撮影当初は役の正体を知らなかった!『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』シーズン2キャスト直撃インタビュー【1】

J・R・R・トールキンの長編小説「指輪物語」を実写化した大ヒット映画シリーズ『ロード・ オブ・ザ・リング』の前日譚となるスピンオフドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』。シーズン1はドラマシリーズ史上最高額の10億ドル(約1450億円)もの予算と壮大なスケールで、映画版に出てくるキャラクターの若かりし頃である第二紀の中つ国を描き、世界中で話題となった。そして待望のシーズン2が8月29日(木)よりAmazon Prime Video(アマゾンプライム)にていよいよ配信開始! それに合わせて主要キャスト9人への直撃インタビューを行ったので、2回に分けてご紹介しよう。(※この記事はシーズン1のネタバレを含みますのでご注意ください)

ベンジャミン・ウォーカー(上級王ギル=ガラド役)

ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪

――シーズン2はどのような展開になるのでしょう?

みなさんがご存知のように、邪悪なものがサウロンを蘇らせ、本作のタイトルにもある“指輪”を作ります。悪の勢力と善の勢力が対峙し、シーズン1に比べて非常にダークなシーズンとなります。シーズン1はこの作品の世界をまず構築していましたが、シーズン2では(原作の)第二紀をカバーしています。

――あなたが演じるギル=ガラドは、ガラドリエル、エルロンドの二人と非常に面白い関係にあります。もちろんギル=ガラドは上級王ですから二人の上司に当たるわけですが、特にエルロンドとの関係は上司というだけでなく、どこか父親のように接しているようにも見えます。この二人の関係性についてはどう思われますか?

そうですか! 父親のように見せるのが目標だったので、そう思ってもらえたなら、私の演技は成功です!(やったー!のポーズを取る) エルロンドはお年頃なので、いろいろ学んでいるんです。そういう時、親は子どもを一人にしてあげないといけません。木に登った後、どうやったら一人で降りられるのか、そういったことを自分で考えさせないといけないのです。みんな、身分の違いはあれど望んでいることは同じで、ただ違う方法でそこを目指しているのです。エルロンドが最初から上級王の言葉に耳を傾けていれば、こんな問題は起こらなかったでしょう。ですが、それが親という立場の悩ましい部分なのです。答えが分かっていても、それを子どもに教えるのではなく、自力で見つけ出せるように子どもを一人にしてあげないといけないのです。

ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪

――予告編映像でギル=ガラドが3つの指輪のうちの一つをはめていますね。最初にこの小道具の指輪を見た時、そして実際にあの美しい撮影現場で衣装を着た上で指輪をはめた時の気分はいかがでしたか?

これは夢じゃないかなと思うような瞬間でした。木の枝で弓を作って外で走り回っていた子ども時代の自分に、「将来こんなことがあるよ!」と教えてあげたいくらいです。それと同時に、トールキンのファンとしては、あの(指輪をはめる)瞬間のシーンに時間をきちんと割きたいと思いました。映画版では指輪にどういう力があるのかが描かれていますが、本作ではまだそれは明らかになっていません。彼らは、大地を豊かにすることも、壊すこともできる指輪を手に入れますが、その意味をまだ理解していないのです。

――シーズン1の撮影は、パンデミックだったこともあり、キャストのみなさんは撮影場所であるニュージーランドにずっと留まったことで大変仲良くなったそうですね。シーズン2の撮影で再会した時はどんな感じでしたか?

シーズン1の撮影が終わった後もずっと連絡は取っていましたが、実際会った時はバンドが再結成したような感じでした。お互いのことを励まし合いましたし、みんな脚本をよく読み込んでいたので、このキャラクターをどう演じるか、この展開はどうするかというような健全なディスカッションもできました。友人としても応援している彼らの素晴らしい演技をもうすぐファンに見てもらえるので、とても嬉しいです。

チャーリー・ヴィッカーズ(ハルブランド役)&チャールズ・エドワーズ(ケレブリンボール卿役)

ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪

――シーズン2ではお二人の演じるキャラクター、ハルブランドとケレブリンボールが接触し、関係を深めていきます。そしてこの二人の関係こそが、本作の物語の主軸となる重要なポイントです。この二人の関係と、今後の展開について少し教えてください。

チャールズ:最初のハードルを乗り越えた後、二人は協力しながら一生懸命にある目標に向かっていきます。鍛冶場で一緒に仕事をするわけですが、様々な意見の食い違いから、事態は少しずつ変化してきます。

チャーリー:山あり谷ありですね。予想外の展開もあるし、一直線に進んでいく感じではないです。うさぎの穴に落ちるようなものですが、その穴は非常に深く、地上に向かって登ろうとしてもまた引きずり下ろされる、そのような感じです。

チャールズ:いい例えだね!

チャーリー:我ながらまさに!(笑)

ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪

――チャーリーに質問です。シーズン1でハルブランドの正体が明らかになりました。みんな見事に騙されましたが、あなた自身もオーディションの段階ではハルブランドの正体を知らず、撮影途中で教えられたそうですね。その時のことを教えてください。

チャーリー:そうなんです。オーディションでは、ただ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』の何かの役を受けるとしか知りませんでした。そして受かったら、ハルブランドという役を演じると言われました。それから半年後くらいに「ハルブランドは実はサウロンだ」と聞かされたんです。ちょうど3話目を撮影していた時です。なので最初の2話までは自分がサウロンを演じているとは知りませんでした。ハルブランドというキャラクターにはもっと何か秘密があるんじゃないかと疑っていたので、(正体がはっきりしない)ハルブランドを演じるのは俳優としては複雑でした。でもそれはすべて、僕がハルブランドの最終的な姿、つまりサウロンを最初から演じないように、よかれと思ってなされた措置だったと思います。だからこそ、最初ハルブランドはミステリアスに見えたでしょうし、作品として成功だったと言えるでしょう。

ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪

――チャールズに質問です。シーズン2でのケレブリンボールは、怒り、困惑し、恐れ、助けを乞うほどに泣き叫びます。シーズン1とはまったく違う新たな面を見せているわけですが、演じる上ではこのシーズンの方が楽しかったですか? また、難しかった点はありましたか?

チャールズ:そうですね、シーズン1も良かったですが、このシーズンはもっと楽しかったです。シーズン2でケレブリンボールがどうなっていくのは前から分かっていたので、演じるのが待ちきれませんでした。徐々に脚本が出来始め、彼の苦悩がどこまで描かれるのかが見えてきて、嬉しかったです。役者とは、いろいろな方向から自分を追い込み、飛び込んでいき、自分を試せるような作品を常に求めているものですから、ワクワクしました。プレッシャーは特になかったですね。ただ、私たち二人が、(『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの)サウロンとケレブリンボールの出会いからの展開を演じる初めての俳優になるという事実は、とても光栄なことだと思っていました。

ロイド・オーウェン(エレンディル役)&レオン・ワダム(ケメン役)

ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪

――ロイドに質問です。あなたが演じるエレンディルは、本作の中でも恐らく一番勇敢で、また立派な父親でもあります。そんな誰もが崇める人気キャラクターを演じるのはいかがですか?

ロイド:とてもいい質問ですね。エレンディルはファンから高く評価されているということを改めて気がつかされるキャラクターです。もしかすると、ある点がみんなの記憶に強く残っていて、完璧なヒーローだという印象が強いのかもしれません。ただトールキンの作品を知っていれば分かりますが、エレンディルは素晴らしいヒーローで、リーダーで、王でもありますが、トールキンは彼のことをあまり書いていません。(R・J・Jの息子である)クリストファー・トールキンが父の死後に編集・出版した本には、父アマンディルに話しかける台詞一行でしか書かれていないのです。ですので、彼のことはほとんど分かっていません。

この仕事では、そんなエレンディルというリーダーをもっと三次元的に、人間らしく描くことができるのが素晴らしいと思います。エレンディルが最終的なヒーローとしての人物像になるまで、最初からどうやって構築していくのか…。苦境に立ち、間違いを犯してそこから学び、次の時には成功し、そういったことを体験して成長する、そのようなエレンディルをシーズン2では見られると思います。道徳的に困難な状況を強いられますし、難しい決断を下さなければなりません。別の道を選んだ方が良かったかもしれない、でも、それでも進んでいく。そして心、感覚、連帯感を駆使しながら、最終形態であるリーダーのエレンディルになるのです。あ、長い回答になりましたね(笑)

レオン:素晴らしい回答です!

――完璧です。早く全話見たくなりますね。エレンディルの情報が原作にあまりないという話が出ましたが、レオンに質問です。あなたが演じるケメンもまた(原作にはいないオリジナルキャラクターなので)視聴者にとっては謎に包まれたキャラクターです。このシーズンで、ケメンにどのようなことが起こるのでしょうか?

ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪

レオン:シーズン1でのケメンに対する私の印象は、彼は本当にすべてを持っていて、その事実もある程度理解していたということです。そんな彼が最も恐れていたのは、それを失うことでした。ケメンの改革派と伝統を重視する伝統派とが対立するにつれて、彼は持っていたものを失うかもしれないと考え始めるのです。摂政女王のミーリエルがいない間はケメンの父親(ファラゾーン)が島を管理していたため、ケメンはもっと何かができると気づきました。そして突然、彼はより多くのものを手に入れることに心を燃やし始めるのです。さらなる権力や地位が今すぐ欲しいと思うようになります。明日では駄目なんです。欲しいものはすべてこの手の中にあると理解していたのに、突然もっと多くを欲するようになるので、もの凄い変化でした。演じていて楽しかったです。

ロイド:シーズン2はエレンディルの家族にとって大変なものになります。演じるレオンと私にとってはとても面白い展開でした。ヌーメノールの問題は、誰もが常に欲深いという点です。恵まれた環境にあるのに現状では満足できず、「もっともっと!」と欲が出ます。素晴らしい環境に住んでいるのに、なぜか満たされないのです。ヌーメノールからもエルフからも与えられているのに。

レオン:その通りです。

ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪

――ヌーメノールのセットは素晴らしかったですね。合成用のグリーンスクリーンの前ではなく、そのようなセットの中で実際に演じるのはどのような気分でしたか?

ロイド:素晴らしい質問ですね。私もたくさんのグリーンスクリーンを背景に演じるんだと思っていました。

レオン:僕もです!

ロイド:セットデザイナーが全部作りました。運河や街はもちろん、港もですし、壁に描かれたグラフィックやエルフ語のサインなど、本当に素晴らしいです。もちろん、遠く離れた後ろの方は少しグリーンスクリーンを使用して広大な土地のように見せていますが。セットのスタッフたちは、撮影が始まるまでにこの壮大なヌーメノールを建造してくれたのです。(撮影地の)ニュージーランドという土地柄、海岸や山といった自然の景色も美しく、ガラドリエルが馬に乗って走るシーンなども本当に凄かったです。

レオン:信じられないほど没入できる世界です。これほど素晴らしいセットには、もう一生出会わないかもしれません。

ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪

キャストも絶賛する『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』シーズン2は、Amazon Prime Video(アマゾンプライム)にて8月29日(木)配信スタート。

(取材・文/Erina Austen)

Photo:『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』©Amazon MGM Studios