ドイツ・ベルリンで開催された「Seriesly Berlin」で、山下智久主演で世界的なヒットを記録していることで知られる『神の雫/Drops of God』の制作秘話が明かされた。漫画原作を実写化するにあたり、企画から立ち上げまでさまざまな困難を乗り越えてきた本作。制作会社ダイナミック・テレビジョン2のマネージングパートナーであるクラウス・ジマーマンが、伝説的なコミックをいかにして世界的な成功へと導いたのかを振り返った。
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『神の雫/Drops of God』主演の山下智久、ファンの命を救う?
日本の人気漫画「神の雫」をフランスで国際ドラマとして実写化し …
ワインを嫌い、フランス語も話せない監督
『神の雫/Drops of God』は、日本の漫画を原作にフランスの高級ワイン業界を舞台とした異色のシリーズ。制作は、世界随一のグローバルテレビジョンスタジオ、レジェンダリー・テレビジョン1(アメリカ)と高品質なテレビ番組を世界中の視聴者に届ける独立系製作配給会社のダイナミック・テレビジョン2(アメリカ)、フランス国営放送局グループのフランス・テレヴィジオン、そしてHulu Japanの4社が共同製作で手掛けている。
ジマーマンによると、当初はNetflixなどに企画を持ち込んでも「誰も欲しがらなかった」という。「正直なところ、脚本には確固たるビジョンが必要だった。これは誰の条件にも当てはまらない、まったく新しいタイプの作品だったからだ」と語る。
企画を売り込む上で、クリエイターコミュニティもまた、この異色作に戸惑いを隠さなかった。その象徴的なエピソードとして、ジマーマンは、『アブセンシア ~FBIの疑心~』などを手掛けたイスラエル人のオデッド・ラスキン監督を起用したが、「彼を本作の監督に起用したのは、完全に型破りな選択だった」と当時を振り返った。
「私はフランス人監督にこだわっていなかった。フランス人向けのローカルドラマではない、何か違うものを作りたかったからだ」とジマーマンは語る。ラスキンも「ワインは嫌いだし、フランス語も話せないのに、なぜ私にオファーしたんですか?」と率直な疑問を投げかけたという。
だが、脚本を読み終えたラスキンの見方は一変。物語の詩的で繊細な面と同時に、強烈な緊張感が漂うサスペンス性を作品に内包していることに気づいたのだ。
パイロット版が世界を変えた
そして、パイロット版が制作されると、状況は一転する。配信会社が再び興味を示し、フランスの放送局も参加を表明した。Appleが獲得する際には、複数の競合入札があったことが伝えられている。
「ラスキンの撮影手法とリズムによって、詩的なワインの世界を舞台にしたスリラー風のドラマに仕上がった。パイロット版を配信会社に送り始めた瞬間、Appleが強く反応し、『これは自分たち向けの作品だ』と即決した」とジマーマンは振り返る。
Appleは、2024年5月にシーズン2の制作を発表。ジマーマンによると、シーズン2の配信権は地域ごとに契約を結ぶことも可能だったが、主要な配信元であるAppleが新シーズンを望むと、他の配信会社にも確認を取る必要があったという。Appleは全世界での配信の優先権を持っていたため、その決定は容易だった。しかし、他の配信元は、それぞれの地域での配信契約が成立するかどうかを見極める必要があったのだ。
快挙!国際エミー賞初ノミネートにして初受賞の栄冠
さらに、本作は第52回国際エミー賞の「連続ドラマ部門」で見事、受賞を果たした。これはHulu Japanの作品として、また海外ドラマ初主演を務めた山下智久にとっても、国際エミー賞初ノミネートにして初受賞という快挙である。この受賞は日本国内だけでなく、フランスの「ル・モンド」紙が「最も権威あるドラマシリーズ賞を受賞した」と報じたほか、CNNニュース、米Variety、The Hollywood Reporterなど、複数の海外メディアでも大きく取り上げられ、世界中で注目を集め続けている。
『神の雫/Drops of God』シーズン2は、2026年にApple TV+で配信される予定だ。シーズン1はHulu、Apple TV+で配信中。(海外ドラマnavi)
参考元:Deadline