マカロニ・ウエスタンの傑作『続・荒野の用心棒』を原案に現代感覚で描いた壮大な西部劇ドラマ『ジャンゴ ザ・シリーズ』が、5月1日(月)より「スターチャンネルEX」で独占日本初配信となる(6月6日(火)より独占日本初放送も決定)。
この度、昨年末に行われたキャスト・スタッフ陣へのインタビューが海外ドラマNAVIに到着。どこよりも早く、この話題作に携わったメンバーの生の声をお届けしよう。
目次
西部劇ドラマ『ジャンゴ ザ・シリーズ』キャスト&スタッフコメント
インタビューを受けたのはこの人!
- マティアス・スーナールツ(『リリーのすべて』):ジャンゴ役
- リサ・ヴィカリ(『DARK ダーク』):サラ役
- フランチェスカ・コメンチーニ監督(『まっさらな光のもとで』)
- ナタリー・ぺリュス(製作会社Atlantique Productionsのジェネラル・マネージャー)
インタビュー本編
――今回、新しい西部劇が誕生しましたが、西部劇についてどう思われますか。
ぺリュス:
もともと西部劇はアメリカの西部を舞台にした作品です。しかし本作はヨーロッパ的な視点を加味し、より普遍的な物語を語っているところに大きな価値があると思います。本作ではあらゆる地平からやってきた人物が、この社会でいかに自分の居場所を見出せるのか、そして現在の世界的な状況とも重なりますが、戦争や紛争などの危機が起きた際に、いかに個人がふるまえるのかを見せています。
映画の舞台となる「ニュー・バビロン」とは、各自が違った歴史や背景を背負い、かつては敵でさえあったような人々が出会う場所です。互いに違いや憎しみを抱えていますが、友情も生み出しながら、全てが再構築されます。その普遍的な視線こそが、新しい西部劇の成功に寄与していると考えます。本作のスタッフもまた世界中から集まりました。ルーマニアに7ヶ月間滞在して撮影しましたが、様々な言語が飛び交う人間味あふれる素晴らしい現場となりました。
コメンチーニ:
西部劇とは並外れた映画の夢であり、映画の伝説に触れるものです。個人的には70年代の西部劇、例えばサム・ペキンパーやセルジオ・レオーネ、セルジオ・コルブッチなどの映画を見て育ちました。この鑑賞体験は映画監督の訓練のためにも重要な地位を占めています。これらの作品は不服従と反逆の精神、自由のアンチヒーローを、完璧と言ってよいほど見事に語っています。
そして私は今回、新しい西部劇を手がけるという大きな挑戦を受け入れました。ただし、完全に新しいものを生み出すというよりは、西部劇に固有な掟は守りながら、西部劇にオマージュを捧げたいと考えました。例えば、西部劇は視覚的に訴える映像表現が魅力で、壮大な叙事詩的でもあり、アクションシーンが重要です。私は大好きな過去の作品からこれらの遺産を、とてもさりげない引用という形で滑り込ませました。しかしそれだけではありません。同時に、私なりに大変親密な家族のドラマをしっかり内包させたつもりです。
マティアス:
私はベルギー出身ですが、土日はテレビで放映される西部劇を見て過ごすことがありました。サム・ペキンパーやコルブッチの『ジャンゴ』のような西部劇は、フランス語の吹き替え版で見て知ったのです。みな同じ声優を使っていたので、てっきりそれがオリジナルなのだと思っていました。とにかく私にとって西部劇は身近であり、一緒に育ったと言えます。
今回の撮影では初代『ジャンゴ』の伝説的俳優、フランコ・ネロと共演ができました。それは単なる目配せ以上に、西部劇への特別なオマージュとなりました。彼は面白い人で、現場ではいつも冗談を言い合っていました。
私はもともと西部劇の世界観にとても惹かれていたと思います。表現主義的で映像的に映えるし、イマジネーションを刺激するジャンル。豊かな映画遺産にも恵まれています。ベルギー流に言えば、“食べたくなる”部分が多いのです。今回の新しい『ジャンゴ』は個性的で現代的なアプローチにも挑戦しています。ぜひ私もこの作品世界に入りたくなりました。
リサ:
私は1997年生まれのドイツ人ですが、私にとって西部劇は新しい領域だったと言えます。一方、私の父はコルブッチの『ジャンゴ』を見ていてよく知っていました。私が初めて見た西部劇はおそらくドイツの作品だったと思います。今回、新しい『ジャンゴ』に俳優として参加するため、たくさんの西部劇を見ました。過去の作品に比べると、今回の『ジャンゴ』は人間関係の描き方が洗練されており、より心理的な西部劇になっていると感じます。
――俳優のフランコ・ネロはエピソード4に登場していますが、出演交渉は難しかったですか。
コメンチーニ:
ネロは新しい『ジャンゴ』が作られることに興奮し、大変喜んでくれました。出演交渉はスムーズだったと思います。マティアスとの共演はとても良い時間になりました。彼は伝説的な存在であり、プロ意識の高い素晴らしい俳優です。本作に出演してくれたのは名誉なことでした。その存在感には圧倒させられましたが、面白い冗談を言う楽しい人でもありました。
――『ザ・ライダー』『ノマドランド 』のクロエ・ジャオ監督、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオン監督 など、近年女性監督は新しいアメリカの西部劇を描いていると言えます。あなたも自分自身をその流れに位置付けたいですか。
コメンチーニ:
私は彼女たちの仕事が大好きで尊敬しているので、そう望んでいます。ただし、例に挙げられた作品は傑作ばかりですし、私自身が位置付けて良いものかはわからないので、なんと答えればよいでしょう。少なくとも彼女たちは、予定調和な作品は作らず、可能性を掘り下げる先駆者の女性監督だと思います。私はそういった監督の仕事に大変興味を持っています。そして私は彼女たちのように、女性監督がまだあまり足を踏みいれていない場所に行ける監督のひとりになりたいです。世間もそういった女性監督の存在を、まだまだ必要としていると感じています。
――キャストのお二人に質問です。ご自身が演じた人物について、最も惹かれるところはどこですか。また、あなた本人と似ているところや、違うところはありますか。
マティアス:
ジャンゴというキャラクターは象徴的な流れ者です。家族に対する後悔の念があり、魂の救済も求めています。自分と違うところはよくわかりませんが、人生における彼の選択には大変興味を持ちました。彼は良い選択も悪い選択もすることでしょう。自分が愛する人といかに関係を結び、どの時点でどんな選択をするのか。それは必ずしも相手を幸せにしないかもしれないし、傷つけるのかもしれない。そんな揺らぎのあるジャンゴという人物に、誰しも感情移入ができるのではと思います。
リサ:
サラはジャンゴの娘です。幼い時はジャンゴと近しい関係でしたが、途中で別れて生きることになりました。彼女はとても独立心旺盛の若い娘で、自由や権利のために戦うことができます。さらにドラマが進むにつれて、発展してゆく人物だと思いました。また従来の西部劇には珍しく、フェミニスト的なキャラクターであるのも魅力のひとつです。彼女は馬に乗ったカウボーイに助けられる必要はありません。
――強い女性キャラクターを演じるにあたって、何か他の作品などを参考にしましたか。
リサ:
正直に言うと、サラを演じるにあたって何かを参考にしたり、インスパイアを受けたいとは考えたりはしませんでした。まずはサラという登場人物に集中し、彼女の感情にコネクトすることを心がけました。彼女の人間性に忠実に演じることこそを大事にしたのです。
ひと言に「強いキャラクター」と言っても、いろんな強さがあると思います。ヒーロー的なアクションを起こせる人物だけが強いとは限りません。強さは壊れやすさからも表現できるかもしれないし、愛を与えることも強さの一部です。映像作品において女性のキャラクターはカリカチュアに陥りやすいものですが、本作は女性の描き方に様々なレイヤーがあり、とても複雑な人物像となっていると思います。
コメンチーニ:
この作品に女性の役柄の「反転」があるのは興味深いことでした。私は彼女たちの性格に複雑さを与えたいと願いました。例えば、敵役となるノオミ・ラパス扮するエリザベスですが、彼女はいわゆる悪役を担っています。女性でありながら、家父長制的な秩序のどう猛な守り人でもあるのです。この役割の反転は現代的なものだと思います。つまり、家父長制的な世界をあまりに内面化したために、女性である彼女もまた、この制度にすっかり同化しているのです。この映画では男性社会で女性が権力に触れるということが、どのような犠牲を払うことになるのかまでも描きました。
(インタビュー/林 瑞絵)
西部劇ドラマ『ジャンゴ ザ・シリーズ』概要
荒野に開拓した理想郷を舞台に、家族を失った男″ジャンゴ“と生き別れの娘、そして彼らを取り巻く男女の″因縁”と“宿命”を描く西部劇。「マカロニ・ウエスタン」の愛称で日本でも親しまれたイタリア製西部劇の傑作で、巨匠クエンティン・タランティーノ監督によるリメイクでも知られる映画『続・荒野の用心棒(原題:Django)』を原案に、人種、ジェンダー、LGBTQ等の現代的なテーマを盛り込み、新解釈でTVドラマ化した。
『ジャンゴ ザ・シリーズ』配信および放送情報
【配信】
「スターチャンネルEX」
字幕版・吹替版:5月1日(月)より第1話・第2話同時配信スタート(以降週1話ずつ更新)
【放送】
「スターチャンネル」<字幕版・吹替版>
STAR1 字幕版:6月6日(火)より 毎週火曜よる11:00 ほか ※6/3(土)午後1:00 吹替版第1話無料放送
STAR3 吹替版:6月8日 (木) より 毎週木曜よる10:00 ほか
作品ページ:https://www.star-ch.jp/drama/django/sid=1/p=t/
(海外ドラマNAVI)
Photo:アイキャッチ/Mizue Hayashi, "Diango" Round-Table at Hotel le Bristol, Paris, 2022(提供:スターチャンネル) その他/『ジャンゴ ザ・シリーズ』© 2021 Cattleya / Atlantique Productions / Sky Italia / Canal+