名子役の裏に過酷な人生経験。『ハンドメイズ・テイル』マッケナ・グレイス、難病と演技について語る

女性を虐げる理不尽な世界で生きる女性の強さを鮮烈に描く、マーガレット・アットウッドの原作小説を元にした人気ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』。シーズン5の配信が始まったばかりの本作でシーズン4からエスター・キーズを演じているマッケナ・グレイスが、自身の抱える難病と演技について語った。米Hollywood Reporterが報じている。

秘密を抱えた生活からの変化

現在16歳のマッケナは、6歳だった10年前に女優活動を開始。『CSI:サイバー』でイライジャ・ムンド(ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク)の娘を、『サバイバー:宿命の大統領』で主人公トーマス・カークマン(キーファー・サザーランド)の娘を演じ、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』と『キャプテン・マーベル』では主人公の子ども時代を演じた。また、2017年の映画『gifted/ギフテッド』ではクリス・エヴァンス(『キャプテン・アメリカ』)演じる叔父と暮らす天才少女メアリーに扮し、複数の賞を受賞。2021年には『ハンドメイズ・テイル』の演技でエミー賞のゲスト女優賞候補となった。さらにマッケナは2021年から音楽活動も開始し、歌うだけでなく自身の体験を交える形で作詞も手掛けたりと、精力的に過ごしている。

テレビや映画の世界で順調なキャリアを築いてきたマッケナだが、私生活ではここ数年にわたってひそかに厳しい闘いを強いられてきた。12歳の時に脊柱側弯症と診断されたのだ。今年10月に手術を受けた後、Instagramでそのことを公表。病院で周りに支えられながら通路を歩いたりベッドに横たわっている自分の映像とともに、「文字通り、私の人生を変えてくれた」と外科医に感謝した。

マッケナは12歳の時から4年間、映画やテレビの撮影現場や業界のイベントで「このこと(病気)を公にしないようにしていた」と語る。「私はとても幸せなタイプの人間なの。普通の子どもとして過ごし、10代をどう過ごすか考えたかったから、私生活は少し秘密にしておきたかった。だから(歌を通して)個人的な考えや葛藤を公にするのは、ちょっと変な感じ。でも、手術や脊椎に関する私の葛藤を歌にして伝えることで、同じような経験をしている人たちに“自分だけじゃないんだ”と思ってもらいたい。誰もが人生において多くの葛藤を経験していることを表に出すことが大事だと思うの。手術のことは医師から聞いたこと以外、あまり知らなかった。ネットでいろいろ調べたけど、本当に怖くて、手術したくなかった。でも正直なところ、(手術したことは)今までで一番いい決断だったわ」

「父は外科医なの。私は親とよくハグするので、その度に父は私の背中や背骨を触って、“背中が変だ”と言っていた。普通は学校で脊柱側弯症の検査をしてくれるんだけど、私は学校に行っていなかったので代わりに父が検査をして、"ああ! お前はこの病気だ!"と教えてくれた。それが徐々に悪化していったの。2020年の映画『ゴーストバスターズ/アフターライフ』の撮影をしていた頃は、背中の矯正器具を持っていたけど着けていなかった。だからその撮影中やプレミア会場では本当に不自由だったわ。皆にこう言われるの。“マッケナ、片側に傾いているから、まっすぐ背中を伸ばして立って”って。だから、“できる限りまっすぐ立ってる!”と返してたわ。私はいつだってスーパーヒーローを演じたいと思っていたから、背骨に異常があることを知られたくなかったの。でも結局、今から1年前ほどの時点では腰の位置がかなり異なるようになっていたから、プロダクション側に言わざるを得なかった。衣装合わせの時は、係の人に“私の腰の片方はもう片方よりも位置が高いから、ときどきスカートやドレスやパンツを調整して、スタイルが悪く見えないようにしなければならないの”と説明していたわ」

脊柱側弯症では背中の角度が45度を超えたら手術が必要だと言われる中、マッケナは最終的に47度にまで達していた。年齢を重ねるにつれて角度が酷くなり、このままでは内臓の器官にも影響が出るということで、忙しいスケジュールの合間を縫って手術を受けた結果、現在は6度にとどまっているという。

ショッキングな役柄を通して伝えたいこと

『ハンドメイズ・テイル』で演じるエスターと同じく困難を経験してきたマッケナは、エスターのようなキャラクターを通して人々を啓蒙したいようだ。「もし私がこういう辛いシーンを演じることに対して世間の人が落ち着かない気分になるのなら、そういうことを実際に経験している若い女性のために何かすればいいと思うの」と語っている。

「『ハンドメイズ・テイル』に出演できるのはとても光栄なことで、私のスケジュールやここ一年の状況にも対応してくれて感謝している。すごく恐ろしいことも起きるけど、あの作品の一部になれて嬉しいわ。一方で、現実社会がこういう作品と同じようになってきているのは怖くもある。でも、ほかの人の話を聞いたり私の演技に感動したと耳にするのは、とても素晴らしいことね」

Huluプレミア『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』シーズン5(字・吹)は独占配信中。毎週金曜日に一話ずつ追加配信予定。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Hollywood Reporter