『ヴェラ~信念の女警部~』を主演女優と原作者が語り尽くす!「このドラマは私たちにとって特別な場所」

英国ミステリー『ヴェラ~信念の女警部~』の最終章となるシーズン14が、ミステリーチャンネルにて5月10日(土)16:00より独占日本初放送! それに先駆けて、主人公のヴェラ・スタンホープを演じるブレンダ・ブレシンと、原作者アン・クリーヴスのインタビューをお届け。

「泣かないようにするのが精一杯」

――お二人が初めて会った時の印象を教えてください。

アン:私たちが最初に会ったのは……いつだったか覚えてる?

ブレンダ:2010年だったと思う。

アン:そう、2010年。『ヴェラ~信念の女警部~』(以下『ヴェラ』)の最初の台本の読み合わせの時だった。

ブレンダ:私はとても緊張していた。このドラマの舞台になるイングランド北東部のアクセントは独特でとても難しく、レッスンは受けていたけど、ちゃんと身についているのか分からなくて。それで読み合わせに行ったら、アンがいるじゃないの。“あぁ…”と思ったわ(笑)

アン:私も同じように緊張していた。テレビのことなんて全然分からなかったし、どうして私が読み合わせに呼ばれたのかも分からなかった。でも役者たちと一緒に座って楽しかったし、終わったらブレンダが挨拶に来てくれて、大スターの魅力に圧倒された(笑) 私自身も北東部の出身ではないので、アクセントは特に気にならなかったわ。

ブレンダ:ラッキーなことに、最初のエピソードには北東部出身の役者が多かったの。とても賢いやり方よね。それで彼らが私のアクセントの間違いを正しく直してくれた。手遅れになる前にね。

アン:ジョー・アシュワース役のデヴィッド・レオンが台本についていろいろ話してくれたのを覚えてる。

ブレンダ:スタンホープという名前の発音は正しくは「スタノプ」だと言う人もいたわね。

アン:「スタンホープ」が正しいの。だけどダラム州に同じ綴りの町があって、そっちは「スタノプ」と呼ぶのが正解。だから人によって好きに発音すればいいと思う(笑)

ヴェラ~信念の女警部~

――ブレンダ、長年続いたこのシリーズですが、シーズン14で終了することにした理由を教えてください。

ブレンダ:もう若くはないし(笑)、家族と一緒の時間が欲しかった。(撮影で忙しくて)14年間も夏を満喫してないことに気づいて、ちょっと夏が恋しくなって。でも、今はもう『ヴェラ』のファミリーが恋しくて会いたいと思ってる。いつもだったら、今の時期は『ヴェラ』の翌シーズンのアイデアを出す頃なんだけど、今年はもうそれがなくて寂しいわ。

アン:このドラマは私たちにとって特別な場所でもあるの。劇中に登場する北東部って、イングランドの中でも少し寂れた地域だけど、このドラマはこの地の美しさやこの地に生きるキャラクターたちの強さを称えるものだから。

――ブレンダは降板したことを後悔しているみたいですが。

ブレンダ:6ヵ月前に(最終シーズンの)撮影が終わったの。毎日最低でも一日16時間の撮影をするから、とてもハードワークで終わるとグッタリ。例えば、いくら美味しい料理でもお腹いっぱいになったら、デザートを出されても要らないって気になるでしょう(笑) でもすぐにまたお腹が空く。1週間もすると、さあメニューを見てみましょうかという感じで(笑) この先、そういう気持ちになって後悔するかもしれないけど、今はこの状況に満足しているわ。

ヴェラ~信念の女警部~

――『ヴェラ』を日本でいち早く放送しているミステリーチャンネルで実施した英国ミステリードラマの視聴者投票では、『ヴェラ』が2年で連続1位になりました。視聴者からも作品愛を感じるメッセージをたくさんいただいています。この作品が日本でも大変愛されているのはなぜだと思われますか?

ブレンダ:それは素晴らしいことね! ヴェラはよくいる男性の刑事ではないし、キャットウォーク(ランウェイ)から飛び出してきたようなタイプの女性でもなく、より共感できる存在だからだと思う。もしヴェラが刑事でなかったら、その辺の通りを普通に歩いているでしょうね。

――視聴者からのコメントで最も多いのがヴェラの人間性に関するコメントで、「大好き」「上司にしたい」という声が多いです。そのことについてどう思われますか?

ブレンダ:ヴェラは人を馬鹿にしたりしないし、人を理解しようとしている。そして誰に対しても公平。恋愛対象に依存することもないの。

アン:あらゆる世代の女性が、強い女性を見るのが好きなんだと思う。ヴェラは捜査チームを統率し、おしゃれをして着飾る必要もなく、夫が何をしているかも心配せず、子どもや孫の学校の送り迎えもせずに、ただ優れた刑事であるというキャラクター。だから人気があるんじゃないかしら。

ヴェラ~信念の女警部~

――おしゃれをするという話が出ましたが、これまでの14シーズンでどのくらいの数のコートと帽子(ヴェラおなじみの衣装)を着倒したんでしょう?

ブレンダ:コートは何着か用意してあったわ。ときどきは代役がコートを着て何かしなくてはいけない時があったし、例えば海辺のシーンでコートに泥がかかってしまうと、リテイクする場合は新しいコートを着なくてはならない。だから交換して着ることができるように何着も用意してあった。でも、帽子は当初一つしかなかったの。それである時、帽子を着用して撮影していたんだけど、何かの理由で撮影が一旦ストップした後、また再開しようという時に帽子がどこにも見つからなくて。衣装部のせいにしたんだけど、きっと私がどこかに置いてしまったのね(笑) その後、スペアの帽子を用意して……もしかしたら作り直したのかもしれない。あのタイプの帽子はなかなか見つからないの(笑)

アン:今ではニューカッスルの日曜日のストリートマーケットで、似たような帽子を売ってるわ。“ヴェラ・ハット”という名前でね(笑)

ブレンダ:友達の一人が教えてくれたんだけど、イタリアのトリノにあるブティックのショーウィンドウにヴェラのとそっくりの帽子とコートが飾ってあったそうで、写真を送ってくれたわ。まったく同じなの!(笑)

アン:私はヒースロー空港のプラダで、同じような帽子を見たわ(笑)

ブレンダ:数年前にトーク番組の『グレアム・ノートン・ショー』に出演した時にその写真を紹介したわ。

――最終シリーズの撮影が終わって、帽子は引き取りましたか?

ブレンダ:ええ、ときどきヴェラの格好をしてチャリティイベントに参加することがあるから。北東部で「Sunday for Sammy」という大規模なチャリティイベントがあるんだけど、数年前にドラマシリーズの刑事たちがそこに参加するという企画があって、私がヴェラの帽子とコートを着て登場したら、会場の屋根が落っこちるんじゃないかと思うくらいの歓声が上がったの。素晴らしかったわ!

ヴェラ~信念の女警部~

――『ヴェラ』撮影の最終日はいかがでしたか? やはりこみ上げるものがありましたか?

ブレンダ:ええ、私だけでなく全員ね。最終日はドラマのラストシーンではなかった。プロデューサーのウィル・ニコルソンの提案で、捜査本部のシーンの撮影が最後に撮影する場面になったの。それならキャスト全員がいるから、みんなで収録の最終シーンを分かち合えるということでね。

アン:私も最後の2日間の収録を見に行った。撮影後はスピーチがあったり、シャンパンで乾杯したり。ブレンダの愛犬のジャックもいたわね。

ブレンダ:私はあまりにも胸がいっぱいで、あまり覚えてないの。泣かないようにするのが精一杯で。

アン:それから、セント・ジェームズ・パーク(イングランド北東部タイン・アンド・ウィア州ニューカッスル・アポン・タインをホームとするサッカークラブ、ニューカッスルのスタジアム)で、キャストやスタッフが集まって打ち上げパーティが行われたわ。

――原作小説とドラマ化では演出上異なる部分もあると思いますが、原作に忠実に描かれていると最も感じるのはどういった部分ですか?

アン:実を言うと、あまり細かいことにはこだわりはなかった。犯人が原作と違う人物だとしても気にしなかった。私にとって一番重要だったのは、キャラクターが原作に忠実なままであるということ。そしてヴェラとジョーの関係も。原作の中では、ジョーはヴェラにとって自分の息子の代わりになる存在として描写されているけど、演じる俳優たちがそれをうまく理解してくれていたと思う。キャラクターや雰囲気に命を吹き込んでくれて、とても満足しているわ。

ヴェラ~信念の女警部~

――お二人がそれぞれのキャリアをスタートした頃は、何を達成したいと思っていましたか?

ブレンダ:女優になったのは偶然なの。演劇学校に通う前は、ブリティッシュレール(英国の国鉄)で10年間秘書として働いていた。知人の女性がアマチュア劇団に入っていて、“週末にマンチェスターの演劇コンクールにエントリーしたんだけど、メンバーの一人が急病になってしまって、お願いだから代わりに出てくれない? セリフは一つだけだから”と言われて、彼女を助けるつもりで出演したの。でも実際にやってみたら、すごく楽しくて! 衣装を用意する人がいて、背景の絵を描く人がいて、照明を調整する人がいて、チケットを販売する人がいる。そんな風にいろいろな異なる才能を持つ人々が集まって芝居を作り上げるということに魅力を感じて、グループに参加することにしたの。ロンドンに戻った後、リージェンツ・パークにあるルドルフ・シュタイナー・ハウスの劇場で芝居を行った。私はいつも年齢より若く見られるんだけど、当時も30代くらいだったのに見かけは10代だったから若い役を得た。やればやるほど演技もうまくなって、舞台で芝居することが大好きになった。周りの人から“プロの女優になれるんじゃない?”って言われたけど、“恵まれた職を辞めて趣味を仕事にするなんて、馬鹿を言わないで”って返事していた。でも多くの人から言われたら、“女優になるのもアリなんじゃないか。自分が大好きなことだし”って思うようになって。それで内緒で演劇学校に応募してみたら、合格してビックリだった。私のもともとの目標は、単に舞台で芝居をすることで、テレビや映画の仕事をすることは考えてもなかったの。それはちゃんとした俳優がすることで、私は演劇学校に通っているブレンダに過ぎなかった。自分自身、自分が俳優であるとは思っていなくて、私はただ“演技をする人”だったの(笑)

アン:私の野望は、生活費を稼ぐためにしていた仕事を辞めることだった。20年間実現できなくて、本を出版するようになった後もパートの仕事を続けていた。ここまで来るには、それだけ長くかかった。それから、もっと良い本を書くという野望もあったわ。

ブレンダ:アン、「ヴェラ」シリーズの前に書いていた本にシリーズものはあるの?

アン:ええ、最初のシリーズ(「Palmer-Jones」シリーズ)は、定年退職した自然主義者のアマチュア探偵が、自然保護区の島で起きた事件を解決するというもの。夫がRSPCA(動物愛護団体)で働いていたから、そこからアイデアを得たわ。その次のシリーズ「Inspector Ramsay」は、その頃初めてノーサンバーランドに引っ越したこともあって、舞台はイングランド北東部になっている。初期の作品が再販されたり増刷されたりして、みなさんが楽しんでくれるのは素晴らしいことだわ。

――今後「ヴェラ」の新作を執筆する際にも、ブレンダの顔を思い浮かべますか?

アン:執筆の際にキャラクターの顔を思い浮かべることはないけど、会話などでブレンダの声が聞こえてくるのは確かね。

ヴェラ~信念の女警部~

――『ヴェラ』撮影中に起こった面白い出来事を教えてください。

ブレンダ:ファンフェア(移動式遊園地)の場面を撮影した時、監督はファンフェアの中を突っ切って犯人を追うというシーンを撮影しようとして、時間をかけて準備をし、全員が正しい場所にいるように調整したのね。そのシーンの最後に公衆トイレの前を通りすぎるんだけど、リハーサルを何回も繰り返してからいざ本番となって、もう少しで撮り終えるという時に、その公衆トイレから老婦人が出てきて、いきなり私に向かって“あらヴェラじゃない、大ファンなの!”って(笑) 撮影中なのにまったく気が付かず、話しかけてきたのよ。

――ご自身とヴェラというキャラクターの似ている部分、似ていない部分は?

ブレンダ:謎を解くのは好き。タイムズ紙のクロスワード・クラブのメンバーなの。たとえ解決できなくても、解決しようとするのが楽しい。ヴェラと同じように、自分も公平な人間だと思う。それからユーモアのセンスもある。私の両親はとても貧しくて、あまり物は残してくれなかったけど、ユーモアのセンスを受け継いだ。それは貴重だと思う。

アン:それからヴェラとブレンダは、どちらも思いやりがあって親切よ。

ブレンダ:こんなこともあったわ。以前、母と待ち合わせをしていた時、ナショナルシアターで学生のグループに呼び止められて、写真を一緒に撮ってほしいと言われたの。スマホよりも前の時代で、カメラのレンズを調整したりして時間がすごくかかって、母のところにやっと着いた時、“お母さん、ごめんなさい。学生のグループから一緒に写真を撮りたいと言われて”と伝えたら、“あら、素敵じゃないの。一体あなたのこと誰だと思ったのかしら?”って(笑)

ヴェラ~信念の女警部~

――『ヴェラ』の撮影が終わって、何をしていますか?

ブレンダ:仕事を辞めたわけではなくて、『ヴェラ』の撮影後にすでに一本の映画に出演したわ。恐らく『Dragonfly(原題)』というタイトルになる予定よ。『ヴェラ』の撮影後すぐにオファーが来て、翌週から撮影が始まるとエージェントに聞いて。まだ北東部から戻ったばかりで荷解きもしていないのにと思ったけど、アンドレア・ライズボローも出演するということで、脚本を読んでみたらとても良かったので、そのまま受けることにしたの。

――ミステリー小説を読む時、誰が犯人かを推理しながら読みますか?

アン:私はしない。最後にサプライズがある方が面白いから。

ブレンダ:小説ではないけど、脚本を読みながら私が推理して、脚本家に誰が犯人と思うかを伝えて、その結果でストーリーを調整するということがあったわ。

――現実世界で刑事だったとしたら、良い刑事になると思われますか?

ブレンダ:そうね、私は良い刑事になれると思う。

アン:あなたはなれると思うわ。

ヴェラ~信念の女警部~

――日本のファンへメッセージをお願いします。

ブレンダ:ドラマを見てくれて本当にありがとう。そしてこの十数年間、応援してくれて感謝しているわ。最後のエピソードはアンの本「The Dark Wives(原題)」を映像化したもので、とてもスリルのある謎解きにヴェラのストーリーを織り交ぜたものになっているの。いつも通りの質を保っているし、素晴らしいエピソードになっていると思う。

アン:いつも応援をありがとう。最終シリーズを見るのを楽しみにしていてね。

――ドラマのラストで、何かこれで最後のような説明みたいなものはあるんでしょうか?

ブレンダ:説明みたいなものはあるにはあるけど、それ以外はノーコメント(笑)

ヴェラ~信念の女警部~

『ヴェラ~信念の女警部~』関連番組 放送情報

■『ヴェラ~信念の女警部~』シーズン14(全2話/字幕版)
…ミステリーチャンネルにて5月10日(土)16:00より放送
■『お疲れ様!わが友ヴェラ~14年の歴史を振り返る』(全1話/字幕版)
…ミステリーチャンネルにて5月10日(土)19:40より放送
■『ヴェラ~信念の女警部~』シーズン1~13(全54話/字幕版)
…ミステリーチャンネルにて5月3日(土・祝)6:00より放送

(海外ドラマNAVI)

Photo:『ヴェラ~信念の女警部~』シーズン14 © ITV Studios Limited 2024/『お疲れ様!わが友ヴェラ~14年の歴史を振り返る』© ITV Studios Limited 2024