シーズン2での打ち切りが異例の早さで決定したNetflixのサスペンススリラー『ザ・リクルート』。その判断は本当に妥当だったのか？ 米Deadlineが、Netflixのアルゴリズムやプロモーション戦略を考察している。
酷似した作品と同時期にリリースされ…
『ザ・リクルート』で主人公となるCIAの新米弁護士役を務めるのは、『好きだった君へ』シリーズでブレイクしたノア・センティネオ。甘い笑顔で世界をときめかせたノアが新境地を開拓することになった本作はシーズン2で打ち切られたが、そのタイミングにファンは驚いている。というのも、打ち切りが発表されたのはノアがSAG（全米映画俳優組合）賞授賞式でNetflix公式アンバサダーを務めてから10日後。シーズン2が1月30日に配信されてから5週間も経っていない時だったのだ。
視聴実績に基づいて更新・打ち切りの判断をしていると言われるNetflix。これまで更新が早々に決定することはあったものの、打ち切りの決定には時間をかけることが多い傾向にあった。それは作品の長期的なパフォーマンスを分析してから判断を下すためで、例えば2024年10月にシーズン3がお披露目された『HEARTSTOPPER ハートストッパー』は解禁から5ヵ月が経った今もなお運命は明らかになっていないし、『暗黒と神秘の骨』はハリウッドのダブルストライキの影響があったとはいえ打ち切りが発表されたのは解禁から約8ヵ月後だった。
Netflixを代表する若手スターとしてイベントを盛り上げたノアが、そのわずか10日後に主演作を失ったことには驚きを隠せない一方、打ち切りの予兆がなかったわけではない。というのも、シーズン1が全8話だったのに対しシーズン2は全6話への縮小をNetflixから求められた結果、脚本チームは物語を圧縮して一部のストーリーを削る必要に迫られていたのだ。
クリエイター側の意向でない限り6話構成のシリーズというのはアメリカでは珍しいが、結果は好調でRotten Tomatoesのスコアはシーズン1の68％から92％へと大幅アップ。クリエイターも「Netflixの正式な決定を待っているところです」と話すなど、シーズン3への更新に前向きな姿勢を見せていただけに、残念だ。
打ち切りを決定づけた要因として考えられるのは視聴者数の減少だが、これはNetflixの配信スケジュールが原因の一つではないかという見方がある。不運なことに『ザ・リクルート』シーズン2がリリースされたのは、ガブリエル・バッソ主演のスパイアクションドラマ『ナイト・エージェント』シーズン2解禁のわずか1週間後。これにより『ザ・リクルート』は、リリース直後こそ週間ランキングで2位につけたものの、4週目にはトップ10圏外へ。10話構成の『ナイト・エージェント』はシーズン1がNetflix歴代視聴ランキングのトップ10にランクインするほどの人気作と、そもそもの視聴ベースの規模が異なるため、『ザ・リクルート』は埋もれてしまった。
なぜNetflixが若手エージェントを主人公にしたスパイドラマを立て続けに配信するようなスケジュールを組んだのかは定かではないが、「似たようなスパイドラマは一つで十分」と、片方の作品のみを選ぶ視聴者の心理は容易に推測できる。その際に鍵を握ってくるのがプロモーションだが、『ナイト・エージェント』に比べて『ザ・リクルート』の宣伝は少なかった。
ガブリエルが昨年末にNFLの試合の合間にスカイダイビングに挑戦するといったプロモーションが行われた『ナイト・エージェント』に対し、『ザ・リクルート』の方はノアを使ったキャンペーンやプレミアイベントの予定もなし。今年1月に両作品合同のイベントが開催されたものの登壇キャストは2人対5人と、ここでも『ザ・リクルート』は『ナイト・エージェント』に大きく水をあけられた。
ジャンルや主人公の設定が似通っている『ザ・リクルート』と『ナイト・エージェント』にはもう一つ共通点がある。どちらもNetflixオリジナルシリーズとして配信されているが、制作スタジオは外部なのだ。つまり、Netflixが制作から一貫して行う作品に比べて低予算で制作可能。その点で見ても、費用対効果を重視するNetflixの基準を満たし、ローリスクで更新の決定ができたはずなのだ。実際、『ナイト・エージェント』はシーズン2解禁に先駆けてシーズン3へと更新している。
『ザ・リクルート』は視聴者の評価も上々で、制作費にも問題がないように思われるだけに、早々と打ち切りが決まったことが残念でならない。
『ザ・リクルート』シーズン1～2はNetflixにて配信中。（海外ドラマNAVI）
参考元：米Deadline
Photo:『ザ・リクルート』© Courtesy of Netflix
