2023年本当に面白かった海外ドラマ20選【ジャンル別】

2023年も数えきれないほどの海外ドラマが放送・配信されたが、好みの作品には出会えただろうか。今回は、ライターと編集部スタッフが今年本当に面白かった海外ドラマをピックアップして、ジャンル別に全20作品をご紹介! 年末年始に見るドラマの候補にしてみては?

2023年本当に面白かった海外ドラマは以下の通り。

目次

【アクション/アドベンチャー/SF】

快挙!“アニメの実写版は失敗する”の通説を覆した『ONE PIECE』


2023年最大の大ヒット話題作と言っても過言ではない実写版『ONE PIECE』。アニメの実写版が作られるたびに、視聴者からは酷評されてきたが、その実写版の黒歴史を塗り替えたのが本作だ。原作者である尾田栄一郎氏が7年間に渡って密に製作に関わってきた本作は、原作ファンも納得の大成功作となった。

全てをCGIに頼らず、メリー号の船そのものを南アフリカの海に制作してロケをするほどの莫大な予算とその気合い。長編漫画を見事に編集、改変したまとまりのある脚本。外見・内面共に完璧なまでのフレッシュなキャスティング。さらにスタントもほぼ俳優たちが自らやっており、“誤魔化し”がないのが本当にいい。特に、本作までほぼ無名だったイニャキ・ゴドイの演じるルフィは、海原を照りつける太陽のような明るさで、視聴者の不安を一掃した。

原作そのままではないものの、尾田氏のお墨付きなだけあって、「生身の人間バージョン」の『ワンピース』が爆誕した。アニメ版主題歌『ウィーアー!』のサビをもじった劇伴『We Are!』を耳にすれば、麦わらの一味と共に旅に出る高揚感でいっぱいになるだろう。Netflixで独占配信中。

(ライターErina Austen

無敵のノーマン・リーダス!『ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン』


1999年のニコラス・ケイジ主演映画『8mm』で認識し、同年の主演映画『処刑人』で好きになったノーマン・リーダス。本家の『ウォーキング・デッド』でメインキャラクターの一人を演じてきた彼が『~ダリル・ディクソン』で名実ともに主役になったことは、個人的に2023年の重大トピックの一つだ。

もともとメルル役のオーディションを受けていたノーマンが同役は手にできなかったものの気に入られ、原作にはいないダリル役というキャラクターを与えられたのは有名な話だが、そんなダリルがフランスに進出。イギリスを舞台にした『28日後…』『28週後…』を思い起こさせる、ヨーロッパの雰囲気が『ウォーキング・デッド』に新たな息吹を吹き込んでいる。

『ウォーキング・デッド』シリーズでは目をかけていたキャラクターでも容赦なく命を落としてしまうためご贔屓を作りにくいが、シリーズとして初めて作品に名前を冠されたダリルは死なないことが確定していると言えるだろう。だからかもしれないが、50代に突入したノーマンはまるで『24 -TWENTY FOUR-』のジャック・バウアーのような不死身、無敵状態。どんな武器を使ってでも素手でも相手を倒せるので安心して見ていられる彼が今後どうなるのか楽しみだ。U-NEXTで独占配信中

(編集部U)

「モンスター・ヴァース」シリーズ初のドラマ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』


レジェンダリー・ピクチャーズが2014年の映画『GODZILLA ゴジラ』からスタートさせた「モンスター・ヴァース」シリーズ。『キングコング:髑髏島の巨神』、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』、『ゴジラvsコング』とシリーズ展開し、2024年には最新作『ゴジラxコング 新たなる帝国』の公開も控えている中で登場したのが、「モンスター・ヴァース」シリーズ初のドラマシリーズとなる『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』だ。

映画シリーズよりも前の時代となる1950年代以降と、『GODZILLA ゴジラ』にて描かれたゴジラ襲撃のその後となる2015年という2つの時間軸を舞台に、映画シリーズに登場してきた秘密組織「モナーク」とそこに関わる親子3世代の物語となる。

怪獣の存在する日常が人々の目線で描かれるユニークな世界観と、ドラマシリーズとは思えないゴジラを筆頭とした怪獣(タイタン)たちの圧倒的な迫力が魅力の本作。東京で行われた大規模ロケにより臨場感も高く、モナーク誕生秘話と、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』までのモナークがどのような活動を行っていたかというファンにとっては気になる内容が盛りだくさんとなっている。

「モンスター・ヴァース」シリーズのファン必見のドラマだが、ヒューマンドラマもメインとなっているため、怪獣がひたすら暴れ回る作品を期待すると少し裏切られてしまうかもしれない。しかし、間違いなく傑出したクオリティーとなっているので、モンスタードラマが好きな方にはぜひオススメしたい。Apple TV+で独占配信中。

(ライター豹坂@櫻井宏充

大ヒットシリーズの知られざるルーツに胸アツ!『ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から』


今年は『BEEF/ビーフ 逆上』というとんでもない傑作が海外ドラマ界に新風を吹き込んでくれたが、相変わらずロングランシリーズの強さが目立ち、少々ワクワクが足りない年だった。そんな中、筆者の心を揺らしてくれたのが、『ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から』だ。個人的に“アクション”を言語として物語を推進させる映画『ジョン・ウィック』シリーズが大好きで、説明足らずだからこそ神秘化された殺し屋の世界、そして彼らの巣窟“コンチネンタルホテル”の歴史をドラマで雄弁に掘り下げる本作は、むしろ待ち望んでいた企画だった。

物語は、いずれ同ホテルの支配人となる若き日のウィンストン(コリン・ウッデル/映画版はイアン・マクシェーン)が、冷酷非情な前支配人コーマック(メル・ギブソン)からいかにしてその地位を奪い取ったのかを活写する成り上がりドラマ。生きるか死ぬかの裏社会で研磨した鋼(はがね)のキャラクター、ウィンストン誕生秘話を知ることで、映画『ジョン・ウィック』シリーズが深みを帯び、同シリーズをさらに盛り上げ面白くする。ちなみに、コンシェルジェとして長年仕えてくれたシャロンを、『ジョン・ウィック』最新作で唯一無二の“友人”と呼んだワケも、本作を観れば「なるほど」と納得することだろう。Amazon Prime Videoで独占配信中

(ライター坂田正樹

韓国発の超能力バトルアクション!『ムービング』


映画のみならずドラマシリーズも増え続け、あまりのコンテンツの多さに「マーベル離れ」が囁かれる昨今だが、そんな人こそ見てほしいのが『ムービング』。本作は、韓国の人気WEBトゥーンを原作としたアクションドラマで、650億ウォンもの製作費をかけた超大作だ。

本作では、空を飛ぶ力、驚異的な自然治癒、怪力、逸脱した五感など、超能力を持った人間同士のバトルが描かれる。マーベルでたとえるなら『X-MEN』シリーズのミュータントをイメージするといいだろう。

圧倒的な製作費に見合うハイクオリティのVFX、韓国作品ならではのバイオレンスシーンも満載で、ハリウッド作品と比較しても遜色ない。さらに、ストーリーもとんでもなく面白い! 初めは高校生を中心に展開していくが、途中で彼らの親世代にシフト。人間ドラマ部分も丁寧に描かれており、欠点が見当たらない。

配信開始から7日間(視聴時間ベース)で、世界ではディズニープラス、米国ではHuluで最も視聴された韓国オリジナル作品になるほど、アジアだけでなく世界規模で話題となった。新しいヒーローの誕生を、ぜひ見届けてほしい。Disney+(ディズニープラス)で配信中。

(編集部R)

【コメディ/ハートフル】

あおり運転が負のスパイラルを生むドス黒さ満点のドラマ『BEEF/ビーフ ~逆上~』


『BEEF/ビーフ ~逆上~』は、斬新で画期的な作品を次々に生み出すプロダクション会社A24とNetflixがタッグを組んだドラマシリーズ。仕事も何もかもが上手くいかないダニー(スティーヴン・ユァン)と、事業に成功して裕福だが、自分の会社を売却してリタイアしたいのに買い手が見つからずにイライラしているエイミー(アリー・ウォン)が車で接触事故を起こしそうになり、エイミーがあおり運転でダニーを追いかけたことから復讐劇の火蓋が切って落とされる。

エイミーの車のナンバーを控えたダニーは彼女の住所を突き止め、報復を目論んだことから事態がトンでもない方向へ転がり始めてしまう。あおり運転がトリガーとなり、二人が日頃から抱えていた不満が大爆発し、負のスパイラルが雪だるま式に膨れ上がっていく展開が凄まじい。

また、本作は9割以上がアジア系のキャストで占められているだけでなく、アジア系コミュニティにおける富やステータスの格差にフォーカスしている点も、ハリウッド製作のドラマ作品では珍しいと言えるだろう。

あらゆるシーンで細かい伏線が張られた想像の斜め上を行くストーリー展開は、リメイクやリブート、フランチャイズ物に飽き飽きして、何かオリジナルな作品を求めていたドラマファンのハートに突き刺さりまくること間違いなしのシリーズだ。Netflixで独占配信中。

(ライターNami

本家『ザ・ボーイズ』を超えた!?スーパーヒーロー新世代を描く一級スピンオフ『ジェン・ブイ』


Amazonのオリジナルドラマ『ジェン・ブイ』は、激グロ&エロ満載の異色スーパーヒーロードラマ『ザ・ボーイズ』に登場するヒーローたちを育成するゴドルキン大学が舞台となるだけに、一筋縄でいく訳がない。

主人公マリー・モローは、12歳の時に特殊パワーを覚醒させたことで悲劇を引き起こし、その壮絶なトラウマを抱えたままゴドルキン大学へ入学する。自分のパワーを使って世界を良きものに出来ると、離れ離れになった妹に証明したいとの想いでトップを目指すマリーだったが、徐々に大学の実態や本来の目的を知ることになり、大きな陰謀に巻き込まれていく──。

『ザ・ボーイズ』に登場するセブンのメンバーたちは既にスーパーヒーローの地位を確立しているが、『ジェン・ブイ』のキャラクターはその発展途上にあるだけに、妙に人間臭さが際立っているのが大きな違いと言えるだろう。また、大学生という“お年頃”の若者が中心となるだけに、その世代が抱えがちなトラブルのほか、LGBTQ+や摂食障害などの問題、人種差別といったパワフルでタイムリーなソーシャルコメンタリーも物語に絶妙に絡められ、そのメッセージ性の高さも評価に値する。

マーベルやDCのスーパーヒーローをパロディにした『ザ・ボーイズ』から派生した『ジェン・ブイ』は、本家シーズン4への橋渡しとなる予定で、このフランチャイズが、どのようにマーベル・シネマティック・ユニバースやDCユニバースの常識を覆し、いかに一線を画していくのか目にするのが楽しみだ。Amazon Prime Videoで独占配信中

(ライターNami

史上最高のハートウォーミングドラマ『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』シーズン3


エミー賞作品賞を2年連続で受賞している大ヒットシリーズのファイナルシーズン。今年4月の時点で暫定1位に挙げていたが、年間ランキングでもそのまま1位に。年間どころか人生でもトップレベルに大好きな史上最高のハートフルストーリー。

アメリカのアメフトコーチであるテッド・ラッソがイギリスの弱小サッカーチームを率いることになる、という話で、舞台こそスポーツの世界だが中心になるのは人間たち。テッドのキャラと人間性がとにかく素晴らしくて、クセが強い個性豊かなチームメンバーと周囲の人々を温かなユーモアと大きな愛で包み込んでくれる。

テッドを見ていると、“人間誰もが弱い部分や欠点を持っているんだから、あまり心配し過ぎないで、自分と仲間を信じれば大丈夫だよ”って言ってくれているようで自然とポジティブな気持ちにさせてくれる。こんなに笑えて泣けて心が温まるドラマは出会ったことがない。

ファイナルシーズンとなるシーズン3は、テッドのおかげでチームもメンバーたちも大きく成長・変化していく様子が描かれ、登場人物ほとんどに愛着が湧いてしまう状態に。クリエイター陣が、これで「完結」と言っているから残念ながらこの先続くことはないと思うけど、文句のない完璧な終わり方だった。みんなとの別れが寂しくて最終話を見るには心の準備が必要かも。Apple TV+にて独占配信中。

(編集部S)

セス・ローゲンは間違いなし!『プラトニック』


数々の傑作を生み出してきたハリウッドコメディ界に欠かせない存在セス・ローゲンが主演&製作総指揮を務め、中年男女のプラトニックな関係性を描く。セスが手掛けるコメディ作品は無条件で好きになっちゃうけど、本作は贔屓目なしに見てもおすすめできるセンスの良い作品。

疎遠になっていた元親友同士のシルヴィア(ローズ・バーン)とウィル(セス・ローゲン)が、40代になって再会することから始まるドタバタ劇。全米大ヒット映画『ネイバーズ』で夫婦役を演じたセスとローズの相性は完璧で、二人の息の合ったコミカルでテンポのいい会話に大爆笑。バカなことして笑い合ったり、くだらないことでケンカしたり、言い合いもするけど、落ち込んだ時には励まし合って、オープンに向き合える関係性が素敵。シーズン2に更新されることも先日発表されたばかり。Apple TV+にて独占配信中。

(編集部S)

ニューヨークに生きる女性たちのその後をグラマラスに描く『セックス・アンド・ザ・シティ新章』シーズン2


ニューヨークに生きる女性たちの恋と友情を描いた人気シリーズ『セックス・アンド・ザ・シティ(以下、SATC)』のその後を描く『AND JUST LIKE THAT… / セックス・アンド・ザ・シティ新章』。

映画『セックス・アンド・ザ・シティ2』から11年後、キャリー、ミランダ、シャーロットなどおなじみのキャラクターの人生と恋愛模様と友情を描くもの。50代女性ならではの心身の悩み、将来への不安、愛する人との別離、子供との葛藤など、SATCをリアタイで見ていた世代が共感できる内容だが、正直言って、シリーズ1にはあまりピンとこなかった。新登場キャラにしっくりなじめず、サマンサの欠場も痛かった。

ところが、シリーズ2では前作の面白さとエロさと興奮がよみがえり、私たちのSATCが復活。好きな服を着て、好きな仕事をし、好きな人と過ごし、素敵なレストランやバーに行きまくり、人生を楽しむ彼女たちの姿はやはり最高。キャリーと元カレ、エイダンとの復縁やシリーズ2最終回でサマンサがカムバックしたのにもエキサイト。すでにシーズン3の更新が決定。あの頃を共有したキャラと視聴者が、現在も一緒に心ときめくことができるドラマの今後が楽しみだ。U-NEXTで独占配信中。

(ライター名取由恵 / Yoshie Natori

【スリラー/サスペンス/ミステリー】

タイムリープドラマの革命児!『ラザロ・プロジェクト』


これまで、ちょっと難解で苦手意識のあったタイムリープドラマにドはまりするきっかけになったのが『ラザロ・プロジェクト 時を戻せ、世界を救え!』。
目覚めると7月1日に戻っていることに気が付いたジョージ。眠っていたタイムリープの能力が開花し始めた彼は、機密組織“ラザロ・プロジェクト”のメンバーに勧誘され、人類滅亡を阻止するという極秘任務に携わることに。しかし愛する人を失う代わりに人類を救うことに納得できず…というストーリー。

本作では7月1日がチェックポイントになっていてその時点を過ぎるとそれ以前には戻れないというゲームのセーブモードのような設定がわかりやすく、その分ストーリーに集中できることで夢中になってしまいました。

映画では描くことができなかった主人公以外のタイムリープも見られる点も面白いところ。『SHERLOCK』のヴィネット・ロビンソン演じるジャネットは、タイムリープを繰り返すたびに出産を繰り返さなければならないのですが、その悲しみに心が折れそうに。それぞれ個人的な事情を抱えながらミッションと向き合うその葛藤が赤裸々に描かれていて、アクションのみならずドラマとしての見応えもたっぷり。

本国ではシーズン2がこの冬解禁。本作の監督・製作総指揮を務めたマルコ・クロイツパイントナーは『Bodies/ボディーズ』にも製作総指揮として参加しています。主演のパーパ・エッシードゥは『MEN 同じ顔の男たち』など話題作への出演が続き注目度急上昇中なので、今のうちに彼の活躍を押さえておいてみては? Amazon Prime Video チャンネル「スターチャンネルEX」で配信中

(ライターKanako

手に汗握るリアルタイム・サスペンス『ハイジャック』


『刑事ジョン・ルーサー』で日本にも根強いファンをもつイドリス・エルバ。近年は「アベンジャーズ」シリーズや『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』、『ビースト』など大作映画での活躍が目覚ましかった彼ですがApple TV+の『ハイジャック』で久しぶりにシリーズに帰ってきました。

その名の通りイドリス・エルバが乗った飛行機がハイジャックされるわけですが、面白いのはドバイ発ロンドン行の飛行時間6時間54分を全7話で追っていき、リアルタイムで物事が進行していくこと。ワンシチュエーションのサスペンスというと一辺倒になっていまいがちですが、本作では上空の旅客機内だけでなく、地上の管制室や政府、家族などを巻き込んで展開していくことで緊迫感が増し、体感時間はあっという間。

ハイジャックに遭遇したイドリス演じるサムは仕事柄、交渉術に長けている役どころなのですが、その解決能力の高さたるや!今後、飛行機に乗るたびに彼が乗り合わせていてほしい…と思わずにいられません。手に汗握るサスペンスの魅力がぎゅっと詰まった、まさにエンターテイメントな一作ということで、今年の1本に。Apple TV+にて独占配信中。

(ライターKanako

人気英国ミステリードラマの前日譚『刑事モース~オックスフォード事件簿~』<最終章>


英国でシャーロック・ホームズに並ぶ人気を誇るモース警部を主人公とした『主任警部モース』。そのモース警部の若き刑事時代を描く『刑事モース ~オックスフォード事件簿~』は、1960年後半から70年代のオックスフォードを舞台とし、上司であり、相棒でもあるサーズデイと共に数々の事件に挑む英国ミステリードラマだ。

英国で2013年から放送が始まり、人気を博してきた本作は2023年に最終章となるシーズン9まで続き、長きにわたる物語の幕を閉じた。王道な英国ミステリーの物語に、気難しいところもありながら人間味もあるモースと、厳しくも思いやりのあるベテラン刑事サーズデイとのバディものとなっており、『主任警部モース』を見ていなくても純粋に楽しめる作品となっている。さらに、オックスフォードの美麗なロケ地の数々、英国ドラマならではの映像美、作品を盛り上げる素晴らしい音楽が揃った上質な本格英国ミステリードラマであり、最終章もそのパフォーマンスは衰えぬどころか輝きを増している。

『刑事モース』のオリジナルキャラクターではあるが、師匠でもあり、恩人でもあるサーズデイが、なぜ『主任警部モース』の中で語られないのかというところをしっかりと描き、最終話にはシーズン1第1話のあるシーンを思い起こさせるある演出など『主任警部モース』へと続くネタも満載。フィナーレを飾るにふさわしい最終シーズンとなっている。WOWOWオンデマンドにて配信中。1月22日(月)11時から全33話がWOWOWプラスにて一挙放送。

(ライター豹坂@櫻井宏充

オスカー俳優クリストフ・ヴァルツの怪演が病みつき!『コンサルタント』


もう1本、ワクワクを通り越し、神経をジワジワ逆撫でするサスペンスドラマ『コンサルタント』も、小粒ながらインパクトの強い作品だった。映画『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』で2度のアカデミー賞に輝く名優クリストフ・ヴァルツの怪演が凄まじく、周りをブンブン振り回す剛腕っぷりに、“病みつき”になる視聴者もいたのではないだろうか。

ゲーム会社の若きCEOが事件に巻き込まれ、クリストフ演じるコンサルタント、リージャス・パトフが会社再建に乗り出すワケだが、こいつがとにかく謎だらけ。仕事はできるが腹黒く、何を考えているかサッパリわからない。24時間会社に居座り、夜中の3時であろうが打ち合わせを強要し、気に入らない社員は容赦なくクビを切る。奇妙な会員制クラブで妖しさを醸し出したかと思えば、「今日から社内は裸足だぁ!」と宣言し、ほかにも極度の階段恐怖症や異常な食へのこだわり、社員の盗撮も日常茶飯事と、挙げ出したらキリがない。もはやクセの塊だ。

ところが、理解しがたい奇行で社員を不快にさせながらも、会社はなぜか右肩上がり…。果たしてそれは結果論なのか、それとも計算通りに再建を遂行したプロフェッショナルの術なのか? 何はともあれ、このドラマは、クリストフの独壇場。彼に始まり、彼に終わる怪作なのだ。Amazon Prime Videoで配信中。

(ライター坂田正樹

『コールドケース』味も!『CSI:ベガス』シーズン2


2000年代初めに『CSI』シリーズが日本上陸を果たした時から見てきた身としてはたまらない『CSI:ベガス』。シーズン1はオリジナルキャストが多く『CSI:科学捜査班』の延長線という感じが強かった(そしてお気に入りのキャラであるホッジスが悲惨な目に遭うのがかわいそうだった)が、このシーズン2は新たにキャサリン、グレッグが姿を見せる一方で『~科学捜査班』時代のキャラが誰もいないエピソードも珍しくなく、『~ベガス』という新しいシリーズが本格的に始動した内容となっている。

マックス率いる捜査メンバーそれぞれの個性もより押し出されており、事件とうまく絡めて彼らの人となりや思い、悩みも明かされていく。そういう意味では、同じくジェリー・ブラッカイマーが製作総指揮を手掛けた『コールドケース』っぽさが加わったと言えるかもしれない。本家『CSI』シリーズの数年後にスタートした『コールドケース』は未解決事件を調べるというコンセプトで、事件から何年も時が経っても消えない被害者や遺族の傷、思いに寄り添う点が特長だった。劇中で音楽が印象的に使われることが多いのも同作を彷彿とさせる。『CSI』ファンはもちろん、『コールドケース』好きにも見てほしい作品だ。Huluで配信中。2024/1/1(月)15:30からは、スーパー!ドラマTVでキャッチアップ放送スタート!

(編集部U)

男性と女性の権力構造が逆転したら…?『パワー』


ナオミ・オルダーマンによる同名小説を実写化した本作は、世界各地で電気を操る力“EOD”を得た女性たちを描くSF・フェミニズムシリーズ。「ひょんなことから超人的な能力を得る」という要素は非常にアメコミ的だが、注目すべきは女性だけが力を手に入れるということ。一般的には男性の方が物理的な力が強いが、もしそれが逆転したら…? というIFの世界を描いているのだ。

原作はエマ・ワトソンがフェミニストブッククラブの推薦図書に選出するなど、著名人も読んでいることでたびたび話題に。私も事前に原作を読んでいたので、これをうまく実写化できるのだろうか? と心配していたが杞憂に終わった。原作を忠実に描きつつも、現実で起こっている事件など時事的な要素も取り入れ痛烈に批判。ジェンダー、権力構造、社会規範といったあらゆる問題を提起している。

今のところ、今年リリースされたシーズン1のみでシーズン2更新のニュースはまだない。原作の展開を考慮するとまだまだ序盤という印象なので、なんとしてもシーズン2に更新してほしいものだ。Amazon Prime Videoで配信中。

(編集部R)

イッキ見不可避の中毒性にまんまとやられた韓国ドラマ『セレブリティ』


今年もっとも短期間にイッキ見したのはNetflixオリジナルの韓国ドラマ『セレブリティ』。インフルエンサーにスポットライトを当て、まばゆい輝きを放つ表の世界と、その影のような裏側を描いた一作だ。

とある生配信がスタートすると、それは瞬く間に世間の話題をさらっていった。カメラに向かって話しているのは死んだはずのセレブリティ(=有名インフルエンサー)「ソ・アリ」。SNSの世界に彗星のごとく現れてトップの座に上り詰めたのち、忽然と姿を消した彼女は、華やかなセレブたちのスキャンダラスな真実を暴露していく――。

ドラマの中でインフルエンサーたちが纏うファッションやメイクは単純に目に楽しく、物語や登場人物の感情も分かりやすくて、すぐにその世界観に引き込んでいってくれる。韓国ドラマによくある胸やけしそうなドロドロ感が苦手な私にとっては、その具合も丁度良かった。

総じてNetflixオリジナルのリミテッドシリーズは「続きが気になる」を刺激する、イッキ見不可避の作品が多い。そして、たとえどんなにハマったとしても、何シーズンも同じドラマも追いかけることはほとんどしない私。来年も、欧米・アジア・日本問わず、面白いリミテッドシリーズが誕生することに期待している。Netflixで独占配信中。

(編集部O)

2004年エミー賞受賞作!『カーニバル』


今年の新作ではないどころか、かなり古めの作品なのだが、日本ではなかなか見られなかった『カーニバル』が今年4月からU-NEXTで独占見放題配信に。2004年のエミー賞で5部門を受賞した評価の高いシリーズである。

見世物小屋一座「カーニバル」に拾われた青年ベン・ホーキンスは、自身の持つ特殊な力や、不思議で恐ろしい悪夢に戸惑っている。一方、カリフォルニアで牧師をしているブラザー・ジャスティン・クロウも、自分が持っている特殊な能力に気づき始めていた。――そんな二人の男を中心に、善と悪の戦いの始まりを描くファンタジックミステリー。

遅めのテンポのジワジワ展開の中で描かれる人間模様や愛憎劇が見どころ。一貫して物語に充満する不穏な雰囲気も、この作品の魅力と言えるだろう。私の生涯ベストドラマ『ツイン・ピークス』でお馴染みのマイケル・J・アンダーソンが一座のボス役で出ているし、見世物小屋が出てきて『エレファント・マン』っぽいな、なんて思ったりもするが、デヴィッド・リンチ監督とは関係なし。ただ、彼の作品が好きだという人はチェックしてみてもいいかもしれない。

映画でも音楽でも、古いものを掘ってみたくなるというのが私の性分。自分の好みに合いそうな旧作を見つけて、それが過去に評価されていたと知れば、どんなに話題の最新作よりもキラキラ輝く宝石を発見したような気持ちになる。とはいえ、ドラマ作品の進化も見守っていたいので、新しい作品をチェックしながら、発掘活動(?)にも勤しんでいく所存だ。U-NEXTで独占配信中。

(編集部O)

【ドラマ】

ミカエル・コールが性被害を描いた異色ドラマ『アイ・メイ・デストロイ・ユー』


BBC/HBCの共同制作、ミカエラ・コール(『ブラックパンサー』シリーズ)が、過去に体験したレイプ被害をもとに原案・製作総指揮・脚本・共同監督・主演を手がけたドラマ。2020年にイギリスで放送された際には大きな反響を呼び、『BAFTA TV Awards・ BAFTA TV Craft Awards(英国アカデミー賞テレビ部門とクラフト部門)』では、ミニシリーズ作品賞、主演女優賞、監督賞、編集賞、脚本賞を獲得。BBCが2021年に行った「21世紀で最も偉大なTVシリーズ100選」の6位に選ばれた怪作だ。

自由奔放に生きる新人作家のアラベラがレイプ被害にあい、あの夜に何が起こったのかを探しながら、友人、家族、仕事、恋愛、人生について考えていく姿を追う。性暴力、性的同意のみならず、ジェンダー、トラウマ、人種差別、SNS社会、再生などを描き、見る者は「誰もが被害者にも加害者にもなり得る」という命題を突きつけられる。ロンドンのミレニアル世代たちの暮らしをスタイリッシュな映像と音楽に絡め、ヘヴィなテーマを扱いながらも、ポップにサラリと描いていく演出はさすが。アラベラの友人クワメ、テリーを演じたパーパ・エッシードゥ(『ギャング・オブ・ロンドン』)とウェルチェ・オピア(『スランバーランド』)にも拍手だ。U-NEXTで独占配信中。

(ライター名取由恵 / Yoshie Natori

映像&音楽&物語、全てが儚く美しい。全盲新人女優主演『すべての見えない光』


ピューリッツァー賞を受賞したアンソニー・ドーアの同名小説をドラマ化した全4話のNetflixシリーズ。第二次世界大戦中のフランスを舞台にしたヒューマンドラマだ。地味な作品に見えるが、「見えない光」とも言える“隠れた傑作”だ。何よりも話題になっているのは、目の見えない主人公マリー=ロール・ルブランを演じたアリア・ミア・ロベルティ。オーディションで選ばれた彼女自身も視覚障害者で、本作まで演技の経験はなかった。そんな彼女が演じるマリー=ロールは、活発で行動力があるサバイバー。目が見えないのに?と思う彼女の動きと行動力は、ドキュメンタリーを見ているかのよう。

また戦火が舞台だが、謎解き要素もあるためエンタメ性も十分。監督は『ストレンジャー・シングス』のショーン・レヴィ、若きドイツ兵に、脳内迷路状態ドラマ『DARK ダーク』のドイツ人俳優ルイス・ホフマン、そして脇役に『Dr. HOUSE』ヒュー・ローリー、MCUのハルク、マーク・ラファロと実力派が勢揃い。また目が不自由な主人公という設定なので、音楽や音、声なども“聞きどころ”ポイントになっている。4話に詰め込まれた物語が行き着く儚くも美しい結末には、満足感しか生まれないだろう。Netflixで独占配信中。

(ライターErina Austen

今年のおすすめは、コメディからシリアスな作品までいろいろな作品が集まったが、気になる作品は見つかっただろうか。ぜひ年末年始に見る作品の候補にしてみては? (海外ドラマNAVI)

Photo:Netflixシリーズ「ONE PIECE」2023年8月31日(木)世界独占配信 / (C)尾田栄一郎/集英社
『ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン』©2023 Stalwart Productions LLC.
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』Apple TV+
『ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から』©Amazon Studios
『ムービング』© 2023 Disney and its related entities
『BEEF/ビーフ ~逆上~』©Netflix
『ジェン・ブイ』© Amazon Studios
『AND JUST LIKE THAT... シーズン2/ セックス・アンド・ザ・シティ新章』©2023 WarnerMedia Direct, LLC. All Rights Reserved. HBO Max™ is used under license.
『テッド・ラッソ』シーズン3©Apple TV+
『プラトニック』©Apple TV+
『ラザロ・プロジェクト』© Sky Studios Limited (2021). All Rights Reserved.
『ハイジャック』©Apple TV+
『刑事モース~オックスフォード事件簿~』シーズン9Ⓒ Mammoth Screen Limited 2022 All Rights Reserved
『コンサルタント』© Amazon Studios
『CSI: ベガス』シーズン2©2023 CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved.
『パワー』©Amazon Studios
『セレブリティ』©Kim In Han/Netflix
『カーニバル』U-NEXT海外ドラマ公式(@unext_kaidora)より
『I MAY DESTROY YOU / アイ・メイ・デストロイ・ユー』© 2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
『すべての見えない光』ATSUSHI NISHIJIMA/NETFLIX © 2023 Netflix, Inc.