映画『バービー』グレタ・ガーウィグ監督「映画作りのピークを経験した」【インタビュー】

世界で最も有名なファッションドールであるバービーを実写化した映画『バービー』は、8月11日(金)に日本公開! 本作で監督・脚本を務めたグレタ・ガーウィグとプロデューサーのデイビッド・ヘイマンがプロモーションのために来日を果たし、海外ドラマNAVIは二人にインタビューを実施。本作への想いや、主演のマーゴット・ロビー、ライアン・ゴスリングについて、そして続編の可能性などを語ってくれた。

映画『バービー』スマッシュヒットを記録中

映画『バービー』は、アメリカで7月21日に公開されると、最初の5日間で2億ドル(約280億円)を突破し、女性監督作品のオープニング興行収入としての新記録を樹立。現地時間8月6日(日)の時点でもその勢いはとどまることなく、全世界累計興行収入はついに10.3億ドル(約1462億円)を突破し、スマッシュヒットを記録中。単独女性監督作として10億ドルを超えた史上初めての作品という歴史的快挙を成し遂げた。

本作のイメージカラーであるピンクの服やアイテムを身につけた観客たちが連日劇場をにぎわせ、世界中で社会現象となっている本作がいよいよ日本でも公開!

『バービー』グレタ・ガーウィグ&デイビッド・ヘイマン

【グレタ・ガーウィグ プロフィール】

1983年生まれ。俳優、映画監督、脚本家。
俳優として『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』、『20センチュリー・ウーマン』、『ホワイト・ノイズ』などに出演。『フランシス・ハ』、『ミストレス・アメリカ』では主演と共同脚本を務めている。

2017年公開の監督デビュー作『レディ・バード』が、アカデミー監督賞・脚本賞にノミネートされるなど高く評価された。2019年には、監督・脚本を手掛けた2作目『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』が公開。『バービー』は監督3作目となる。

【デイビッド・ヘイマン プロフィール】

イギリス出身の映画プロデューサー。『ハリー・ポッター』の映画化権を得て、シリーズ全作を手掛けた映画『ハリポタ』の生みの親として知られる。同じ魔法世界を舞台とした『ファンタスティック・ビースト』シリーズでも全作で製作に携わっている。
ほかには、『イエスマン “YES”は人生のパスワード』、『ゼロ・グラビティ』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、『マリッジ・ストーリー』『ホワイト・ノイズ』、今年12月公開の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』などを手掛けている。

グレタ・ガーウィグ&デイビッド・ヘイマン インタビュー全文

映画に込めたメッセージ

——グレタ監督の作品は、女性として勇気をもらえる映画ですよね。お2人がこの映画に込めたメッセージを教えてください。
(※以下グレタ・ガーウィグ監督=グレタ、デイビッド・ヘイマン=デイビッド)

グレタ:メッセージの核の部分ですよね。作品自体は見ていて楽しめて、笑えて、そして感動できて、ちょっとロックコンサートみたいなところもあって、という感じにしたかったんです。

男性とか女性とかジェンダーに関係なく、やっぱり生きるって誰にとっても大変なことですよね。

そして私たちは、自分自身に過度な期待をかけてしまいがちで、誰もがおそらく綱渡りのように生きていて、ちょっとでも足を外したら危ない状態になるような状況だと思うんです。

特に、自分に対して厳しい女性たちに「そのままの自分で十分足りていて、あなたには価値があって、今ここに存在するために理由付けする必要はないと、そのままで存在することで十分なんだっていうように感じてほしい」と思っていますね。

——ライアンが演じたケンは、男性の生き辛さみたいなのを表現していると思いました。
デイビッド:男性からの目線でという風におっしゃったけれども、実際にはバービーが男性の立場として言ってるようなところもあるし、ケンが反対に女性のメッセージとして言ってるところもあるんだけれども、結構自分に対していろんな過度の重荷や期待値を課してしまう。

それは、他人がそういう風に自分に期待をしているっていう風に思っている部分もあるかと思うんですけど、こうなるべきであるっていうことを自分たちが思い過ぎてしまって、それがすごく重荷になってしまうことがあると思うんです。それはみんなあると思うんですけども、この映画を見て「自分はこういう自分でいいんだよ」っていうことをみんなに思って欲しい。

そして、「不完全であっても、できないところがあっても、それはそのまま受け入れるべきだ」ということを、メッセージとしては言っています。

ライアンが提案した面白いアイデア

——ケン役のライアンに当て書きをしたそうですが、ライアンからなにか面白い提案やユニークなアイデアなどはありました?

グレタ:ライアンとは、撮影前に1年ぐらい本作について話をしていたんです。彼は最初からたくさんのアイデアを持っていて、スクリプトやコスチュームなどのディテールにもこだわりを持っていました。参考にしたいアイデアや他の作品や映像のクリップなどについて話し合いながら、お互いにずっとやりとりしていました。

ケンのルックスやパフォーマンスなど、クリエイティブな部分は全部一緒につくりあげました。

また、シルヴェスター・スタローンが登場したのは二人ともファンだからなんです。

“ケンダム”に登場する物にも彼はこだわりを持っていたのですが、ひとつ叶わなかったことは、黒いトイレです。バービーランドにあったらおかしいですよね。“やりたいことは分かるけど”って感じでしたね(笑)

ライアンはいつもたくさんのアイデアを持っていて、特にケンの衣装はバービーの服に合わせたい、ということだったので、その日のバービーの衣装を見てからケンのコスチュームを決めていました。

——衣装を見た時のライアンのリアクションは?

グレタ:“これを着るんだ!”と驚いていたと思います。でもうまく着こなしてくれました。

デイビッド:ライアンは勇敢ですよね。彼はいつも大胆で、想像を超えたパフォーマンスを披露してくれます。それをグレタ(監督)の手によって作り上げられたことは、本当に私たちはラッキーだったと思います。

マーゴットが物語の核の部分を見せてくれた

——マーゴットは定番のドールとして主演しましたが、グレタ監督やプロデューサーからリクエストしたことやアドバイスしたことはありますか?

グレタ:マーゴットは本作の企画者であって、映画化の権利を取得したのも彼女なんですよね。どうやって製作していくかを考えたのも彼女で、私に声をかけてくれたのも彼女だったんです。私は“監督する作品は自分の作品”という感覚はいつもありますけど、今回は最初から彼女の映画でした。

この作品で、そもそも私とノア(・バームバック)に脚本や監督を任せようと思うこと自体が、おかしなアイデアだったと思うんです。だから彼女には、なにか違うものを掘り下げて作っていくというビジョンがあったんだと思います。

だから多くの意味で、彼女は私にとってプロデューサーなんです。映画をプロデュースする人のこともフィルムメーカーと呼ぶので、そういう意味では彼女もフィルムメーカーですね。

私たちは、アナーキーで、ワイルドで、笑える世界を書いていて、そこに飛び込んでいこうと考えていたんですが、そこに深みを与えてくれたのは彼女なんです。

感情面、物語の核の部分を彼女が演じることで見せてくれたんです。作り手が気が付かないようなことも、実はこの映画ってこういうことなんだ、っていうのを役者の演技を見て気付くこともあるんです。

だから私が彼女になにかを指示するというより、常に彼女がこの映画はなんなのかということを教えてくれていた感じでした。最初から彼女はフィーリングを持っていましたからね。

続編について

——続編についてはどう思いますか?マテル社は『バービー』フランチャイズを作っていて、すでに14作品ぐらい開発しているそうですが、また別の作品で製作に携わる可能性はありますか?

グレタ:そんなにたくさんプロジェクトがあるんですね。

デイビッド:おもちゃがたくさんあるからね。

グレタ:今回この作品をマーゴットやライアン、アメリカや他のキャストたち、プロデューサーのデイビッドやトムたちと一緒に作れたことは、本当に自分の人生における映画作りのピークを経験したっていう感じなんです。だからこの瞬間は、もう一生なにもアイデアが出てこないっていうような気持ちなんです。

ただ、この素敵な方々とは、また仕事をしたいと思っています。ということはどういうことなのかは分からないですけど、でもこれからまた考えなければいけないってことですね(笑)

デイビッド:今はまだこの作品の真っ只中だから、分からないです。本作で頭がいっぱいですね。

ディスコをベースにしたサントラ

——ビリー・アイリッシュやデュア・リパなど多彩な音楽も、本作の魅力の一つです。特に熱望していたアーティストは誰でしたか?

グレタ:本当にすごいメンバーたちが参加してくれたサントラになっています。実は、最初に決まったのがデュア・リパでした。今回の映画のサントラは、ディスコをベースにしたものにするっていうのが、私の夢だったんです。

それで、現代のディスコクイーンは誰だろうって考えた時に、私の夢を上手く表現してくれるのは、デュア・リパだなと思って、彼女はリストのトップでした。

彼女がやるって言ってくれ、そこからグローバルに広がっていき、いろんなスタイルや影響を持った人たちが集まって来てくれました。それぞれがバービーとの関係性も持っていたし、本作のために、担当したシーンのために曲を書き下ろしてくれました。

本当にサントラ作りっていう意味では、このようなアーティストたちと仕事ができて、夢のような体験でした。

リストにあった名前を言おうとすると、多すぎて誰かの名前が抜けちゃうので言わないようにはしているんですが…。

デュア・リパ、ニッキー・ミナージュ、アイス・スパイス、カロルG、サム・スミス、FIFTY FIFTY、ハイム、チャーリーXCXなどたくさんいるので言い切れないですが、 こんなにたくさんのアーティストが参加してくれた映画は初めてで、本当にスリリングでクールなことでしたね。

デイビッド:当時私はロンドンにいて、グレタはニューヨークにいて、1週間に1度ぐらい電話で話す度に、どんどん名前が増えていって“え、その人も加わったの?”みたいな感じでした。最初から全部揃ってたわけではないんですけども、だんだんだんだんリストが追加されて大きくなってきました。

『バービー』STORY

    どんな自分にでもなれる完璧で<夢>のような毎日が続く“バービーランド”で暮らすバービーとボーイフレンド(?)のケン。ある日突然身体に異変を感じたバービーは、原因を探るためケンと共に〈悩みのつきない〉人間の世界へ!そこでの出会いを通して気づいた、”完璧”より大切なものとは?そして、バービーの最後の選択とはー?

    (海外ドラマNAVI)

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