印象的だったのはキャリーとの大喧嘩！『AND JUST LIKE THAT…』シーズン3 シンシア・ニクソン（ミランダ・ホッブス役）直撃インタビュー

Maxオリジナルドラマ『AND JUST LIKE THAT… / セックス・アンド・ザ・シティ新章』シーズン3が、5月30日（金）より本国アメリカと同時でU-NEXTにて独占配信中。それに合わせてキャスト、スタッフの直撃インタビューを6回に分けてお届け！　2回目の今回は、ミランダ・ホッブス役のシンシア・ニクソン。大きな変化を迎えてきたミランダの旅路について、裏話を交えて解説してくれた。

「年を重ねるごとに、ミランダの率直さから自信をもらった」

――ミランダは『AND JUST LIKE THAT』の中で最も変化してきたキャラクターだと思います。スティーヴと別れ、チェと恋に落ち、ロサンゼルスに移り、仕事も新たに始めました。かつてのミランダは保守的なタイプでしたが、彼女のこうした変化についてどう思われますか？

「ミランダが私たちの目の前で大きく進化したことは確かね。とはいえ、オリジナルの『SEX AND THE CITY』が終わり、『AND JUST LIKE THAT』が始まるまでには様々な出来事があった。ドナルド・トランプの最初の大統領当選は多くのアメリカ人、特に女性にとって大きな目覚めのきっかけになった。ミランダ自身も、トランプ大統領の最初の任期中にムスリム渡航禁止令が出された時、ジョン・F・ケネディ空港に弁護士たちが大勢集まり、入国を止められたムスリムの人たちを助けようとしているのをテレビで見て、その活動の一員になる。それがきっかけで、彼女は企業弁護士として積み上げてきたキャリア以上のことが自分にはできると気づくの。世界が炎に包まれ、企業がその問題の一因になっているような時代に、解決の一部になりたいと思う。それが『AND JUST LIKE THAT』が始まるよりも前に起こったことよ」

「あと、コロナ禍の間にミランダはかなりお酒を飲むようになった上、結婚生活が停滞し、あまり幸せを感じられなくなっていた。そこから大きな変化が起こっていくの」

「私たちの番組が素晴らしいのは、50代の女性たちを描いていることね。しかも、LTW（リサ・トッド・ウェクスリー）やキャリー、シーマといった成功したキャリア女性が登場するの。現実世界にもあるように、彼女たちは人生の後半でも成功している。一方、ミランダのように一つのキャリアでずっとやってきたけど、それを止めて新しい道に進むには、すぐ動き出さないと時間が足りなくなるという人もいる」

――ミランダのミームにより、インターネットの危うい一面が浮き彫りになったと思います。SNSでバズることの危険性について、あなたはどう思われますか？

「あのシーンには正直、笑ったわ。あんなに笑ったのは久しぶりよ。ソーシャルメディアとインターネットには賛否両論があふれていて、多くの人が抱える恐れの象徴だと思う。私はSNSが得意なわけではないし、あまり力を入れてもいない。でも、ボットやヘイターが寄ってこない限り、善の力になることもある。特に若者に向けて呼びかけたい時、気候変動などに対する社会運動を広めたい時には素晴らしいツールよ。メディアが進化して情報のサイロ化が進む中、主流メディアが取り上げない情報源が存在するには価値があると思うわ」

――ミランダを長年演じる中で、かつての彼女の選択を疑問に思ったり、逆に共感できたりすることはありますか？

「ミランダを演じ始めた頃の私は、彼女とあまり共通点がなかった。どちらも頭脳に自信があり、キャリア志向という点は似ていたけど、それ以外はまったく違ったの。私には長期的な関係を築いているパートナーと子どもがいて、とても家庭的なのに対し、ミランダは仕事に没頭しながら多くの男性と付き合っていた。結婚したり子どもを持つことは、彼女にとって縁のないものだったの。でもスティーヴに出会ってから、そうした要素が少しずつ人生に入り込んでいった」

「また、ミランダは私がそれまで演じたことのないタイプのキャラクターだった。それまでは、自由奔放で繊細な、控えめな役を多く演じてきたから、彼女のように皮肉屋でウィットに富んだ役柄は新鮮だった。楽観的な性格の私はシニカルなミランダとは正反対。でも年を重ねるごとに、彼女の率直さから自信をもらったように思うわ」

「ミランダは口うるさくて説教くさい、とメディアに評されることもあるけど、彼女がかつて語っていたことの多くが今では文化の中心的な考え方、常識とされているのよ。ミランダは先駆者だったの。オリジナルでも『AND JUST LIKE THAT』でも何度も失敗をする彼女は“壊して進むタイプ”。間違いながらも正しい道を見つけようとする。最終的には必ず良い場所に辿り着くから、同じ方向についていくのが得策よ」

――ミランダは中年期に差しかかって自分のセクシュアリティを受け入れたわけですが、今最も苦しんでいることは何だと思われますか？

「彼女は大きなキャリア変更をしたけど、その面では軌道に乗ってきていると思う。今はヒューマン・ライツ・ウォッチなる団体で働き、その活動をカメラの前で話すという新たな挑戦にも取り組んでいる」

「一方で、女性やノンバイナリーの人と恋愛したいと考えていて、これは彼女にとってはまったく新しい世界。まず相手の性別が違うし、ミランダは20年以上ぶりに恋愛市場に戻ってきた。さらには今の恋愛文化、例えばアプリを使った出会いや性的な価値観も異なる。でもやっぱり、このシリーズの本質は、キャラクターが恋愛している時に最もよく表れると思うわ」

「あとは、息子のブレイディが大学を辞めてしまったことで、ミランダは完全にパニックに陥っていると思う。仕事は順調、恋愛は苦戦中だけど方向性は見えている。でも息子に関しては、自分ではどうにもできないこと。彼の判断が間違っていると確信しているからこそ、苦しんでいるの」

――本作のテーマで、「これはまさに自分だ！」と感じたり、「取り上げられて嬉しい」と思ったりしたものはありますか？

「いくつかは私の人生に当てはまるし、当てはまらないものもあるわ。私の子どもたちは、ブレイディのように止めたくなるようなことをしたわけではないけど、子どもが成長するにつれて親にできることが限られてくるという点にはすごく共感するわね。私の長男サムは、今年の終わりに29歳になる。『SEX AND THE CITY』のパイロット版を撮影していた時の彼は生後8ヵ月だったから、このシリーズがどれだけ長く続いているかを彼の年齢で実感するの。そして次男は先週大学を卒業し、14歳の三男は秋に高校に入学する。だから、子どものことを心配するというテーマには、とても共感できる。子どもが大きくなるほど、親としてできることは少なくなっていく。アドバイスを求められた時にだけ助言できるけど、それ以上のことはもうできなくなるの」

「そして50代ということは、もしも子育てをしていたなら、多くの時間を家庭に捧げてきたということ。今は子どもが成長して、ようやく自分に戻れる時期がやってくる。それはまるで第二の思春期のようなものだけど、より賢くなっていて“自分が本当に何をしたいのか？”“どんな人生を送りたいのか？”が考えられる時期だと思う。だからこそ、この時期を最大限に活かすべき。もう人生の折り返し地点を過ぎているのだから。非常に豊かな時間であるべきだし、そうするためには自分が幸せであること、やりたいことをやっていることが重要。もしもずっとやりたいと思っていることをまだできていないなら、何を待っているの？と自分に問いかけるべきなの」

――ミランダが本気で愛を追い求めようと努力する姿に感銘を受けました。ミランダの感情的な旅路の中で、演じるのが最も難しかった部分はどこですか？

「俳優としては感情的に濃いシーンほど演じ甲斐があるものだから、“難しい”よりも“刺激的”と表現すべきかもしれないけど、彼女が結婚生活で危機を迎える場面はとても興味深かった。もしも結婚相手が嫌な人だったり、意地悪だったりしたら、別れるのは簡単かもしれない。でもスティーヴのように優しくて、誠実で、愛情深い人が相手だと、別れるのがとても難しい。だからこそ、ミランダは自分がどれだけ不幸かを、自分自身にも隠していたんだと思う。それが彼女の混乱した行動――飲酒や不倫という形で噴き出したの」

「私が特に好きだったシーンの一つは、ミランダがキャリーのキッチンでチェとセックスする場面。ミランダはキャリーが手術後で眠っていると思ったけど、実は自分たちの様子に気づかれていて、後でミランダとキャリーは大喧嘩する。その時の、“何してるの？”“あれは何だったの？”というやり取りがすごく良かった。キャリーに問い詰められたミランダは、自分がどれだけ不幸だったか、どれだけ感情を押し殺してきたかを告白する。あれは本当に充実したシーンだったわ。行き詰まっていたミランダの感情を掘り起こしていく過程は、とてもやり甲斐があった」

「ミランダは、ロサンゼルスに行ったり、彼女らしくなってみたりと、いろいろな新しいことに挑戦してみた。それまでの彼女はずっと恋愛関係でも経済的にもリーダーシップを取る側だったけど、今回はフォロワーになってみた。あれは彼女には合っていなかったと思うけど、一度は試す価値があると思ったのね。すべてがとにかく極端だったけど、恐らく一番極端だったのは、彼女らしくなろうとしたこと。チェはノンバイナリーなだけでなく有名人でもある。つまり、ミランダは人気バンドの彼女になったようなものなの。ミランダがチェと付き合い始めた時、衣装チームは私にもっと中性的な服を着せようとしたけど、私がミランダはもっとフェミニンな方向に行くべきだと言ったの。これまでにないくらい肩を出して、肌も見せて、バンドの彼女スタイルにしたいってね」

『AND JUST LIKE THAT… / セックス・アンド・ザ・シティ新章』シーズン3はU-NEXTにて新たなエピソードが毎週金曜日10：00に到着する。シーズン1～2は独占配信中。

（海外ドラマNAVI）