ディズニー製作の戦国スペクタクル・ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』。(以下『SHOGUN』)エミー賞に続き、第82回ゴールデングローブ賞でも主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、そして作品賞を含む計4部門受賞。2024年は紛れもなく『SHOGUN 将軍』の年になったと言えるだろう。では、なぜこれほどまでに日本の時代劇という特異なドラマが、アメリカ人を虜にしたのか。大量の映像作品を見ている現代の目の肥えた視聴者が、傑作だと賞賛する本作の大ヒットには、作品自体の素晴らしさに加え、様々な複合的な要因があったようだ。
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配信前から期待大!大ヒット大河『ゲーム・オブ・スローンズ』日本版との前評判
世界中で大ヒットした大河ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』。こちらと内容的にも類似する点が多いところが『SHOGUN』の前評判に繋がった。両作ともに、登場人物は自己の権力や利益を追求、争い、裏切り、政治的な展開が読めない物語が続く。また、地上波ではなかなか放送できないような惨殺な血みどろシーンから、セックスシーンなど裸体が全面に出るようなシーンまで、配信サービスだからこその究極の過激映像に沸き立つ人も多く、その点もこの二作の共通点とも言える。だが『SHOGUN』の方が、視聴者にとって手を出しやすかったという意見もある。
それは本作が元々、ジェームズ・クラベルの小説を元にした1シーズンだけのリミテッド・シリーズだったということだ。『ゲーム・オブ・スローンズ』はシーズン8、つまり10年近くのシリーズだったが、シーズン1の時点ではそこまで爆発的な人気があったわけではない。配信ではよくあることだが、シーズンを重ねるごとに人気が出て、後追いでサービスに加入し視聴者が増加したパターンだった。
だが、日本版『ゲーム・オブ・スローンズ』という前評判があった『SHOGUN』は、最初から1シーズンでの終了が決まっており、(その後の高評価により、シーズン2&3制作が決定)原作に沿った物語の展開も早く、“面白いらしいからサクッと見てみよう”という気持ちで見始めた視聴者もいた。実際、その前評判どおり、『SHOGUN』の第一話・第二話は(初回は二話同時配信)、米FX/Huluの記録を打ち立てる900万もの視聴者数を記録した。このように、配信の前の時点で、すでにある程度の前評判があったことも、一気に人気を博したことに起因する。
アニメに抹茶にJ-POP!空前の日本ブームの波到来!
コロナ禍以降、欧米以外のコンテンツを視聴する人たちが増えたことも『SHOGUN』ヒットの理由の一つだろう。日本の誇る漫画やアニメ文化から、シティポップと呼ばれる日本の歌謡曲ブーム、そしてYOASOBIや藤井風と言ったJ-POPアーティストの躍進。日本のエンタメコンテンツ自体が、一部の人間による“オタク”文化ではなくなってきていることが大きい。この数年、日本にも多くの外国人観光客が訪れている。
抹茶に、コンビニ、着物試着体験。今や、“日本”自体が空前絶後の大ブームなのだ。そして、『SHOGUN』も、着物や小道具、キャスティングまで、“本物の日本”を貫くことで、日本に関して目の肥えた視聴者たちも納得できるものが出来上がった。アニメだろうとドラマだろうと、日本を描いたコンテンツの需要が、欧米で高まっている昨今の “日本ブーム”の波に乗れたことも成功の理由の一つだろう。
英語じゃなくても問題なし!字幕に慣れた現代人
『SHOGUN』は、物語の大半が日本語で進み、英語字幕がついている。ハリウッド制作とは言っても、内容としては外国作品に近いだろう。だが、昨今のアメリカの視聴者は、字幕作品に慣れてきている。特に顕著なのは、Z世代とミレニアル世代だ。彼らは、ソーシャルメディアや海外の映像の普及により、字幕がデフォルトの環境で育っているからだ。また他の世代においても、韓国ドラマや日本のアニメ、そしてドイツや北欧など諸外国制作のドラマの台頭によって、字幕のハードルが明らかに下がっている。
最近のリサーチによると、アメリカでは英語のセリフが聞こえているのに英語の字幕も一緒に出して視聴する人が増えているという。30歳以下のZ世代では、60%以上もの人が、基本的にどんなコンテンツでも字幕を出して視聴するというデータもある。その理由は、セリフの声が聞き取りにくい時があるからというものから、カフェや交通機関などで視聴する際に、音を消して字幕だけで視聴することもあるから、というものまで様々。
自分が聞き取れる言語(英語)なのに、それでも英語字幕を出して視聴するような人にとっては、日本語だろうが韓国語だろうが、すでに字幕を読むことに慣れているのだ。よって、『SHOGUN』のような日本語がメインの作品でも、苦痛に感じることもなく普段どおりに視聴できたということになる。
実は『SHOGUN』はリバイバル!三船敏郎版に衝撃の世代
本作には原作があると先述したが、実は今回の『SHOGUN』はリバイバルだ。全米地上波である米NBCが1980年にゴールデンタイムに5日間連続放送するという珍しい枠組みで、制作・放送したのがオリジナル版。真田広之が演じた主人公の虎長役は三船敏郎が、アンナ・サワイが演じた鞠子は島田陽子が演じ、こちらは全編日本で撮影された。そして今日に至るまで、アメリカの地上波ドラマで、全編を通じ日本ロケを行ったのは、このオリジナル版だけである。
当時の視聴率は、5日間ともに30%を超える驚異的な数字であった。もちろん、今のように配信サービスもない時代なので、今回のものとは比較はできないが、オリジナル版を視聴した世代(現在50代以上)の中には、「あの『SHOGUN』なのか!」と記憶に残っている人も多い。島田陽子においては、同役でゴールデングローブ賞も受賞しており、アメリカで旋風を巻き起こした作品だった故に、今回の『SHOGUN』も見てみたいという興味に繋がったようだ。実際、筆者の周りにも、オリジナル版が素晴らしかった記憶があるので、今回のものも楽しみに視聴し、大満足したという人が多数いる。
筆者自身も配信開始前から期待し、初回視聴後そのクオリティの高さに舌を巻いた視聴者の一人だ。素晴らしい原作と脚本、キャスト陣の大胆で繊細な演技、壮大な映像美、重厚で伝統的な音楽、そして日本人から見ても日本そのものでしかない美しい伝統的なセットや衣装、小道具。故に『SHOGUN』の大ヒットは、作品単体で考えても至極当然の結果と感じている。だが、このような時代背景の複合的要因も合わさったことで、今回の『SHOGUN』は、ハリウッドの歴史を塗り替えるほどの強烈な大躍進を遂げたと言えるだろう。
(文/Erina Austen)
『SHOGUN 将軍』配信情報
『SHOGUN 将軍』はDisney+(ディズニープラス)にて独占配信中。
\月額990円~/
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Hulu(月額1,026円税込)とDisney+(スタンダードプラン月額990円税込 or プレミアムプラン月額1,320円税込)2つのサービスを利用できる。
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