凶悪犯罪の数々にシカゴ警察21分署特捜班が立ち向かう大人気ドラマ『シカゴ P.D.』は、現在本国アメリカではシーズン12が放送中と、いまや長寿ドラマの仲間入り。シーズン10より新レギュラーメンバーとなったトレス役ベンハミン・レビ・アギラルは、独特の存在感とキャラクターが持つ謎めいた背景が今後のストーリーにどのような影響を与えるのか期待が高まっている。
ここでは、ベンハミンのこれまでのキャリアや『シカゴ P.D.』での役どころ、そして彼がどのようにしてこの新しいレギュラーキャラクターを魅力的に演じているのかを掘り下げていく。
目次
『シカゴ P.D.』ハルステッドと入れ替わりで新登場
放送開始当初は、シカゴ市警21分署特捜班の悪徳刑事ことハンク・ボイトのあまりにも濃すぎるキャラクター性にばかり注目が集まってしまった作品だが、シーズンを重ねるごとに、キム・バージェスやジェイ・ハルステッド、ケヴィン・アトウォーターといった脇を固めるキャラクターたちの個性も際立つようになり、バランスの取れたチーム構成も魅力の一つとなっていった。
しかしながら、これは長いこと放送し続けている犯罪捜査ドラマの宿命と言っても良いものだと思うが、個人的に感情移入していたキャラクターがチームを去ってしまうということもしばしば。『シカゴ P.D.』もまた例外ではなく、放送開始当初から特捜班のメンバーとして現在も残っているのは、主人公のボイトを初め、バージェス、アトウォーター、アダム・ルゼックの4人しかいない。演じる俳優が番組から降板することを決断すると、キャラクターたちもあらゆる理由でチームから去ることを余儀なくされてしまうのだ。海外ドラマファンにとって避けては通れない道ではあるが、同時に、去る者あれば来たる者あり…。
シリーズの人気キャラクターであったジェシー・リー・ソファー演じるジェイ・ハルステッドが特捜班を去ることになった本作のシーズン10において、ハルステッドと入れ替わるような形で、特捜班に加入した期待の新星、ダンテ・トレス。そのあまりにもカリスマ性に満ちた存在感と確かな演技力から、一度見始めてしまったら目が離せない魔性の魅力を兼ね備えている。
そんなトレス役を演じるベンハミン・レビ・アギラルとは一体何者なのだろうか? 今回は、ベンハミン・レビ・アギラルのこれまでのキャリアを振り返ってみよう!
『シカゴ P.D.』ベンハミン・レビ・アギラルの魅力
母親の勧めで俳優になることを決意
ベンハミン・レヴィ・アギラ―ルは、1993年6月19日グアテマラで生を受けた。少年時代は、プロのサッカー選手になることを夢見て、練習に精を出し、その才能は自他ともに認めるものがあったが、その道を断念せざるを得ない大きなケガを負ってしまう。
その後、ベンハミンはマーシャルアーツのトレーニングを開始。ベンハミンが取り組んだ「クラヴ・マガ」と呼ばれる近接格闘術は、かつてはモサドなどの特殊部隊で使われるものであったが、現在は世界中の軍や警察で使用されている。一切の無駄を省いたシンプルな格闘術であるクラヴ・マガを体得したベンハミンは、最終的には黒帯を手にするまでに。
その他、戦術射撃やドライビングテクニックにも磨きをかけ、グアテマラ大統領選などで技術を披露したことさえあったという。そんなベンハミンに俳優の道を勧めたのは、彼の母親だった。母の提案を受け入れたベンハミンは、その日のうちに飛行機を予約。そして翌週にはロサンゼルス行きの飛行機に搭乗していた。
「クレジットなし」からのスタート
無事にハリウッドに降り立ったベンハミンは、2012年、当時19歳の時に、ミュージカル・ドラマ『Glee/グリー』で最初の役を手にする。しかしながらベンハミンの役どころは「クレジットなし」に終わってしまう。その後もいくつかのTVドラマや『DOPEドープ!!』(2015)、『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015)といった映画に出演するも、どれも小さな役もしく「クレジットなし」に終わってしまい、長らく日の目を見ることはなかった。
それでも腐ることなく、地道にショートフィルムやTVドラマ、映画の端役を演じ続けた。とりわけショートフィルムにおける演技は高く評価され、2019年に出演した『Spirit(原題)』でロサンゼルス・フィルム・アワード主演男優賞を受賞している。そして、2022年、ついにベンハミンの努力が実を結び、彼のキャリアに転機が訪れる。
運命的だった『シカゴ P.D.』への出演
2022年にNetflixにて配信されたクリスティン・ベル主演のクライム・コメディ『窓辺の女の向かいの家の女』にてレックス役として、主人公アナとも関わりを見せる印象的な活躍を見せたベンハミンは、その後、大ヒット犯罪捜査ドラマ『シカゴ P.D.』シーズン10よりレギュラーキャストに抜擢される。
ベンハミン演じるダンテ・トレスは、元々、シーズン9第18話「警官見習い」にて初登場を飾り、当初はゲスト扱いだった。同エピソードでは、警察学校を卒業したばかりの新米警官として特捜班の捜査に同行。ジェイ・ハルステッドの相棒として、共に事件解決に挑んだ。しかしながら、常に無表情で感情がなく、単独行動も目に付くことから、注意を受け、疑惑の目さえも向けられてしまう。その背景には暗い過去があり、彼を取り巻く環境の複雑さも垣間見えるエピソードだった。
筆者は同エピソードを視聴した瞬間、このトレスというキャラクターから目が離せなくなった。画面を通して伝わってくるカリスマ性と陰のある表情は、どことなく2005年公開の映画『バッド・タイム』のクリスチャン・ベイルを思わせる。この時からすでに、次シーズンにおいてレギュラーとなることはほぼ決まっていたとは思うが、それでも近年のハリウッドでも稀有な存在感には目を見張るものがあったのだ。
シーズン10よりレギュラーキャストに加わってからも、その魅力は変わることなく、特捜班の他メンバーと同様に、陰を携えたミステリアスな表情を常に魅せながら、時折、鬼気迫る演技も魅せてくれている。その昔、俳優を志す以前に体得したクラヴ・マガや戦術射撃の腕前がここにきて大いに役立っていることは言うまでもない。そう考えると、ベンハミンが『シカゴP.D.』に出演することは運命だったのかもしれない。彼の人生の道筋は、今この瞬間へと導かれていたものなのではないかと思わずにはいられないのだ。全身全霊。これまでに培ってきたあらゆる技術を駆使し、これからもダンテ・トレスとして、ベンハミン・レビ・アギラルには特捜班を支えていってほしいものだ。
ちなみに余談ではあるが、ベンハミンはこのトレス役で出演する以前にも『シカゴP.D.』へゲスト出演した過去がある。シーズン7第1話「不信」にて、汚職警官を殺害した容疑者候補の一人を演じている。当時の姿と現在の姿を見比べてみるのもまた一興かもしれない。
ダンテ・トレスが初登場を飾った『シカゴP.D.』シーズン9は、Hulu、U-NEXTにて絶賛配信中。アクションチャンネルのシーズン10独占日本初放送と併せて楽しみたい!
(文/Zash)
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Photo:『シカゴ P.D.』シーズン9 © 2021-2022 Universal Studios. All Rights Reserved./『シカゴ P.D.』シーズン10© 2022 Universal Television LLC. All Rights Reserved.