世界的人気作『アダムス・ファミリー』に登場する、長女ウェンズデーを主人公に迎えた異色の推理ミステリードラマ『ウェンズデー』で監督・製作を務めるティム・バートンは、何をインスピレーションの源にしたのだろうか? その製作プロセスについてプロダクション・デザイナーが語っている。
原作に注目
原作となる「アダムス・ファミリー」は、不幸な事や邪悪な事、忌まわしい物、不気味な物が大好きなお化け一家が繰り広げるホラーコメディ。これまでに、60年代に放送されたアニメシリーズ『アダムスのお化け一家』やバリー・ソネンフェルドが監督した同名映画シリーズ2作、リブートとなる同名アニメ映画などが製作されている。
しかし米Varietyのインタビューで、『ウェンズデー』にてプロダクション・デザインを手がけたマーク・スクラトンが明かしたところによると、映像化された過去の作品ではなく、原作に注目したのだという。チャド・アダムス作、1938年に米New Yorkerで連載が開始された漫画を参照にしたというスクラトンは、バートンがドラマ化で目指した点について言及。「ティムの場合は、ビジュアル的に非常にシンプルなんだ」とコメントし、バートンが壮大かつ精巧な仕事のイメージで知られていることを認めながらも、「(カメラの)フレーム内に不要なものは何も存在していない。それは漫画も同じで無駄なものがないんだ」とコメント。原作と同様に、ドラマ版にも不要なものを投入しないようにしたと明かしている、
様々な文化がある
続けてスクラトンは、ウェンズデー(ジェナ・オルテガ)と人狼のイーニッド(エマ・マイヤーズ)がシェアするネヴァーモア学園の寮の部屋をデザインする時にも、そのアプローチを取ったのだそう。「モノクロの面とカラフルな面に分けたいと思ったんだけど、どうすれば違和感なく出来るのかが分からなかったんだ。そこで、その違いをイーニッド自身が作ったことにしたんだ」と明かしている。
二人の部屋は、蜘蛛の巣のような形をした巨大な窓や、イーニッドが描いた個性的な絵が特徴で、同時にステンドグラスの神聖かつ教会のような質感は、ウェンズデーが好むゴスの感性と融合している。そういったデザインについてスクラトンは、「ネヴァーモアには様々な文化がある。ゴルゴンやヴァンパイア、サイレン、人狼など、まさにメルティングポットだよ」と言い、建築にもゴシックやヴィクトリア朝時代、オスマンやムーアなどの影響を受けていると述べている。
その例として、「ウィームス校長(グウェンドリン・クリスティ)のオフィスは、その典型的な例だよ。ゴシック様式の暖炉があって、60年代モダニズムの机やジェームズ・ボンド風の椅子、そしてモダンなノートパソコンが置かれている。実際の部屋はロココ調と中国建築が混在したクレイジーな空間で、あの部屋は全ての中心であることを意図している。そこから様々なスタイルが生まれるんだ」と説明している。
『ウェンズデー』を視聴する時は、バートン監督の意図するところやプロダクション・デザインにも注目してみてはどうだろうか。『ウェンズデー』はNetflixにて11月23日(水)に配信スタートしたばかりだ。(海外ドラマNAVI)
Photo:『ウェンズデー』©COURTESY OF NETFLIX