演はいかがでしたか?

まず、とても良い人です。そして、俳優としての能力も非常に高い。特にずば抜けているのが「被写体力」です。顔が綺麗というだけでなく、圧倒的に絵として映える。寄っても引いても絵になるので、監督の選択肢を広げることができるんです。

演技に対する探求心もものすごく、他の人の芝居もずっと見ていたりします。ある日、メイク中に「どうやったらそんなお芝居ができるんだ?」と聞かれて。最初は恐縮しましたが、その後に彼が演技の本を読んでいたり、人の芝居を真剣に観察しているのを見て、なんて謙虚で探求心があるんだと感動しました。

ーーー 今後の俳優としての挑戦や目標があれば教えてください。

特にないかもしれません。このまま誰にも気づかれずに静かにやっていきたい気持ちもありますし。

今は「誰にもバレずに、面白いものをやっていきたい」というのが一番の願望です。注目されすぎると、生活しづらくなってしまう。でも、良い作品には出たいんです。自分の魂を削って作品を作ることは好きですが、それを見られることや評価されることはまた別の話だと考えています。

ーーー 最後に、好きな海外ドラマや俳優を教えてください。

好きなドラマはたくさんありますが、最近だと『THE LAST OF US』が好きですね。制作の裏側まで見せてもらったのですが、映像や音へのこだわりがすごくて、とても面白かったです。

『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』配信情報

『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』(原題:The Narrow Road to the Deep North)

【配信開始日時】U-NEXTにて10月10日(金)全5話一挙独占配信(字幕・吹替)
【配信形態】見放題/4K対応
【視聴ページ】『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』

(海外ドラマNAVI/編集部AKN)

Photo:『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』© 2024 Curio Pictures Pty Ltd and Screen Australia.

  • この記事を書いた人

AKN

海外ドラマNAVI編集部。元LA在住、海ドラ歴25年以上で私生活では二人の子どもを育てるワーママ。女性が活躍するシリーズやLGBTQ作品、タブーをうまく笑いに変えてしまうシニカルなコメディが大好物。アクションより、日常を切り取ったような作品が好みなので社会派ドキュメンタリーや恋愛リアリティショーも好き。

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