映画『タイタニック』の監督を務め、大の深海探索愛好家としても知られるジェームズ・キャメロンが、タイタニック号の沈没現場を見学する観光ツアーに出て行方不明になった米潜水艇“タイタン”の悲劇について言及したとEWが伝えている。
専門家らが過去に懸念の声を上げていた
世界中で報じられている米潜水艇“タイタン”のニュース。日本時間6月23日時点の報道では、懸命な捜索活動の末、海底で破片が発見され、乗船者5名の生存は絶望的だと報じられている。
『タイタニック』でアカデミー賞を受賞したジェームズ・キャメロン監督は『ABC News』の取材に応じ“タイタン”のツアーを運営するオーシャンゲート社について、専門家らが過去に懸念の声を上げていたことを指摘。
「コミュニティに属する多くの人が、この潜水艇についてとても心配していた」「深海潜水のエンジニア・コミュニティで活躍するトップの人たちが、オーシャンゲート社に向けて手紙を書いたほど。彼らがやっていることは、乗客を乗せるにはとても実験的過ぎるし、資格を証明される必要があるとかね」
「タイタニック号の悲劇そのものとの類似性に衝撃を受けた」
タイタニック号の沈没現場へ30回以上ダイビングしたことがあるというキャメロン監督。
「タイタニック号の悲劇そのものとの類似性に衝撃を受けた。船長が何度も繰り返し、前方に氷があることを警告したにも関わらず、月明かりがない夜に全速力で氷原に突っ込み、結果として多くの人が亡くなってしまった。そしてちょうど同じ場所で警告が無視された非常によく似た悲劇が起きた」と自身の見解を明かした。
タイタンに起きたことは、みんなが抱えてきた悪夢
自身も潜水艇の設計者であるキャメロン。世界で最も深い海の底に到達するために設計された有人深海探査艇“ディープシーチャレンジャー”の設計に協力し、2012年には最初の操縦者として地球の海の最深部まで到達したこともある。
その様子はドキュメンタリー映画『ジェームズ・キャメロン 深海への挑戦』にも収められた。そんなキャメロンは水中探査の課題に加えて、厳格なテストと安全対策の重要性についてはよく知っていると語った。
「人々がここから実際にメッセージを持ち帰ることが非常に重要。僕たちの取り組みからね。深海ダイビングは成熟した芸術であるということだ」「安全記録は絶対的な基準。死亡事故がないということだけでなく、重大な事故もないこと」と話し、続けて「もちろん“タイタン”に起きたことは僕たちみんなが抱えてきた悪夢。この深海探索の分野に足を踏み入れたら、誰もが心の片隅にそれを抱えて生きてきた」と深い海に魅了された一人としての心の内を明かした。
(海外ドラマNAVI)
Photo:ジェームズ・キャメロン©James Warren/Famous